長谷部誠が検証する
ザックジャパンのW杯(3)

 ブラジルW杯グループリーグ第2戦、日本代表はギリシャと対戦して0−0と引き分けた。試合のあと、最初にベンチから出てきた長谷部誠は、戦いを終えた選手たちの肩をたたきながら、ひとりひとりにねぎらいの言葉をかけて回った。それから数十分後、ミックスゾーンに現れた長谷部の表情は、憤りを通り越して、どこか悲しげだった。

「今日の結果は、残念というか、悔しいです」

 その声は、少し震えているようだった。

 日本とギリシャは、ともに初戦を落として、互いに負けられない一戦だった。序盤、主導権を握ったのは、日本だった。初戦のコートジボワール戦の反省から、「前から積極的にプレスをかけていこう」ということが、チーム全体で意思統一されていた。その動きは、初戦とは比べ物にならないほどの迫力があった。

「やはり、初戦で不甲斐ない試合をしてしまったので、それを払拭したかった。今回は(チームとして)ゲームの入り方も良かったし、前への意識もあった。ボールを取られたらすぐに取り返すという、攻守の切り替えもできていた。いいリズムで試合を運べていたので、やっていて手応えはありました」

 攻撃でも随所に積極的な姿勢が見られた。ボランチの山口蛍から1トップの大迫勇也にタテパスを当ててサイドに展開したり、相手アンカーの横のスペースに入ってきた選手に素早いパスを入れたりして、2列目の右サイドで先発した大久保嘉人や大迫らが前を向いてボールを受けたときには、決定的なチャンスが生まれていた。長谷部は「この流れなら、ゴールを奪える」と思っていたという。

 だが、前半38分、ギリシャのMFカツラニスが長谷部を倒し、2枚目のイエローを受けて退場すると、試合の流れが一変した。ひとり少なくなったギリシャは、システムを4−4−1に変更し、ゴール前に人を固めて、より守備重視の戦いにシフトしたのだ。

 おかげで、ボールの支配率では日本が圧倒的に上回った。見た目には日本の有利は明らかだったが、守りに徹したギリシャの術中にはまってしまった。

「相手は10人になり、守るしかなくなって、守備的な選手をさらに入れてきた。そこで、自分たちは戦い方を変えることなく、とにかく自分たちのいい形を出そうとしたけど、相手にあれだけ引かれてしまうと、なかなか崩すのは難しい。(日本は)シンキングスピードを速めて、ボールを動かす際の強さや速さがもっと必要だった。最後のところ、相手を崩し切れなかったのは、日本の攻撃力がまだ頼りないのかな、と思います」

 長谷部は、前半だけの出場で遠藤保仁と交代。残りの45分間は、ベンチから戦況を見守ることになった。

 後半は、まるでハーフコートマッチのようだった。ギリシャ陣内で日本が終始ボールをキープしていた。しかし、前半ほど多くチャンスを作ることはできなかった。

「(後半も)サイドから崩していこうという話はしていたけど、相手が完全に引いた状態で、難しいゲームになっていた。とにかく、自分は祈るしかなかった」

 結局、長谷部の祈りは届かず、試合は0−0のまま終了した。

「前半、11対11の状態ではいい形が作れたけど、相手がひとり減ってからの戦い方には、多くの課題が残ったと思います。やはり、ポイントは前半だった。チャンスは作れていたので、自分たちが決め切れなかったのが、大きかった。そこは、チームとしても、個人としても、悔いが残ります」

 ギリシャと引き分けて、日本は勝ち点1にとどまった。決勝トーナメント進出に向けて、かなり厳しい状況に追い込まれた。グループリーグ3戦目、コートジボワールがギリシャに勝てば、その時点で日本の敗退が決まる。ギリシャがコートジボワールに勝つか引き分ければ、日本にもわずかに可能性は生まれるが、そのためにはコロンビアに点差をつけて勝たなければいけない。コロンビア戦に向けて、長谷部はどんな決意で挑むのだろうか。

「コロンビアは、どんどん前に出てくるチームなので、打ち合いになると思います。でもそこは、自分たちにとっても望むところ。ギリシャ戦のように、アグレッシブに前からいって戦えば、自分たちの力が存分に出せる相手だと思います。だから、自信を持って、がっぷり四つに組んで勝負したいと思います」

 ただ、気になるのは、選手たちのメンタルだ。絶対に勝たなければいけない試合をドローで終え、しかも攻撃的なサッカーを標榜しながら、得点はゼロに終わった。これまでやってきた自分たちのサッカーに対する自信を失って、士気が下がってしまうことはないのだろうか。

「いや、これで『終わった』と下を向くような選手は、このチームにはいないですよ。コロンビア戦は、やることがはっきりしていますしね。他力頼みになりますが、自分たちはとにかく勝たないといけない。たくさん点を取れれば、上にいける可能性がある。気持ちとしては、非常にクリアーです。コロンビア戦に向けて、チーム全員できちんと準備するという点において、自分はしっかりとリーダーシップをとって、先頭を切ってやっていかないといけない」

 6月22日のオフの夜には、決起集会を開いたという。追い詰められた中、長谷部はチームをどうやっていい方向に導いていくのか。大一番を前にして、"主将"としての手腕が問われる。

佐藤俊●文 text by Sato Shun