控え選手持ち腐れ…解せない“交代枠1つ余してのドロー”

写真拡大

[6.19 ブラジルW杯C組 日本0-0ギリシャ ナタル]

 10人になって守りの意識がさらに研ぎ澄まされたギリシャ。欧州予選12試合中8試合で無失点、計6失点という強力DF陣が徹底した守りに入ったとき、ピッチ上の選手は「11人のほうが良かった」(長谷部誠、内田篤人)と直感していた。

 守備ブロックを敷き詰める相手を打ち破るのはただでさえ難しい。まして、ギリシャが相手だ。ただ、それでも突破の糸口が見当たらないわけではなかった。バイタルエリアにはわずかにスペースがあった。実際、FW香川真司とFW本田圭佑はそこの隙を使ってパス交換し、打開策を見いだそうとしていた。

 大柄なギリシャ、膠着した状況、その中にわずかに使えそうなバイタルのスペース。この状況で有効と思われる選手はベンチにいた。FW齋藤学(横浜FM)だ。

 FW清武弘嗣(ニュルンベルク)も、FW柿谷曜一朗(C大阪)もいた。控え選手は90分間にアップエリアで何度も状態をつくり直し、出番に備えていた。スタンドをホームのように仕立て上げた日本人サポーターたちも、彼らの出番を期待したに違いない。

 しかし、アルベルト・ザッケローニ監督は交代枠1つを余したまま、後半40分ごろからDF吉田麻也を前線に上げるパワープレーに出た。指揮官は「交代選手を結果として一つ使わなかったのは、内田と長友を動かしたくなかったのと、吉田を前に持ってくる作戦をしたから。私は3人目の交代は青山を考えていた」と説明した。

 今まで試したことがないとはいえ、この状況での後半40分過ぎからのパワープレーは一方的に否定されるものではないだろう。相手が10人なのだから守備の選手を一枚削って前線に上げるのは手としてある。問題は、その前に打っておくべきことがあったのではないかということだ。パワープレーをするにしても、その後であるべきだったのではないか。

 試合後、齋藤は無念さを押し殺しながらこう言った。

「結果の通りになってしまったが、まだ(突破の可能性は)残されているので、下を向く必要はない。自分は出番がなかったけれど、しっかり準備もしていたし、これを続けることが大事だと思っている。みんな、出られないからと言って気持ちを下げる選手じゃない。出られないで負けるのは悔しいけど、出ている選手はもっと悔しいと思う。自分も何とかこのチームの力になるために、やるべきことをやるしかない」

 齋藤は「自分が入ったらバイタルのどこかで崩せたらというイメージだった。(香川)真司君が途中から出て左だったので、出るなら右かなとは思っていた」と、具体的なイメージを持って準備していたという。

 清武は途中出場でポンと入ってもすぐに試合に入ることのできる力がある。本田や香川との相性も良い。こちらも、出番があれば何かできるという思いはもちろんあったはずだ。だが、口から出てきた言葉は試合に出ていた選手を思いやるものばかりだった。

「今はみんなで前向いてやるしかない。(ロッカールームでも)そういう言葉をみんながしっかりかけ合っていた。みんなが一緒に戦う気持ちでやっている。みんなが悔しいと思う」

 1分1敗の2試合で出場した選手は15人。フィールド選手の6人にいまだ出番がない。

「サブのメンバーは(コンディション維持のための)きつい練習でもすごく声を出してやっている。それは先発組の力にもなっていると思う」。ある選手はしみじみと言った。

(取材・文 矢内由美子)