『ゆだねて束ねる ザッケローニの仕事』(飛鳥新社)

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 ワールドカップが盛り上がりを見せる中、試合結果とともに関係者間でやたらとささやかれるのが「次期代表監督」だ。監督自身が契約切れを見計らってそうした動きを記者にリーク、世間の反応を見るというケースすらある。

 過日、ガラタサライASを優勝に導いたロベルト・マンチーニ監督が合意のもとで同クラブとの契約を解除した際も、あたかも日本に興味があるような報道が流れ、エスパニョールを退団したハビエル・アギーレ監督も同様だった。業界関係者からは、こうした動きが監督サイドのマネジメントによる戦略的な誘い水だという声がある。逆に、韓国では、日本代表監督であるザッケローニが電撃移籍する可能性があるという記事もいくつか出ている。

 ある記事によれば、韓国がアジアチャンピオンの座を奪い返すためには大きな秘策を欲しがっており、ライバル日本チームのデータをはじめ、アジアに詳しいザッケローニは適任。ヨーロッパのチームとも親交があるため、強い戦略分析官を引っ張ってこられる、としている。

 実現すればセンセーショナルなこの話には、読者から「実現したら痛快だ」と大きな反響があったというが、韓国のサッカー記者は「実際に韓国側にザッケローニの引き抜き案があって、そうした場合の反響を見るために記事を出させた」という。

「現在の洪明甫(ホン・ミョンボ)監督は切れ者ですが、いかんせん海外との交流に弱い。02年日韓ワールドカップで4位に入ったときに作られた早い攻守スイッチのサッカーも今は昔、韓国ならではの俊敏性に長けたプレイにザッケローニは適任という声がある。ただし、日本の選択を後追いすることに後ろめたさもあって、世論を知りたがっているんです」(同)

 これは、自身の商品価値を上げるザッケローニ監督にとっても悪くない話だという。

「ザッケローニが来るならと、豪華なゲストハウスとサッカー研究用施設を新たに新設するなんて話もある」(同)

 ただ、日本サッカー協会の関係者にこうした話を尋ねてみると、いたって冷静だ。

「向こうはこうした報道をいちいち流して、日本の動揺を誘う。過去にも似たような例はあったけど、話はそんな単純に運ぶものじゃないからね。いま次期監督についてマスコミにはいろいろ名前が出ているけど、その中で実際に話が具体的に進む可能性があるのは、1つか2つだけ。報道に左右されることはない」

 また「万一、ザックが韓国に移籍したって、そのザックのサッカーを日本陣営は知っているんだから、あまり脅威にはならないよ」と一蹴された。フィールドの実力とはまた違う次元の話だが、この大人の余裕はなかなか頼もしいところだ。
(文=鈴木雅久)