ウイルスやスパイウェアなど、パソコンを巡る被害は連日のように報道されている。いまどき、使用するパソコンにセキュリティソフトを導入していないユーザーはいないのでは、と思う人も多いだろうが、さにあらず。

 やや古いデータで恐縮だが、昨年、米国マイクロソフトが発表したレポート『Microsoft Security Intelligence Report』によると、「2012 年下半期平均で、約 24%のコンピューターが、リアルタイム保護が有効なマルウェア対策製品を実行していない、もしくは、期限の切れたマルウェア対策製品を使用している」という。

 ここでいうマルウェアとは、コンピュータウイルス、ワーム、スパイウェアなどの悪意があるソフトウェアのこと。つまり、約4人に1人が、有効なセキュリティソフトを使用していないことになる。

 また、同レポートによると、「マルウェア対策製品のリアルタイム保護が有効に機能しているコンピューターより、リアルタイム保護が機能していないコンピューターは、マルウェアおよび迷惑ソフトウェアへの感染率は約5.5 倍高い」というデータも記載されている。セキュリティソフトは万能ではない、とは巷間よく言われるが、導入している方が安全性は高いことは明白である。

 そこで、セキュリティソフトを自分のパソコンにインストールすることになるのだが、ここで選択がふたつに分かれるのではないだろうか。有料のソフトにするか、それとも無料のソフトにするかの二択だ。有料ソフトの方が無料より機能面で優れていることは論を待たない。ただ、無料のものが存在する以上、「なんとかタダで済まないかな」と考えたくなるのも当然ではある。

 無料のセキュリティソフトは、従来、その実力が疑問視され続けてきたが、最近の充実ぶりは目覚ましいものがある。例えば、オフィス互換ソフトで有名なキングソフトの『インターネットセキュリティ』は、広告を表示することで無料提供され、しかも電話によるサポートも受けられる。これ以外にも、『AVG アンチウイルス 2014』『アバスト!無料アンチウイルス』といった無料ソフトが知られている。

ネットバンキング専用の無料セキュリティソフト、その実力は?

■金融機関も無料でセキュリティーソフトを提供

 そして、最近、こうした無料ソフト以外に、金融機関が提供する無料のセキュリティソフトが登場している。まず、昨年末、三菱東京UFJ銀行が、自行のネットバンキング利用者に対して無料提供を開始したのが『Rapport(ラポート)』。IBMグループのセキュリティ企業であるTrusteer社が作成する、インターネットバンキング専用の無料ソフトだ。

 すでに、海外の多くの金融機関や企業に導入されており、インターネットバンキングを狙ったウイルスの検知や駆除、インターネットバンキングで使用する通信情報の改ざん防止の機能を備えているという。三菱東京UFJ銀行は、ネットバンキングを悪用した不正送金事件の頻発を受けて、Trusteer社とソフトウェアライセンス契約を締結し、無償提供を始めたとしている。

 このRapportは、当初、三菱東京UFJ銀行のネットバンキングユーザーだけにしか提供されていなかった。しかし、その後、地方銀行にも相次いで導入されている。主なところを挙げると、山口銀行、北九州銀行、琉球銀行、百十四銀行、八十二銀行などである。いずれも、各行のネットバンキングにログインをした後、ダウンロードができる。導入する地銀は、今後も増えるだろう。

 また、ゆうちょ銀行では、不正送金対策ソフト「PhishWall(フィッシュウォール)プレミアム」を導入している。国内のセキュアブレインが作成するWebセキュリティ対策ソフトで、利用者のパソコンをウイルスに感染させてニセ画面を表示し、暗証番号・合言葉等を詐取することで、不正送金を可能とさせる攻撃『MITB(マン・イン・ザ・ブラウザ)』対策を施しているという。ゆうちょ銀行に口座があり、ゆうちょダイレクトへログインした後に無料でダウンロードすることができる。

 こうした金融機関が提供するウイルス対策ソフトは、ウイルス検知・駆除の機能が、他の無料あるいは有料のウイルス対策ソフトと異なるため、すでにパソコンにインストールしているウイルス対策ソフトとの併用が可能だという(一部、併用不可のソフトあり)。
さらに、特筆すべき点は、ダウンロードした金融機関でのネットバンキングのやりとりだけでなく、他の金融機関を使ったネットバンキングや、ログイン認証情報、クレジットカードデータのフィッシング防止機能もあるところ。多くの金融機関が導入している実績があることから、信頼度も高い。

 筆者は、三菱東京UFJ銀行でRapportを使っているが、とても軽快に動いてくれている。ネット検索でヒットしたサイト画面に対するアラートもよく効いている。

 なお、筆者はウイルス対策ソフトについては素人同然なだけに、有料ソフトと比べてどちらが優れているのか? といった判断はつかない。しかし、無料かつソフトの軽さを考えれば、当該銀行に口座を作り、ネットバンキングを契約する手間をかけても、ダウンロードする価値はあると言えるだろう。

文/松岡賢治

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。