小倉隆史のコロンビア戦分析「オプションとボールを奪い切る力がなかった」

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 決勝トーナメント進出のためには、勝つしかなかったコロンビア戦。先制を許す苦しい展開となった日本代表は、FW岡崎慎司のゴールで同点に追い付いて前半を折り返す。しかし、後半に3失点を喫してしまい、1-4の完敗でグループリーグ敗退が決まった。必勝で臨んだはずのW杯第3戦、そして1分2敗の未勝利に終わった今大会は、現在解説者として活躍する元日本代表FW小倉隆史氏の目にはどのように映ったのだろうか――。

 コロンビア戦の試合の入りは良かったと思いますし、90分間を通して見てもコートジボワール戦やギリシャ戦とは違い、「丁寧」ながらも「大胆」なサッカーを見せてくれたと思います。MF香川真司を先発に復帰させて2列目のメンバーを今までどおりに戻し、攻撃は細かいパス回しだけでなく、シンプルな縦パスを打ち込む場面が目立ち、最終ラインからも積極的な配球をしていました。ただ、攻撃に人数を掛けられていましたが、W杯以前の調子が良かったときと比べるとボールを持っていない選手の動き出しが少なかったように感じます。相手のプレッシャーが厳しかった影響もあるでしょうが、ボールを出した後の動き出しやボールを引き出そうとする動きが少なく、数人が絡む連動性の高いサッカーを見せる場面はほとんどありませんでした。

 またトップ下に入るMF本田圭佑へのマークが厳しく、そこでつぶされてボールを失う場面もありました。彼が基点になれなかったときの苦しさは今までも味わってきたものですが、本田を抑えられたときの明確な打開策がありませんでした。本田がキープできれば周囲の攻め上がりを促してチーム全体が前掛かりになれますが、逆に相手にとっては狙いを定めやすい面があります。そこで日本がボールを失えばカウンターを食らう危険性もあり、実際に失点にもつながっています。4年間、そのパターンを中心にチームを作ってきたので仕方のない部分はありましたが、それを覆すくらいの攻撃パターンがあれば、と感じてしまいました。

 つまり、日本にはオプションが少なかったと言えます。アルベルト・ザッケローニ監督就任以降、システムは一貫して4-2-3-1を採用しており、対戦相手、試合状況などによって変化させるものではありませんでした。3-4-3のテストを続けながらもモノにできなかったため、一つの方法が止められたときに、その状況を打開する次の一手がなかったように感じます。これは選手起用に関しても言えることです。コロンビア戦の先発に名を連ねたメンバーは、ザックジャパン初陣となった10年10月のアルゼンチン戦からDF吉田麻也、MF青山敏弘、FW大久保嘉人の3人を入れ替えたのみで、吉田にしても11年1月のアジア杯からレギュラーを任されており、この4年間で顔触れに大きな変化はありません。同じシステムに同じ選手をはめ込んで同じ戦い方を続ければ、精度は高まっていきますが、チームとしての引き出しは少なくなり、攻撃のバリエーションも増えない。オプションの少なさが、今大会で如実に表れる結果になりました。

 PKで先制されながらも岡崎の得点で同点に追い付きましたが、2失点目をしたことで今まで以上に前掛かりになって攻撃を仕掛けなくてはならない状況となり、カウンターから3失点目、4失点目を喫しています。そして、その2失点目ですが、守備の人数はそろっているにもかかわらず相手へのプレッシャーが弱いため、バイタルエリアで自由を与えてしまい、右サイドから左への展開であっけなく失点してしまいました。あの場面では危機を察知して相手にもっと体を寄せないといけないし、アシストをしたMFハメス・ロドリゲスに3人が対応したことで、ファーにいたMFフアン・グアドラードをフリーにさせています。DF今野泰幸がサイドに釣り出されていたため、中央のスペースをボランチが埋めるのか、またゴール前に侵入してきたロドリゲスを岡崎が絞って対応すべきだったのか等、リスクマネジメントや対応力が不足していたと感じました。

 何より、サイドから簡単にゴール前までボールを運ばれてしまった守備の対応に、問題があったと思います。中盤でプレスが掛からずに引いてしまえば押し込まれる形になるので、そこで前に出てプレスを掛ける必要がある。今大会で決勝トーナメント進出を果たしたチームは、ボランチないし中盤の選手が危険を察知したときに果敢に相手選手へ寄せて、ボールを奪い切る力を持っています。しかし、日本は相手の攻撃を受けたときに、パスコースを切る、相手のシュートコースを防ぐ守備を見せていましたが、ボールを奪い切る場面が少なかった。ただコースを切るだけでなく、そこから一歩踏み込んでボールを奪い切る力が必要になるでしょうね。

 最終結果を見ても分かりますが、グループCではコロンビアが頭一つ抜けた存在でした。大会前には実力伯仲のグループで4チームに決勝トーナメント進出の可能性があるとも言われていましたが、コロンビアは早々にグループリーグ突破を決めて、日本戦では8人ものメンバーを入れ替えています。1.5軍のメンバーとも言えましたが先制点を奪い、同点に追い付かれるや2人の選手を入れ替えて完全に試合の流れを変えてしまいます。そしてしっかりと勝ち切り、終わってみれば3戦全勝です。このグループの本命国だったことを結果で証明しており、現実には残りの3チームが2位を争ったということです。日本は必要な勝ち点を奪いにいかなければならない最終節で、そのコロンビアとの対戦となったことはマイナスだったかもしれません。初戦でコロンビアに敗れたギリシャが決勝トーナメント進出を果たしたことを考えると、結果論とも言えますが、対戦順はグループリーグの突破に少なからず影響したと感じています。

 大会を通じての率直な感想ですが、日本はとにかく走れませんでした。W杯開幕直前に行われた親善試合では走れる姿を見せていたので、事前合宿地やベースキャンプ地でのコンディション調整がうまくいかったのかもしれません。南アフリカ大会ではコンディション調整がうまくいき、ベスト16進出を果たしていただけに、その部分では問題はないのだろうと思っていました。ザッケローニ監督もコンディション調整の重要性を説いていたように、「日本らしい」サッカーを実現するための重要な要素の一つが「コンディション」だったと思います。ですから、初戦にきっちりと照準を合わせてコロンビア戦の戦い方が初戦からできていれば、2戦目、3戦目とコンディションはより良くなり、違ったパフォーマンス、違った結果を残せていたかもしれません。

 最終的に1勝もできないまま大会を後にすることになりましたが、日本と世界との距離を知れたことで、今後この結果をどう受け止めて、どう進んで行くのかが大事になります。ブラジルW杯の試合内容、結果を見て惜しかったと捉えて継続するのか、まったく通用しなかったと捉えて方向転換をするのか。その方向性を示すことはとても大事になりますが、僕はコロンビア戦で「日本らしさ」の可能性を少しでも示したと感じるので、今大会の結果を今後につなげられるような決断を下し、18年ロシアW杯へ向けて新たなスタートを切ってほしいと思っています。