長谷部誠が検証する
ザックジャパンのW杯(2)

 ブラジルW杯初戦のコートジボワール戦を1−2で落とした日本代表。ミックスゾーンに出てきた主将・長谷部誠の表情は、敗戦の悲しみというよりも、自分たちに対する怒りがこみ上げているように見えた。そして、その怒りを面(おもて)に出さないように我慢しながら、語気を強めてこう言った。

「負けた事実はもちろん悔しいですけど、自分たちのサッカーが表現できなかったことが、いちばん悔しいです」

 試合展開は理想的に見えた。前半16分、本田圭佑が先制ゴールを奪った。圧倒的に有利な立場に立った日本だったが、そこからいつもの"日本らしさ"を失ってしまった。

「先制点を取るまではよかったんですけど、そこから引いてしまったというか、守りに入ってしまった。早い時間に先制点を取ったので『失点したくない』という気持ちが、チーム内に出てしまった。でも、このチームは、1点を守り切るサッカーをしてきていないし、そういうチームづくりをしてきたわけじゃない。それに、リードしていても、守備的な選手を入れる、ということもやってきていない。僕とヤットさん(遠藤保仁)が代わったのも、本来の攻撃的なサッカーをやる、という意図で投入されているわけだし、そういう意味では自分たちのサッカーをやることにブレてはいないけど、その自分たちのサッカーができなかった、ということです」

 長谷部の言うとおり、先制点を奪ったあと、チームは消極的になった。それは「(1点を)守り切りたい」という気持ちもあったのだろうが、それにプラスして、ミスが多くてカウンターを食らうシーンが頻発。なかなかリズムに乗れなかったこともある。

「う〜ん......、確かにミスから(相手に)ボールを引っ掛けられたりして、簡単にボールを失う場面が多く、そこからピンチになっていました。あとは、僕らボランチの重心を含めて、全体的にラインが低かったから、ボールを奪う位置も低過ぎた。結果、そこから相手のゴール前に行くまでに手数をかけ過ぎて、ボールを奪われる、という悪循環に陥ってしまった。チームとして、もう少し全体をコンパクトにしてやらなければいけなかった」

 それでも、前半はなんとかピンチを凌(しの)ぎ、1点リードで終えた。長谷部は後半9分、遠藤と交代し、ベンチから戦況を見つめることになった。

 それからすぐ、後半19分、21分に日本は立て続けに失点し、逆転された。崩されたのは、日本の左サイドだった。そこは、序盤から相手に狙われていて、日本にとって危険な"火種"になる気配があった。長谷部自身は、どう見ていたのだろうか。

「うちの左サイドは攻撃的だし、そこの裏を相手が狙っているのはわかっていました。前半も(相手の)右サイドの選手が攻撃のあとも攻め残りをしていて、そこは自分がカバーしながらやっていたんですけど......。失点シーンに関しては(相手に)センタリングを楽に上げさせ過ぎだし、中央の守備もマークが外れていた。そこは、自分たちが注意してきた部分でもあったので、やられ方としてはよくなかった」

 日本はその後、FW大久保嘉人を投入するなど、同点に追いつくための手段を講じた。最後はセンターバックの吉田麻也を前線に上げて、練習でさえしたことのなかったパワープレイまで試みた。だが結局、追いつくことも、試合をひっくり返すこともできなかった。攻撃的なサッカーを標榜しながら、後半はチャンスらしいチャンスを作れぬまま、敗戦した。

「自分たちのサッカーを表現できなかったし、試合の中で、自分たちでうまくいかない部分を修正することもできなかった。それは、自分たちが未熟だったから。試合でうまくいかないときに、指示を出してリズムを変えていくのが、リーダーとしての自分の役割。それだけに、自分の責任は大きく感じています。負けたという結果はもう変えられないので、今は気持ちを切り替えつつ、チームの修正点を見つめ直したい。そして、自分たちのサッカーをする、ということに全力を注いでいきたい」

 グループリーグ突破に向けて、手痛い敗戦となった。しかし、昨年6月のコンフェデレーションズカップでも、初戦でブラジル相手(0−3)に不甲斐ない試合をしたあと、続くイタリア戦(3−4)では一変した。目の覚めるような攻撃サッカーを展開し、世界の強豪国を追い詰めた。

 はたして、次のギリシャ戦ではどうか。何を修正していけば、自分たちのサッカーを取り戻すことができるのだろうか。そして、負けられない一戦で、どうすれば勝利を収めることができるのだろうか。

「とにかく、全体的に前への意識が必要だと思います。実際、自分たちは多くのチャンスを作ることを求めていますし、その点からすると、コートジボワール戦はチャンス自体が少なかった。チーム全体をコンパクトにして、守備でも、攻撃でも、みんなが連動して戦えることが重要だと思います」

 自分たちのサッカーを貫けば「勝てる」という自信を、長谷部は変わらずに持っているのだろうか。

「もちろん、自分たちのサッカーをやりさえすれば"いける"という自信は、紛れもなくあります。それは、選手全員が持っている」

 長谷部は微塵もブレていない。自分たちが築いてきた日本のサッカーを貫くことができれば、勝利を得られると確信している。ギリシャ戦では、それを完遂できるのか。日本代表の"勇気"が試される。

佐藤 俊●文 text by Sato Shun