サッポロビールによるヒット商品『極ZERO(ゼロ)』販売停止は大きな驚きをもって世間に受け止められた。プリン体ゼロ、糖質ゼロなのに「第3のビール」だったため、お買い得な庶民の味方として人気を集めていた商品の突然の販売停止の背景には、財務省・国税庁による「大増税計画」があった。ジャーナリストの永井隆氏がレポートする。

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 プリン体、糖質ともにゼロの第3のビールとして人気を集めていたサッポロビールの『極ゼロ』販売停止が発表された。税法上、第3のビールに該当しなくなる怖れがあるためと理由が明らかにされた。財務省幹部は6月上旬、記者らを前に『極ゼロ』について聞かれ、こう嘯(うそぶ)いた。

「だから酒税はシンプルにすべきなんだ」

 この一言の意味は大きい。まさに『極ゼロ』が増税の地ならしに利用されつつある発言なのだ。

 ビール系飲料だけでも極めて複雑な税体系がある(ビール系とは別に清酒やウイスキー、ブランデーなどは独自の規定がある)。それを「シンプルにする」――つまりビール系(及び税法上同じ分類の缶チューハイやハイボール)の税制は一本化するということだ。もちろん、彼らが安いほうに合わせるわけがない。一番高い通常のビールの税体系に一本化するのが財務省の長年の悲願なのである。

 布石はいくつもあった。

 2003年5月、当時大ブームになっていた発泡酒が増税され、10円ほど値上げされた。当時の国税庁酒税課長は、国税審議会の場でこう語っている。

「ビールと発泡酒の種類間のいわゆる税率の格差というものをできる限り是正していこうという1つの方向がございまして……」

 格差是正といってもビールの税金を下げるのではなく発泡酒を増税したわけだ。

 さらに2006年改正では、ビールが1缶あたり0.7円だけ減税された一方で、シェアを増していた第3のビールが同3.8円増税された。やはり庶民の味方が狙い撃ちされた。それで終わりではない。2012年の税制改正大綱ではこんな巧妙な言い回しで大増税の方針が記された。

〈酒税については、酒類の致酔性や課税の公平性等の観点を踏まえ、類似の酒類についてアルコール度数に着目した税制とする方向で引き続き検討〉

 同じくらい酔っ払う同じ度数の酒なら、税も同額にすべきということだ。するとどうなるか。店頭価格140円前後で販売されている第3のビールは、単純計算で50円ほど高くなり、ほとんど通常のビールとの価格差はなくなる。1日1缶飲めば、年間2万円近くの増税だ。

 日本の酒税の総額は1兆4000億円程度で、その7割がビール系飲料で占められている。仮に発泡酒と第3のビールが通常のビールと同じ税額になれば、トータルでざっと4000億円の負担増になる。ただし過去の例から見て、増税すれば消費量は減る可能性が高い。消費者は安い酒が飲めず税収は増えない、誰も得しない改悪だ。

 昨年末には、軽自動車税の増税が決まった。2015年4月から、現在の1.5倍の年間1万800円となる。スズキの鈴木修・会長兼社長は軽自動車税増税を「弱いモノいじめ」だと語ったが、第3のビール増税はまさに庶民いじめに他ならない。

 大手ビールメーカー首脳は諦め顔で語る。

「軽自動車税は地方税だから所管は総務省だった。それだけに財務省は負けじとビール増税を本気で進めようとしている。来年の増税は既定路線と捉えている」

※週刊ポスト2014年6月27日号