元日本代表DF都並敏史のコロンビア戦 徹底分析「遠藤の縦パスに注目!!」

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 コートジボワールに逆転負けを喫し、ギリシャともスコアレスドロー。わずかに残っている2大会連続のグループステージ突破を実現するためには、グループC最強のコロンビア代表に勝つしかない。ホセ・ペケルマン監督が率いるコロンビアは、隙のないチームに仕上がっている。それでも、日本代表にも勝てる可能性はあるはずだ。チーバス(メキシコ)を率いていた頃、ペケルマン監督の下でコーチング方法を学び、現地でW杯取材を続けている元日本代表DF都並敏史氏にポイントを聞いた。

<先発予想 もっとも慣れたメンバーで臨め>

 スペインの予選敗退やコスタリカの躍進など、数々の波乱が起きている今大会ですが、日本代表も、思い通りの戦いができていません。まず、この試合は対戦相手のコロンビアを意識することより、4年間で日本が積み上げて来たサッカーを、最高の状態で見せてほしい。そのためにも、選手たちには集中して試合に臨んでほしいと思いますが、23日の練習を見た感じだと、チームの雰囲気は良くなっていました。

 ギリシャ戦前の練習を見たとき、あまりにも静かで気になりましたが、今回は選手たちも声が出るようになっていて、ギリシャ戦前よりは遥かに良い雰囲気でした。22日にオフがあり、その日の夜に決起集会をしたことも良かったのだと思います。オフの前日の夜だったら、選手たちは次の日のことを気にせずに、よりリラックスできたとは思いますが、息抜きができたことは大きいと思いますよ。

 この試合に向けて、アルベルト・ザッケローニ監督に一番伝えたいのは、最高の日本代表を見せるためにも、やり慣れた形で試合を始めてほしいということです。ギリシャ戦では、MF大久保嘉人を右で、MF岡崎慎司を左でスタートさせましたが、ああいう不慣れなことをすると、『守備のことを考えているのかな』と選手たちの気持ちは後ろに引っ張られてしまいます。攻撃的に行くのであれば、一番やり慣れた形でスタートするのがいいでしょう。その点で言えば、最終ラインはギリシャ戦の4枚で、ボランチは遠藤保仁を固定し、パートナーに長谷部誠か、山口蛍。2列目に右から岡崎慎司、本田圭佑、香川真司を並べて、1トップは好調を維持している大迫勇也。大会前の出場試合数は柿谷曜一朗の方が多かったかもしれませんが、わざわざプレッシャーの掛かった一戦で初めて先発起用するより、途中から投入した方が良いでしょう。柿谷と大久保は後半からのエネルギーにしてほしい。これが僕の考えるコロンビア戦のベストメンバーです。

<コロンビアの強みは? 攻守のバランスの良さ>

 対戦相手のコロンビア代表は、98年大会以来4大会ぶりのW杯を戦っています。しかし、今回のチームはこれまでとは別物。その理由は、ペケルマン監督の存在に尽きます。これまで南米予選を勝ち抜いたときも、コロンビア代表は失点の多さが目立っていました。ところが今回は南米予選の16試合で、わずか13失点しか許していません。

 僕がペケルマンの下で修業したとき、彼は『攻撃だけでも、守備だけでもダメだ。バランスが重要だ』と口酸っぱく言っていました。実際に、選手の能力を活かして、明確なルールのある守備を構築します。今回で言えば、MFカルロス・サンチェスとMFアベル・アギラールの安定感は特筆に値します。彼らを軸としたバランスの良さが、現在のコロンビア代表、最大の強みです。

 もちろん、攻撃力もハンパじゃありません。エースのFWラダメル・ファルカオは、ケガで今大会の登録メンバーから外れました。しかし、コロンビア代表にはJリーグで年間20点は取れるであろうレベルの選手がゴロゴロいます。前半の45分を耐えたとしても、後半疲弊してきたところに、同レベルのフレッシュな選手を、さらに投入してくるわけですから…。この攻撃陣を90分とおして抑え込むのは、至難の業です。

 コロンビア代表は、すでにグループリーグ突破を決めています。しかし、メンバーを大幅に変えることはしないでしょう。もし『他の選手を試している』と主力が感じ取ったら、それでモチベーションが下がる危険性もありますし、監督もチームの良い状態を維持したいはずです。おそらく、GKは試しておきたいということもあって、42歳のGKファリド・モンドラゴンを使うでしょう。また、ベテランのCBマリオ・ジェペスは警告を受けていることとコートジボワール戦で太腿を痛めていたので、大事をとってDFカルロス・バルデスを起用することが予想されます。ボランチはサンチェス、アギラールの一枚を外し、よりゲームメーク能力の高いMFファン・フェルナンド・キンテーロ、もしくはMFアレクサンデル・メヒアを起用してくるかもしれません。FWにはジャクソン・マルティネスを使ってくるでしょう。最大で4人くらいの変更に抑えてくるのではないでしょうか。

<立ち上がりはどうなる? 速攻に警戒が必要>

 日本は、べた引きしたギリシャを最後まで崩せませんでした。コロンビアは本来、前からボールを奪いに行くチームですが、ハーフウェーラインまで引いて、相手を待ち構えてボールを奪い、裏のスペースを使う戦い方も柔軟にできます。日本戦のコロンビアは、メンバーを多少変更することで、DFのバランスも変わるでしょう。ですから、序盤は日本にボールを持たせて、ジャクソン・マルティネスのスピードを生かして裏を狙う。そういう意図を持って試合に入ってくると予想します。

 このコロンビアに対して、日本はとにかくボールを走らせることです。クイアバの気候は暑いですし、うまくボールを走らせて相手を消耗させないといけません。攻撃に入った時は、ボランチも、SBも、片方が出ていくような形にして、高い位置でボールを回す。ただし、ギリシャ戦のように両SBが上がる展開になると、とんでもないカウンターが襲ってきます。ギリシャの速攻は、左のサマラスがサイドで起点をつくり、そのままボールを運んでくるという形でした。コロンビアはCFが流れて、その選手を基準点にして、追い越す選手が出てきます。CFが落としたボールに対して、3人目の選手が裏へ走ってくる。このシンプルな『3人目の動き』のルールを、ペケルマンは徹底してチームに植え付けます。

 より具体的にすると、日本のDF吉田麻也が引いたCFにくっつきすぎて、最終ラインを上げたりすると、その背後に2列目からドーンと走ってきます。こうなると、オフサイドは取れません。この形が一番、危険です。対処方法は状況にもよりますが、裏のスペースを狙ってくる選手がいたと判断した瞬間に、CBが先回りして背後のスペースを埋めること。そしてマークを外したCFは、ボランチが見る。このセオリーに沿った連係が、スムーズにできないと、非常に危険です。日本のボランチは攻撃をサポートするために高い位置を取るため、CBとの距離は離れています。その状態で縦パスが中央で引っ掛かると、一気に大ピンチになるので、絶対に避けないといけません。

<観戦ポイント 遠藤がどれだけ縦パスを通せるか>

 コロンビアに有効なのは、ドリブル突破です。コートジボワール戦では、FWジェルビーニョがドリブル突破から得点を挙げましたが、CBはカバーリングが遅い側面があります。そこを突くスピーディーなワンツー、ドリブルによる素早い仕掛けは、日本の武器です。その回数を増やすためにも、遠藤を先発から起用してほしいんです。彼が入ることで、チーム全員が『攻撃的に行くぞ』というイメージを持てますし、コロンビアのボランチはパワー任せに、突っ込んでくることも多い。そこをうまくいなして、前にボールを運べるうまさが遠藤にはあります。遠藤がプレスをかわして、どれだけ縦パスをつなげるかは、この勝負の見所であり、勝敗を分けるポイントとなるでしょう。

 とにかく厳しい戦いになることは確実です。相手がグループリーグ突破を決めていて、余裕がある状況の立ち上がりが勝負です。多少、スロースターターになっていて、緩いところがあれば、そこを突くしかありません。そのアドバンテージをしっかり生かし、戦ってほしいと思います。スコアは何でもいいから、とにかく勝ってくれ!! 最高のものを出せれば、日本は勝てるはずです。

(構成 河合拓)