「自分に甘く他人に厳しい」というのは人間の本性でしょうが、それが目に余るのは似非科学を振りかざすひとたちです。

 彼らはまず、相手に対して厳密な証明を求め、すこしのミスも許しません。そして、自分の主張が非科学的だと批判されると「表現の自由」だと言い張ります。

 似非科学が流布する背景には、それを支持する知識人(と呼ばれるひとたち)がいます。彼らは、あらゆる意見には発言の場が与えられるべきであり、国家権力がそれを制限するのは不当だといいます。

 これは一見、正論のようですが、だとしたら「朝鮮人を殺せ」と叫ぶ集団の表現の自由も命がけで守らなければなりません。しかし彼らは、そんなことをする気はまったくないでしょう。「表現の自由」は、自分の気に入った意見にだけ適用されるのです。

 マンガ『美味しんぼ』では、福島第一原発を取材した主人公の鼻血と放射能の関係が問題になりました。マンガを掲載した編集部は「ご批判とご意見」と題した特集を掲載しましたが、そこに似非科学擁護の典型を見ることができます。

 長年、反原発の活動を続けてきた原子核工学の専門家は、「私は医者でも生物学者でもない」と断わりつつ、「現在までの科学的な知見では立証できないことであっても、可能性がないとは言えません」と述べます。また疫学の専門家は、「(放射線と鼻血のあいだに)『因果関係がある』という証明はあっても、『因果関係がない』という証明はされていません」として、福島の風評被害は『美味しんぼ』問題を過剰に煽ったせいだといいます。

 こうした少数の擁護派を探してきて、「福島県内で被爆を原因とする鼻出血(鼻血)が起こることは絶対にありません」(放射線防護学の専門家)という正論(科学の常識)と並べれば、賛否両論を公平に扱っているように見えて「非科学的」との批判をごまかせるのです。

 “トンデモ科学”はエンタテインメントとして楽しめますが、専門家(らしきひと)が似非科学を擁護するようになると被害はとめどもなく拡大します。

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