大久保は憮然…亡き父の誕生日に「勝ちたかった」

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[6.19 ブラジルW杯C組 日本0-0ギリシャ ナタル]

 最大のビッグチャンスだった。後半23分、FW香川真司からの浮き球のパスに反応したDF内田篤人が右サイドのスペースに飛び出し、ダイレクトのクロス。ファーサイドに走り込んだFW大久保嘉人が左足ボレーで合わせたが、シュートは大きく浮いてしまった。

「ボールが浮いていたので、振り抜かずにインサイドに当てようと思ったけど……。(内田からの)ボールが強くて、上に行った」。勢い余ってピッチの外に飛び出した大久保はそのまま仰向けに倒れ込み、空を仰いで悔しがった。

 前半33分にはDF長友佑都のアーリークロスに頭で合わせたが、枠を捉え切れず、後半32分の右足ミドルもGKに弾かれた。チャンスはあった。得点の匂いも感じさせたが、決め切れなかった。

 右サイドでの先発は「全然、想定していなかった。前(1トップ)かなと思っていた」と、大久保自身、意外だった。右サイドで縦関係を組んだDF内田篤人も「ミーティングで(大久保)嘉人さんなんだなと。『どういう指示を受けてますか?』って聞いたら『何も受けてないよ』と」と明かした。

 積極的な攻撃参加からのクロスでチャンスを演出するギリシャの右SBトロシディスを警戒し、守備でも貢献度の高いFW岡崎慎司を左サイドに置き、空いた右サイドに大久保が回った格好だった。「最初、俺が左かなと思ったけど、何か狙いがあったんじゃないですかね。指示? 言われていない」。憮然とした表情を見せた大久保は、試合中も苛立ちを隠せなかった。

「後ろで持つ時間が長すぎた。もったいない。もっとバイタルエリアに入れないと。時間がもったいなかった。もっとバイタルエリアを使って、相手に中を締めさせてからサイドを使うとか。バイタルエリアを使う回数が少なかった。今日の相手ならもっともっと入れられた」

 前半38分に退場者を出し、10人になったギリシャは引いて守っていた。DFラインやボランチがいくら低い位置でパスを回していても、相手の守備は崩れない。もっとくさびを入れてほしい。縦パスを入れてほしい。試合中から何度となく要求したが、状況は改善されなかった。

「勇気でしょうね。(縦に)当てる勇気。DFがいようが、当ててくればどうにかするし、それで取られたら俺たちのせいでいい」。この日は、昨年5月12日に亡くなった父・克博さん(享年61)の誕生日だった。人一倍、勝利にこだわっていたからこそ、思うようにいかない試合展開が歯がゆかった。「勝ちたかったけど……。でも、もう1試合ある」。わずかな望みをつないだ24日のコロンビア戦へ。大久保は必死に気持ちを切り替えた。

(取材・文 西山紘平)