東大生が普段どんな講義を受けているのか気になりませんか?

 作家、辻原登さんが2013年の前期に、東京大学で行い好評を博した文学の講義が、この度、一冊の本になりました。書籍『東大で文学を学ぶ ドフトエフスキーから谷崎潤一郎へ』では、近代小説の起源についての講義から始まり、古今東西あらゆる文学や文学批評を例に挙げながら、ドフトエフスキーや谷崎潤一郎といった近代小説の巨匠たちの作品へと光が当てられていきます。

 辻原さんは講義に先立ち、次のように述べます。

「この教室で、近代小説について一度、本当に真剣に考えてみたい。ひとつひとつの作品を通して、同時にまたその作品から離れて、われわれが今『小説』と呼んでいるものは何なのかということを、私自身が考えたことを君たちに『どうだろうか?』というかたちで提示してみたい」

 実際に近代小説を考えていくにあたり、辻原さんは「近代小説の最大の特色は描写である」と言います。しかし、自ら作家である辻原さんは、そうした描写と呼ばれる文章を書くのも読むのも苦手だと言います。
 なぜ「描写」は作家を苦しめるのでしょうか。確かに、今自分のいる周囲の情景を言葉として書かなければならないとしたら、多くの方もまた戸惑うのではないでしょうか。辻原さんは次のような例を挙げながら、学生たちに説明します。

「あそこに緑の木が見えますが、葉むらが風に揺らめいて、光が鮮やかに葉の裏を照らしている、こんなふうにわれわれは日常の中では考えないし、しゃべらないでしょう。それを小説の中でやるというより、それをやらなければいけないのはきつい」

 小説では、普段私たちが行わない描写をしなければならず、しかしそれこそが近代小説を成立させている重要な要素だと言うのです。

 そして近代小説に関する一連の講義を行った上で辻原さんは、要約の大切さも説き、全講義内容を1200字で要約するようにとのレポートを学生たちに課します。本書では、その課題を受けての学生たちのレポートが、16本収録されています。学生たちが講義を受け、どのようにまとめたのか、こちらも必見です。

 東大生たちが受けた人気の講義。みなさんも本書を読むことで、体験してみてはいかがでしょうか。