似非科学には、次のような特徴がある。

^豸するともっともらしい理屈を装っている。すくなくとも、専門以外の者が「たしかに一理あるかもしれない」と思う程度の説得力は持っている。

△修亮臘イ稜惴紊法崟亀繊廚隠されている。「こうあるべきだ」というイデオロギーが先にあり、それに都合のいいデータだけが選択的に集められる。

自分に甘くて相手に厳しい。自らの主張を非科学的だと批判されると、「わずかでも可能性があるのなら対等に扱われるべきだ」と強弁する。それに対して相手のミスは絶対に見逃さず、完全無欠の証明を要求する。とりわけ、統計学的な議論はいっさい受け付けない。

い気蕕卜場が悪くなると、容易に陰謀論に走る。「自分たちの主張が間違っているように見えるのは、権力者が重要なデータを握りつぶしているからだ」などとすぐに言い出す。

ジ世て┐譴できないような状況では、感情論を持ち出す。すなわち、「たとえ間違っていたとしても、自分たちの善意には意味があるのだ」などという。

 こうした特徴は、マンガ『美味しんぼ』を擁護する議論にすべて見られたものだ。このことは、放射能の影響についての『美味しんぼ』の描写が典型的な似非科学であることを示している。

 似非科学はなぜ批判されなければならないのか。それを考えるために、「エイズ否認主義」という似非科学を検証したアメリカの臨床心理学者セス・C・カリッチマンの『エイズを弄ぶ人々』(化学同人)を紹介しよう。

「エイズの原因はHIVウィルスではない」という似非科学

 幸いなことに日本ではまともに扱われていないが、アメリカを中心に、「エイズの原因はHIVウイルスではない」という似非科学が広く信じられている。カリッチマンはこれを「エイズ否認主義」という。これはもちろん、「ナチスによるユダヤ人虐殺はなかった」という「ホロコースト否認主義」を念頭に置いた命名だ。

 トンデモ科学というのは、科学の専門教育を受けたことのない“素人学者”の荒唐無稽な主張のことで、エンタテインメントとして楽しむこともできるが、エイズ否認主義はこうした“トンデモ”とは一線を画している。それは、議論の中心にいるのが正真正銘の一流科学者だからだ。

 ピーター・デューズバーグはドイツ生まれの分子生物学者で、1964年にカリフォルニア大学バークレー校の正教授に就任した。その研究対象はがんを引き起こす遺伝子で、レトロウイルス(遺伝物質(RNA)を細胞の遺伝構造(DNA)に組み込んで自己複製するウイルス)を最初に分離した科学者の1人だ。デューズバーグはこの業績によって1986年に米国科学アカデミー会員に選出され、そのまま研究を続けていればノーベル賞の候補になってもおかしくなかった。

 ところがデューズバーグは1980年代前半、これまでの研究成果をすべて投げ捨てて、突然180度主張を変えた。レトロウイルスについての研究を自己批判し、がんとは無関係だといいだしたのだ。デューズバーグによれば、がんの原因はあくまでも環境にあり、有害物質が染色体の異常を誘発しがんを引き起こすのだ。

 もちろんがんの遺伝的な影響については未解明のことも多く、デューズバーグの批判が科学的に無意味だとはいえない。問題なのは、彼が自分の主張をエイズにまで拡張したことだ。

 エイズはHIVウイルスの感染によって発症するが、このHIVもレトロウイルスの一種だ。これまでエイズについてなんの研究もしたことのなかったデューズバーグがこの問題に首を突っ込むようになったのは、がんにおいて「レトロウイルスは無害だ」と主張している以上、HIVというレトロウイルスも人体には無害で、エイズの原因になるはずはないからだ。

 専門家のなかにエイズとHIVの関係を疑う者はおらず、彼らは最初、デューズバーグの異説に徹底して反論し、それでも彼が考えを変えないと似非科学として無視した。しかしそれでも、デューズバーグのエイズ否認主義は急速に信奉者を増やしていった。

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