ギリシャ戦最大の決定機を外し、悔しさをにじませた切り札・大久保嘉人

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 前半からボール支配率は70パーセントに達し、14日のコートジボワール戦ではなかなか収まらなかった1トップの大迫勇也にくさびのボールが何本も入るなど、良いリズムで試合を運んでいたギリシャ戦の日本代表。だが、38分のコンスタンティノス・カツラニスの退場によって相手がより一層守勢を強めたことで、攻め手がなくなっていく。後半に入り、遠藤保仁、香川真司という温存していたジョーカーを投入しても、ゴール前を固める相手をはがしてスペースをこじ開けることはできなかった。

 そんな日本にとって最大の決定機が訪れたのが、68分だった。右サイドを走りこんだ内田篤人へ、香川が中央からスルーパスを出し、内田がゴールラインぎりぎりのところまでえぐってマイナスのクロスを入れた。これがファーサイドに通り、絶妙のタイミングで走りこんできた大久保嘉人に渡る。誰もが日本の先制点を確信しただろう。しかし、切り札の放ったシュートはまさかの枠の上。これが決まっていたら、勝ち点3を取れていただけに、あまりにも痛すぎるシーンだった。

「(ボールが来た時は)ボールが浮いていたので、振り抜かず、インサイドに当てようと思って。それで最後の最後のところでボールがポンって浮いて、ここ(くるぶしのところ)に当たったんです。あそこで振り抜いたらもったいないし、上にバーンって吹かすなと。ボールも強かったし、ただ当てるだけで、あとはその勢いで行くかなと思ったんですけど…」と、大久保は脳裏に焼き付いているその瞬間を詳細に振り返った。それだけ本人の中では忘れがたいミスだったということ。得点力不足にあえぐザックジャパンの救世主として期待されたベテランは、チームに勝ち星をもたらすことができなかった。

 この日の大久保は予想通り、スタメンに名を連ねた。ただ、大迫に代わって1トップに入ると見られたが、ふたを開けてみると2列目の右サイド。香川が外れ、左には岡崎慎司が陣取った。後半途中から香川が入ってきた後も、1トップには岡崎が上がり、大久保は右サイドのままで90分間プレーした。

「ポジションは全部監督の指示です。俺も最初は左かなと思ったけど、狙いがあったんじゃないかな。ディフェンスの時に7番(ゲオルギオス・サマラス)にキープされるのが嫌だったんで、挟み込んで取りに行くようには言われましたね」と、彼は右での攻守両面での仕事を精力的にこなそうとした。

 大久保は、トップ下の本田圭佑らとポジションを流動的に入れ替えながら得点機をうかがったが、バイタルエリアが空いているのを十分に使い切れなかったという後悔があるようだ。

「前半からバイタルが空いてたし、もっとボールを出してもらってもよかった。自分もずーっと声出して言い続けてたんだけど、まだ見えてないところがありましたね。相手が10人になり、ハーフタイムの時ももっと入れてくれと言っていたんだけど、後半は後ろでボールを持つ時間が長すぎた。当てる勇気が足りなかったし、すごく時間がもったいなかったのは感じました。そういう時にファウルをするのがもったいない。相手は引き分けでいいから時間稼ぎするし、ホントに時間のムダ。あれはすごい悔しかった」と、大久保はチームとして連動した攻撃が最後までできなかった不完全燃焼感を吐露した。

 この日、森重真人に代わって先発した今野泰幸が「俺が左に上がってオカちゃんとか圭佑とかサコとか佑都は見ていたんだけど、嘉人のところがすごく空いていたっていうのを試合中に言われて、そこをなかなか使えなかったと。見えていたらもっと展開が変わったと思うし、嘉人も活きたと思うし、そこが悔いが残りますよね」と、残念そうに語った通り、ザックジャパンの4年間で1度しかチームに呼ばれたことのない大久保とチームメートが合わせきれていないという、微妙な連係のズレもやはりあったようだ。

 チームにとっての最後の大舞台で、ここまで大久保に頼るなら、ザッケローニ監督にはもっと早く彼を招集し、チームに馴染ませてほしかった。それは、大久保自身も他の主力も感じているはずだ。そういう意味で、チーム作りの期間が本当に悔やまれる。

 ただ、もはや過去を振り返ってきても何も変わらない。日本は24日のコロンビア戦が今大会ラストマッチになる可能性が高い。そこで消化不良感を残していたら、これまでの時間が無意味なものになってしまう。大久保自身も彼が最も渇望しているゴールという結果を残すことで、自らの存在価値を今一度、示してもらいたい。

文=元川悦子