昨年10月に日本の空から撤退していたアジア最大のLCC(格安航空会社)、エアアジア(マレーシア)が、来年再び日本に舞い戻ってくる――。中部空港を拠点に、成田や茨城など首都圏空港への乗り入れや、国際線の運航も狙っているという。

 2011年に初上陸したときは全日本空輸(現ANAホールディングス)と組んで国内線就航にこぎつけたが、わすか2年で“ご破算”に。

 そして、今回日本への再参入にあたりエアアジアが合弁相手に選んだのは、なんとネット通販の楽天だった。

「エアアジアCEOのトニー・フェルナンデス氏が今年4月に講演で来日したとき、<航空事業の経験がなくても、政策への影響力を持ち航空業界に革命を起こす意欲をもっている会社>を合弁先の条件に挙げていた。

 じつは、そのとき講演をセッティングしたのは楽天で、三木谷浩史社長がフェルナンデス氏をアテンドしていたので、楽天が何らかの形でエアアジアの経営に参画するのではないかと囁かれていた」(全国紙経済部記者)

 なぜ楽天なのか。航空評論家の秀島一生氏が語る。

「エアアジアの経営は徹底したコストカットがすべて。同じ機体を使って空港での折り返し時間を短くしたり、機内サービスをすべて有料にするなどして低運賃を実現させてきました。また、チケット予約もネット経由でしか受け付けず、日本で運航していたときも本国の英語サイトと共通化したサイトが分かりにくいと不評を買いました。

 楽天と組めば、ネット予約や決済のシステム構築はお手のものですし、楽天トラベルと連動した旅行ツアーの企画や、楽天カードのポイントなどを活用すれば顧客を囲い込める。徹底したコスト削減とEC(電子商取引)サービスの強化によって、今度こそ採算が取れると見込んでいるのでしょう」

 では、撤退直前には成田を拠点にしながら50%台と沈んでいた搭乗率は、中部空港の発着枠でどれだけ稼げるのか。航空経営研究所所長の赤井奉久氏が予測する。

「中部空港は首都圏や関西圏の空港に比べてマーケット規模は小さいですが、周辺に競合する空港もないので勝負しやすいと思います。国内線なら札幌、福岡、沖縄、国際線では韓国、台湾あたりの便を飛ばせば80%以上の搭乗率は取れるでしょう」

 しかし、いくら高い搭乗率を達成できたとしても、採算ベースに乗るとは限らない。なぜなら、国内のLCCに比べ、エアアジアやジェットスターといった外資系LCCは高コスト体質だと言われているからだ。

 大手エアライン幹部が、こんな不安材料を述べる。

「公表されていないが、いくら日本で航空事業をしていても本国へのライセンス料がかかる。例えば、機材の提供はもちろん、運航乗務員や客室乗務員もすべて本体でやるために、その都度マージンが発生する。結果、日本の合弁企業は“貢ぐ”だけになってしまう」

 そうであるならば、エアアジアの日本法人に3分の1程度を出資すると見られている大株主の楽天も、単なる“カネづる”に利用されかねない。だが、前出の赤井氏は楽天が航空事業に参入するメリットも大きいと話す。

「航空法上の制約をクリアすれば、例えば数機をチャーター便として活用し、機体の塗装から客室要員の服装まで楽天マークやカラーにすることだって不可能ではありません。Rマークが大きく象られたいわば『楽天ジェット』のPR効果は絶大です」

「すでに高報酬をエサにパイロット獲得に乗り出している」(航空業界関係者)といわれる新生エアアジア。どこが経営しようと忘れてはならないのは、乗客への安全性確保や運航の定時性、そのほか接客サービスなどの質向上だ。

「航空ビジネスはパイロットのみならず、運航・整備体制を充実させるには多くの人的パワーが不可欠です。楽天はネット事業では勝ち組かもしれませんが、航空業界の現場でどれだけヒューマンネットワークを構築して信用力を高められるかは未知数です」(前出・秀島氏)

 2020年の東京五輪を見据え、ますます競争が激しくなりそうな日本のLCC。エアアジア―楽天連合が生き残りのためにまず取り組まなければならないのは、コストでは測れない「おもてなし」のブランドづくりだろう。