スコアのうえでは1−2。だが内容的には、完膚なきまでに叩きのめされた完敗である。

 決勝トーナメント進出のためには非常に重要なグループリーグ初戦で、日本はコートジボワールに逆転負けを喫した。

 前半16分にFW本田圭祐が鮮やかな先制ゴールを叩きこんだ以外、まったくと言っていいほど見せ場のない試合だった。キャプテンのMF長谷部誠は「今日は前半も後半も自分たちのサッカーが表現できなかった。それが一番」と敗因を語る。

 では、長谷部の言う「自分たちのサッカー」とはどんなものなのか。

 ザッケローニ監督が頻繁に口にする言葉を借りるなら、「主導権を握って試合を進めるサッカー」ということになるのだろう。

 相手がボールを持った状態で守りを固め、一発のカウンターを狙うようなサッカーを目指してきたわけではない。あくまで自分たちで長くボールを保持し、攻め続ける。それこそが「主導権を握る」の意味だ。

 ところが、この試合は90分を通してボールはほぼコートジボワールに支配され続けた。

 試合を通じて見られたのは、連動性に欠けた日本の守備陣形。FW大迫勇也と本田が高い位置からプレスをかけようとしても、これに反応してボランチやDFラインが押し上げる様子はなかった。必然、チーム全体が間延びし、次々にパスをつながれた。大迫は「一人ひとりの距離が遠くて、重心が後ろに下がった戦い方になった」と話す。

 長谷部は「早い時間に先制したことで多少引いてしまった。(1点を守ろうと)守備に頭が行ってしまった」と振り返るが、先制する前の時間からすでにプレスのかかりは悪かった。ボールの出どころを抑えられないため、全体がズルズルと後退して相手に押し込まれる時間が続いていた。DF吉田麻也もまた、「先制して受け身になった」と話していたが、それが主原因とは考えにくい。

 大迫からは「硬かった」、あるいは吉田からは「体が重かった」という声も聞かれており、緊張感やコンディションの問題で出足が悪くなった可能性も十分にある。

 もちろん、何が何でも前から行けばいいというわけではなく、一度引いて守りを固める選択肢もあっていい。長谷部は「行けると思ったら前から行くし、相手がいい状態(でボールを持っている)ならリトリート(後退)する」と、チームとしての狙いを語る。

 だが、実際には、大迫が「前から行こうとしたが、後ろがついてきていなかった」と話したように、「前から行く」という守備はほとんど機能していなかった。状況だけを見れば、4年前の南アフリカ大会で当時の岡田武史監督が採った、引いて守る戦術に近い。

 それでも当時は、全員がそれを狙いとして共有していたからこそ守り切れたのである。チーム全体が連動せず、結果として"引いてしまった"のでは自陣ゴールに近い位置で相手にラクにプレイされるだけ。見た目の状況は似ていても、これでは守り切れるはずはなかった。

 問題はそれだけにとどまらない。せっかくボールを奪っても、つなぎの段階でイージーなパスミスがあまりにも多く、簡単にボールを失いすぎた。結果、相手ボールの時間ばかりが長くなり、大迫が「守備で走らされた感がある」と話した通り、時間を追うごとに日本選手の足は動かなくなった。

 長谷部は「1点を守り切るようなチームづくりをしているわけではない。だが、たくさんチャンスを作るという部分でも全然できなかった」と語り、こう続ける。

「簡単にボールを失う場面が多く、そこからピンチになった。ボールを奪う位置が低すぎ、そこから相手ゴール前までいくには手数をかけなければならなくなり、その間にボールを失う悪循環だった」

 自分たちでボールを、しかも相手ゴールに近い位置で保持する時間を長くすることで失点の確率を減らし、かつ得点の確率を高める。それが「自分たちのサッカー」のはずだった。ところが、狙いとはまったく逆のことばかりしていたのでは、敗戦も仕方がない。

 何もできなかった。何もさせてもらえなかった。やはり完敗である。

浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki