星稜がインハイへ、スタメン唯一の2年MF阿部のプロへの想い

写真拡大

 本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。

文=安藤隆人

 昨年度の選手権準優勝の星稜が、順当にインターハイ予選を制し、山梨への切符を手にした。

 遊学館との決勝戦、スタメンで唯一の2年生だったMF阿部雅志が、大きな存在感を放った。右MFとしてプレーした阿部は、29分、中盤でボールを受けると、そのままドリブルし、バイタルエリアのスペースに侵入。この瞬間、阿部は2つの選択肢を持っていた。裏に抜け出そうとするFW森山泰希と、ダイアゴナルランで中央のスペースを狙ったFW大田賢生のどちらかにパスを出すか。さらに森山のオフサイドラインを気にしながらも、プレスに来たDFが寄せきれない絶妙なコースにドリブルし、『その時』を待った。

 森山が動き直して、オフサイドラインを掻い潜った瞬間、阿部は森山のスピードを殺さないように、糸を引くようなスルーパスを送り込む。ギリギリまでタイミングを待ってのラストパス。森山の前にはゴールとGKだけだった。

「ファーストタッチをしようとしたら、GKとゴールが近かったので、触ってコースを変えるだけにした」と、森山は阿部のおぜん立てのパスを、ダイレクトで優しくゴールに流し込んだ。

「スルーパスを出すタイミングをずっと図っていた。相手DFにいつパスを出すのか分からせないようにドリブルをしながら、最初は大田君(にパスを出すこと)も考えたが、泰希君が良い動き出しをしたので、パスを出しました。パスとしては理想的でした」

 阿部が胸を張ったように、メッセージ性十分で、抜群の精度を誇ったスルーパスだった。その後も効果的なドリブルとパスで、攻撃にリズムをもたらした。だが、決勝の2日前にU-16日本代表の一員としてアゼルバイジャン遠征から帰国したばかり。帰国の翌日に準決勝をフルに戦ったとあって、彼の疲労はピークに達していた。

「立ち上がりからちょっと足がつりそうだった」とこぼしたように、徐々に運動量が落ちてくると、後半19分に交代となった。

「今日の出来に納得はいっていません。自分の身体の弱さ、ケアの未熟さを痛感したし、シュートも少なかった。もっとシュートのイメージを持たないと、パスばかりになってしまう」

 存在感と結果は出したが、自分自身への不満を口にした。それには大きな理由がある。

「プロになるためには2年生のインターハイと選手権が重要。将来を左右する大会だと思っています」

 プロになるためには、1本のパスの余韻に浸っている暇もないし、もっと相手の脅威となる存在にならないといけない。2年生ながら高い意識と強烈な危機感を持った阿部は、山梨インターハイを『プロへのアピールの場』として、全身全霊を懸ける覚悟を持っている。