現地6月12日早朝(日本時間6月12日夜)、第114回全米オープンがいよいよ開幕する。舞台はノースカロライナ州のパインハーストNo.2。1999年、2005年と、過去に2回開催されているアメリカ屈指の名門コースだ。

 今年は大会史上初めて、男女同じコースで開催される(全米女子=現地6月19日〜22日)ことでも話題だが、男子の設定はさすがにハード。全長7562ヤード(パー70)と、2005年大会から346ヤードも延長された。さらに、近年の大改造によってラフが刈り採られ、フェアウェーを外すと「ワイヤーグラス」と呼ばれる荒れ地が待ち受ける。そのうえ、「世界一難しいセッティング」と言われる全米オープンだけあって、馬の背のように湾曲した高速グリーンも強烈。難関コースが選手たちを苦しめることは間違いない。

 今大会最大の注目は、なんと言ってもザ・メモリアルトーナメント(5月29日〜6月1日)で米ツアー初優勝を飾った松山英樹(22歳)である。青木功、丸山茂樹、今田竜二に続いて日本人4人目の快挙を遂げた男が、日本人初のメジャー制覇を果たせるか、だ。

 そんな松山への関心は、日本だけにとどまらず、世界中から集まっている。まずは、昨年大会のチャンピオンであるジャスティン・ローズ(33歳/イングランド)が、公式会見で松山について語った。

「松山は(全米オープンを)勝てる要素を持っていると思う。飛距離も出るし、パッティングもいい。そして、メモリアルトーナメントではプレーオフの末に優勝を飾った。それは、彼の勝負強さの裏づけになったと思う。彼がメジャーで勝つ日は、必ず来るだろう」

 今年のマスターズチャンピオンであるバッバ・ワトソン(35歳/アメリカ)も、松山の存在を気にかけて、優勝候補のひとりに挙げた。

「ティーグラウンドに立てば、どこの国の選手とかは関係ない。松山はとても若いし、これから長い間、この場(米ツアー)で活躍していくだろう。こういう(メジャー)大会でも同じように奮闘するだろうし、優勝するチャンスもある。実際、(メモリアルトーナメントで)それを証明して見せたからね。高いレベルで戦える、いい選手だ」

 選手たちに限らず、大会を主催するUSGA(全米ゴルフ協会)メディア部長のピート・コワルスキー氏も、松山に大きな期待を寄せている。

「松山は、今最もホットなゴルファーだし、多くの人が優勝候補として見ているだろう。メモリアルトーナメントのタフなコース(ミュアフィールドビレッジGC/オハイオ州)でいいプレイをし、最終日最終ホールの18番で素晴らしいバーディーを決めてプレーオフに持ち込んだ。そして、見事優勝を勝ちとった。彼は(今大会でも)間違いなく"危険な存在"だ」

 選手、関係者からも熱い視線を注がれている当の松山は、現地6月7日にコース入り。同日、初めての練習ラウンドをこなした。

 途中ティーグラウンドで、「このコース、長い!」と嘆いたり、フェアウェー横の荒れ地から打ったショットが木に当たると「もう、いやだぁ!」とうめいたり、難コースに頭を抱えるシーンが目立った。それでも、コース内に建立されたペイン・スチュアート(※)の銅像の前では記念撮影をするなど、全米オープンも2度目の出場で、リラックスした様子も見てとれた。

※今年と同じパインハーストNo.2で開催された1999年大会の覇者。しかし同大会から4カ月後、飛行機事故により、42歳の若さで他界した。その冥福を祈って、ペイン・スチュアートが1999年大会で優勝を決めた瞬間のガッツポーズの銅像がコース内に建立されている。

 ペイン・スチュアートの優勝は、当時7歳の松山の記憶にも「鮮明に残っている」という。それを受けて我々が、今大会の最後に「ペイン・スチュアートのようなガッツポーズが見たいですね」と問うと、松山は「勝ったときには、それが(ガッツポーズ)出るといいですね、自然と」と実に頼もしい返答をしてくれた。

 翌6月8日の日曜日には、練習ラウンド終了後、練習場に直行。パッティング、ドライビングレンジでのショット、そしてアプローチと、1時間以上かけて入念に打ち込んでいた。ショットの練習中には「戻ってきた」と話し、いいショットの感覚を取り戻して、調子が上がってきていることをうかがわせた。

 そして、開幕を翌日に控えた6月11日には、日本人で初めて米ツアー優勝(1983年ハワイアン・オープン)を成し遂げた、青木功プロが松山のもとを訪れた。憧れの大先輩から「(米ツアー初優勝)おめでとう」と祝福された松山は満面の笑みを浮かべた。

 もちろん、青木プロも松山には大きな夢を託している。

「とにかく(松山に対する周囲の)期待が大きいのでね、自分でその期待を背負うようなゴルフをしなければいいね。今までどおりの自分のやりたいようなゴルフをやれば、自ずと結果はついてくるんじゃないのかな、と私は期待しています」

 松山が同組でラウンドするのは、リッキー・ファウラー(25歳/アメリカ)とジョーダン・スピース(20歳/アメリカ)。地元アメリカを代表する、人気と実力を兼ね備えた若手プレイヤーである。多くのギャラリーが注目する中、どんな戦いを見せてくれるのか、一層目が離せなくなった。

 米ツアー優勝を手にした松山は、今や世界のどんなトッププレイヤーを相手にしてもまったく臆することはない。それどころか、日本人初のメジャー制覇を確実に射程圏にとらえている。

「(メジャーを)勝てるんじゃないか? という気持ちがすごく強くなりました。あとは、それに向けて、自分がどれだけいい状態に持っていくかだけだと思う。それがうまくいけばいいな、と思います」

 日本人選手がいまだ見たことのない"メジャー制覇"という頂にたどり着くことは、もはや夢物語ではない。その日は、現実に近づいている。日本、そして世界のゴルフ界の歴史が動く瞬間を見逃してはいけない。

テレビ朝日 全米オープン取材班●構成 text by tv asahi US open crew