ブラジルW杯、ザックジャパンの次なる相手は、欧州の試合巧者ギリシャ。グループリーグ突破のためには、なんとしてもこの壁を乗り越えなければならないが、その弱点はどこにあるのか。ギリシャ人記者に聞いた。

■「結局はギリシャが1−0で勝つ!」

「どのチームにも突破のチャンスがある」といわれるグループC、ザックジャパンの第2戦(日本時間6月20日)の対戦相手は、レベルの高い欧州予選を勝ち抜いたギリシャだ。

このギリシャについて、日本の各メディアや専門家の見方は、「最も勝ち点3を期待できる相手」という楽観的なものから、「デカくて、カウンター攻撃とセットプレーが上手で、日本が一番苦手なタイプ」と警戒心を煽(あお)るものまで、実にバラバラ……。

ならば、ギリシャのことはギリシャ人に聞くべし! ということで、週プレは、複数のギリシャ人サッカー記者をキャッチして根掘り葉掘り聞いてみた。

まずはギリシャ国内での前評判から。代表的な意見はこれだ。

「グループCはコロンビアが本命だと思うけど、ほかのチームが勝ち進んでも何も不思議はない。ギリシャの目標は決勝トーナメント進出。2012年のEURO(欧州選手権)でもベスト8に進出したし、十分手が届くはず」(フリーのスポーツライター、ディミトリス・コツェリス氏)

日本におけるザックジャパンの成績予想と似てるな〜(苦笑)。

「ギリシャ人はスポーツ好きで、なかでもサッカーは人気が高いんだ。近年のわが国は経済危機でばかり目立ち、今も大変な状況が続いているけど、ギリシャ国民はこれまでにもさまざまな困難を乗り越えてきた。そして、サッカーの代表チームも、04年のEURO優勝をはじめ、過去に何度も奇跡を起こしてきたんだよ。あれからちょうど10年、そろそろ何かをやってくれるのではと、国民の期待も高まっているね」(テレビ局『ノヴァ・スポーツ・ヘラス』のアポストリス・ランポス記者)

なるほど。経済危機にあえぐ国の復興のシンボルとしての期待もかかっているというわけか! そんなお国事情があるとなると、選手たちの気合いもハンパないだろう。それだけでも手ごわそう!

続いてはチームの長所について。これについては、誰に聞いても「堅守」と即答!

「強力な守備だね。厳しい欧州予選でも実証済み」(日刊紙『エトノス』のニック・シガロス記者)

「パパスタソプーロスをはじめ、ウチのDF陣にはいい選手がそろっていて、サントス監督も『勝てないとしても、少なくとも敗戦は免れることができる』と堅固な守備には自信を持っている。勝ち試合のほとんどが1−0というスコアだしね」(前出・コツェリス氏)

「ギリシャからゴールを奪うのは、どんな相手にとっても大変だと思う。そこについてはウチは一流だから」(スポーツ紙『FOS』のアレックス・ビルビリス記者)

レベルの高い欧州予選10試合で喫した失点はわずかに4。長身の選手たちがきっちりと陣形を整え、素早く囲い込む組織的な守備が彼らの最大の武器だ。

「日本はとてもいいチームだよ。5大会も連続してW杯に出場しているしね。フィジカルがしっかりしていて、何よりよく動く。香川のような才能ある選手もいて、どんなチームとも戦えると思う」(スポーツ誌『レフェリー』のパナギオティス・コウタコス記者)

と、ザックジャパンへの評価は高いものの、試合のスコア予想を聞くと、こちらも「接戦になるけど、結局は1−0でギリシャが勝つだろう」(前出・シガロス記者)という回答で全員一致。ムム……それだけ自信があるってわけか?

■「日本のスピードにはとても対応できない」

では、チームの短所についてはどうか?

「決定力不足。ウチはいつもゴールを挙げるのに苦しんでいるんだよ。数少ないゴールも、その大半がセットプレーかカウンターによるもの。だから、相手にリードを許すと苦しい。ウチのサッカーは相手の攻撃を受け止めてからのリアクションが基本で、自分たちからアクションを起こすのは苦手だから」(前出・シガロス記者)

「創造性に欠ける点。戦術的には勤勉だけど、アイデアに欠けるね。大ベテランのカラグーニスにしても、必死で頑張る姿には感銘を受けるんだけど……クリエイティブかと言われるとそうじゃないから」(前出・コウタコス記者)

「(エースストライカーの)ミトログルの状態がイマイチなんだ。本来持っている能力はすごく高いんだけど、(今年1月に移籍した)イングランド(のフルハム)で出場機会に恵まれなくてね。彼が本来の姿を取り戻してくれれば……」(前出・ランポス記者)

とまあ、不安や不満の声が次から次へ! そして、一様に心配していたのが「スピード不足」だ。



「とにかくスピードがない! そこは明らかに日本に劣る」(ランポス記者)

「正直に言えば、スピードがある日本の選手に対応できる選手がいないかもしれない。ウチには何人かベテランがいるんだけど、なかでも中盤のカラグーニスは37歳、カツラニスも34歳だから……。ギリシャ歴代最多キャップを誇るカラグーニスは国民的英雄でチームの心臓ともいえる選手なんだけどね……」(前出・コツェリス氏)

どうやら、37歳&34歳の中盤“高齢ゾーン”は狙い目!

「スピード勝負では日本に勝てないだろう。DFにしても、ハイボールには強いけど、ウチは日本と同じアジアの韓国と、南アW杯と今年3月の親善試合で対戦し、二度とも0−2で敗れているんだ。だから、不安は尽きないね」(前出・コウタコス記者)

堅守とはいえ、スピード不足で選手の平均年齢も高い。しかも、試合の行なわれるブラジル北東部のナタルは高温多湿。そう考えると、ギリシャ自慢の90分間ハードワークは難しいだろう。

ということで、戦い方を整理する。おそらくギリシャは最初から守備をしっかり固めてくるので、ザックジャパンのボールポゼッション(保有率)は前半から高くなる。とはいえ、相手のカウンター狙いは見え見えなので、くれぐれも調子に乗って攻め急がない。前半は安全第一のサッカーを心がけるべし!

勝負を仕掛けるのはギリシャの動きが徐々に落ちてくる後半から。ポイントは選手交代。相手が苦しい時間帯に、相手の一番苦手とするスピードのある選手、そして、味方のスピードを生かせる選手を投入できるか。週プレ的には、昨年11月の親善試合のオランダ戦(2−2で引き分け)で大成功した、香川と遠藤の後半アタマからのスーパーサブ起用をぜひぜひオススメしたい。

頼むぞ、ザッケローニ!

(取材協力/栗原正夫)