日本代表のコンセプトは何を継続して、新たに何を加えるべきか

写真拡大

 ブラジルの地で、日本代表がアルベルト・ザッケローニ監督と共に2014年ワールドカップを戦ったこと。それ自体がひとつの奇跡と言えるかもしれない。

 2011年1月のアジアカップで感動的な優勝を果たした後、日本は3月の東日本大震災を経験した。さまざまな外国人労働者が母国へと帰る中、ザッケローニ監督にも契約を解除し、イタリアへ帰国する選択肢があったはず。おそらく家族や友人はそれを勧めたのではないだろうか。しかし、“ザック”と親しまれた男は日本に残り、ブラジルへと続く道を、我々と一緒に歩むことを選んだ。

それから3年半の間、ザッケローニ監督は、傷ついた日本に勇気をもたらすサッカー日本代表を引っ張ってくれた。他人に尊敬される態度で、そして、他人を尊敬する態度で。いろいろなことがあったし、僕自身もザッケローニ監督の仕事を批判したことはあった。しかし今、ひとりの日本人として何かを伝えることができるとしたら、あなたに感謝していると。それだけを伝えたい。

 1分け2敗という結果に終わった今でも、ザッケローニ監督と選手たちが目指した方向性は間違っていないと断言できる。高い位置からボールを奪いに行くプレッシングと、テクニックや俊敏性、運動量を生かして攻撃を仕掛けるサッカーは、これからも継続するべき日本代表のコンセプトだ。たった3つの試合結果で4年間のすべてを消し去る必要はない。

 しかし、我々日本人はこのワールドカップを通して、サッカーには対戦相手が存在することを思い知らされた。つまり彼らは、日本代表が伸び伸びとプレーするさまを、黙って見ているようなお人好しではない。『自分たちのサッカーが出来なかった』ではなく、『相手によってさせてもらえなかった』という認識は必要だろう。

 今大会を見るにつけ、他の代表チームには『幅』があることを強く感じている。コートジボワールは両サイドバックを高い位置に上げ、アフリカ予選では見たこともない、日本潰しの戦術を本番で機能させた。オランダは伝統の4−3−3から5−2−3システムに変更し、守備が得意ではない前線のロッベンらの攻撃力を生かしたスペイン潰しの速攻戦術を用いた。また、大会前にはドイツのヨアヒム・レーブ監督が、ブラジルの暑い気候と、長距離移動の負担を考慮し、あまりアグレッシブにプレッシングに行くばかりでなく、時には低めの守備ブロックからカウンターをねらうことも必要になると予想していた。

 彼らはコンセプトがありながらも、相手やスコア、環境に合わせて変化する『幅』をあわせ持つ。大人のチームだ。日本の痛いところに、必ず駒を打ってくる。残念ながらそれらに対応できず、相手の戦術に振り回されてしまう日本代表には存在し得ないクオリティーだった。

 これからの4年間で、日本に『幅』をもたらすサッカーの進歩はあるのか? そして、日本代表に新たな『幅』を与える選手は台頭するのか?

 我々と一緒に夢を見てくれた、ザッケローニは退任する。4年前の就任記者会見を、まるで昨日の出来事のように思い浮かべることができる。

 南アフリカではパラグアイ戦のPK戦が終了すると同時に、本田圭佑、長友佑都をはじめとする選手たちが一斉にブラジルへ向けてスタートを切った。今回の屈辱的なコロンビア戦の終了のホイッスルも、日本代表が次のステップへ進むための原動力になるに違いない。

文=清水英斗