6月10〜15日に東京体育館で開催されたバドミントンヨネックスオープン・ジャパン(※日本で毎年開催されている国際大会)。

 女子ダブルスで高橋礼華/松友美佐紀(日本ユニシス)が優勝して前田美順/垣岩令桂(ルネサス)が2位になったほか、男子シングルスの田児賢一や男子ダブルスの平田典靖/橋本博且(トナミ運輸)、混合ダブルスの早川賢一/松友美佐紀(日本ユニシス)が3位の成績を残して観客席を沸かせた。

 しかし、男子と女子の戦いぶりには違いがあった。

 今大会前に行なわれたユーバー杯(※団体で戦う女子の世界選手権)で女子は33年ぶりの2位という結果を残したが、決勝では中国に惨敗。その悔しさを胸に、ヨネックスオープンには挑戦者の気持ちで臨めていた。

 一方、男子はトマス杯(※団体で戦う男子の世界選手権)で、最強の中国を準決勝でストレートで下し、強豪マレーシアとは決勝で6時間を超える死闘を繰り広げ、初優勝。突然手にした世界一の称号にプレッシャーを感じた状態で今大会を戦うことになった。

 シングルスの佐々木翔(トナミ運輸)が「メンバー全員がまだ整理がついていない状態だと思う」と話すように、トマス杯から帰国後に1日休んだだけで今大会の合宿に入るというスケジュールの中で、気持ちを落ち着かせることもできず、注目される地元開催の大会に臨んだのだ。

 それを物語るかのように11日の1回戦では、トマス杯4勝1敗で世界ランキング3位の早川/遠藤大由(日本ユニシス)が、ペアを組み換えてきたマレーシアのゴー・V シェム/タン・ブンホンにストレート負け。また、トマス杯5戦全勝だった19歳の桃田賢斗(NTT東日本)は、世界ランキング3位のヤン・ウ・ヨルゲンセン(デンマーク)を相手に第1ゲームを21対13で奪って、第2ゲームも序盤から大きくリードして、トマス杯の勢いをそのまま維持しているような試合で勝利に目前まで迫ったが、「19対15になった時に勝てるんじゃないかと思ってしまい、引いてしまったのが悪かった」と、連続得点で追いつかれて20対22でゲームを落とした。

 そしてファイナルゲームも、「相手がペースを変えてきた時に考えすぎてしまった」と、中盤から圧倒されて12対21でゲームを奪われてしまい敗退。「注目された中で試合をするのは価値があることだし嬉しいことだと思っていたけど、逆に勝ちたいとか、勝たなければいけないという感情が出てきて、いつも以上に力が入ってしまった」と反省する。

 さらに翌日は、シングルスの佐々木がランキング5位のトミー・スギアルト(インドネシア)に、上田拓馬(日本ユニシス)が16位のフー・ユン(香港)にストレート負け。ダブルスの嘉村健士/園田啓悟(トナミ運輸)も、ランキング1位のモハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワン(インドネシア)から第1ゲームを先取しながら、最後は力でねじ伏せられ、上位の壁を崩せずに終わった。

 そんな中、重圧を感じながらも着実に結果を残したのがエースの田児だった。

「正直言えば、1回戦からいっぱいいっぱいでした」と苦笑するが、1回戦では韓国の李東根を相手に第1ゲームを簡単に取って、第2ゲームは落としたが、「集中力に問題もあったが、そのなかでうまく切り換えられて。これが思い入れのあるジャパンオープンでなかったらズルズル行ったかもしれない」と言うように、ファイナルは序盤から圧倒して21対8で勝利した。

 2回戦は格下のソウラブ・ヴァルマ(インドネシア)を圧倒すると、3回戦ではランキング12位のハンス・K・ヴィティンフス(デンマーク)に第2ゲームを奪われながらも「いいところも悪いところも出てしまった。苦しい場面はいっぱいあったが、負けないという気持ちは強かった。今まで調子が良くなくても勝てるようにとやってきたが、今日はそれを出せたと思う」と、安定感のあるプレーで準決勝進出を決めたのだ。

 だがその準決勝は世界ランキング1位のリー・チョンウェイ(マレーシア)との対戦。前日の3回戦までとはまったく違う気迫を見せるプレーをしてくる相手に、一度もリードすら奪えずストレート負けという結果に。

「予想以上にお客さんも入ったからもっと長く試合をしていたかったけど......。彼にしっかり準備をされて気合を入れてこられると、まだ太刀打ちできない。トップ選手は準決勝からギアを入れ換えてくる感じだから、自分もそうならなくてはいけない」と完敗を受け入れた。

 また、「トマス杯優勝というプレッシャーの中で4試合できたというのは成長していると思うけど、みんなはそこで勝つのを見たいと思っているだろうし。そういう期待に応えられるように頑張っていきたい」と話した。

 世界ランキング4位というポジションから見れば、田児の結果は妥当とも言える。だがそれでも、世界トップのリー・チョンウェイに、これで対戦成績を1勝17敗とされた差は大きい。これからの課題はそれらをどう埋めていくのかになる。

「今回の日本の男子は、団体戦といえど世界一になり、しかも準決勝で中国を3対0で破ったあとの大会だったから苦しかったと思います。でも個人的には、これまでずっと世界で勝つことを意識してきたし、世界一になった限り、次は2位では満足してもらえないというのもわかっているから......。正直プレッシャーはあったけど、中国勢やリー・チョンウェイなどのトップ選手はそういう状況におかれてもしっかり勝っているわけで。その意味では僕たちも初めてそういう立場に立てたのは、貴重なことだと思っています」(田児)

 田児は「リー・チョンウェイのいない大会でもいいから、スーパーシリーズ(※)で1勝したいですね」と笑いながら言う。

(※)オリンピックや世界選手権に次いで重要な、世界バドミントン連盟が開催している年間トーナメント試合

「コートの中でのリー・チョンウェイはスピードも経験も違うし、立っているだけで醸しだされるオーラもすごいんです。でも、2〜3年前はそのオーラを見た時点で勝負がついてしまっていたけど、最近はそのオーラがすごいと思いながらも、自分の中でしっかり整理して勝負できるような気持ちになっているので。まずは調子が落ちて波が下がった時でも、キッチリとそれなりの結果を出し続けていくことが重要だと思いますね」

 初めての世界一を経験した男子チームと田児にとって、このヨネックスジャパンオープンは、それぞれの頂点を狙う気持ちを確かめる、第一歩の試合になったはずだ。

折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi