インハイ決めた麻布大附属の“自由なエース”・塚越亮「全国で強豪を倒したい」

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 本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。

文=安藤隆人

「目標は県内3冠(新人戦、インターハイ予選、選手権予選)と日本一」

 そう言い切るのは、麻布大附属のエース・塚越亮。今年のチームはある敗戦からスタートした。

 昨年のインターハイ2回戦。5年ぶり2回目の出場を果たしたチームは、初戦となった星稜戦で、1-1のPK戦の末に敗れた。その後、星稜はインターハイベスト8に進み、選手権では準優勝を果たした。

「自分たちはやれるという手ごたえを掴めた。今度は全国で強豪を倒したい気持ちが強くなった」

今年のチームは塚越を始め、昨年のメンバーが多く残り、「より流動的に、攻撃に自由を与えながら仕掛けていくサッカー」(安彦篤監督)を展開。その中で塚越の存在は、肝となっている。

「2トップの下に置いて、どこにでも顔を出せと言っている。特に守備から攻撃への切り替えやタメなどで、重要な役割を果たす」と安彦監督が語るように、塚越のポジションは『自由』。トップ下だが、サイドハーフ、ボランチ、FWと中盤から前のすべてをプレーエリアとし、状況に応じて、ポジショニングを取っては、高いキープ力とパスセンスで攻守の起点になる。

 向上との決勝では、1試合を通じて、最も多くボールに触れていた。立ち上がりは相手のバイタルエリアに頻繁に顔を出す。6分、正確なスルーパスをFW竿下征也に通すと、竿下を経由し、FW阿部速秀が先制点を挙げた。38分には今度は阿部に正確なスルーパスを通し、阿部からのパスを受けたMF中山克広が2点目を決めた。

 後半に入ると、ボランチの位置に入って、前掛かりになってきた向上の攻撃の芽を摘み、かつDFラインから積極的にボールを受けて、タメを作って前線の流動性を引き出した。そして、2-1で迎えた73分(40分ハーフ)、バイタルエリアでボールを受けると、タイミングよく入ってきた阿部へパス。阿部のスルーパスに竿下が抜け出し、試合を決定づける3点目を挙げた。

 試合は3-1で終了。『自由なエース』が全得点の『アシストのアシスト』を決め、3冠中、2冠を達成する勝利を手にした。

「今日は最高の崩しが出来た。この崩しを全国でもしたい」

 試合後、優勝には素直に喜んだが、すぐに気持ちは次なる目標に切り替わっていた。次なる目標はインターハイ優勝。これは決して大風呂敷ではなく本気だ。

「僕は常にボールをなくさないことを意識している。相手の状況をしっかりと見極めて、必要であれば今日のようにボランチに落ちるし、チャンスがあれば積極的に仕掛けていく。自由と言っても、しっかりと全体のバランスを見て、必ず味方との距離が遠くならないように、細心の注意を払いながらやっている」

『自由なエース』は『気配りのエース』でもある。この気配りがフルに発揮されたとき、チームは破壊力ある攻撃が可能になる。あの星稜戦を糧に、塚越の目には早くも全国の強豪たちの姿が映っている。