十代に絶大な人気を誇る「カゲロウプロジェクト」とは何か。超ていねいに解説

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現在『メカクシティアクターズ』というアニメが放映中です。

見ている人が周りにも増え、「カゲロウプロジェクト(以下・カゲプロ)」大好きな自分は意気揚々と「話そうぜ!」と盛り上がった時、アニメをかなり見ているはずの友人たちは言いました。
「で、『カゲプロ』と『メカクシティアクターズ』って同じなの?」
そこからかー! 確かにわかんないよね。

ニコニコ動画の累計再生数2500万以上。小説は累計200万部超え。CD「メカクシティレコーズ」売上オリコン一位。
十代に絶大な人気を誇る「カゲプロ」。
でもなぜか大人の間では全然知られていない。大きな断層が「カゲプロ」にはあります。

朝井リョウ(1989年生まれ・直木賞作家。『桐島、部活やめるってよ』など)「カゲロウプロジェクトの場合は、ボーカロイドとかイラストっていうだけで、もう勝手に遮断してしまってる大人がいると思うんですよね。でも単語レベルで理解されないだろうなと思ってた『桐島』が意外と大人に読まれたように、描いている内容的には大人にもちゃんと届くようなものじゃないかと思うんですよね。」
(クイックジャパン113 じん×朝井リョウ対談より)

「カゲプロ」って一体どういう内容なんだろう?

●「カゲプロ」が受ける層はどこだ
「カゲプロ」とは、じん(自然の敵P)(1990年生まれ。以下・じん)のマルチメディアプロジェクトのことです。
メカクシ団作戦本部|じん(自然の敵P)「カゲロウプロジェクト」公式サイト
「カゲプロ」という作品そのものはありません。ここ要注意。
現在、ニコニコ動画にアップされた多くの楽曲から、CD、小説、マンガ、アニメなどで物語が発表されています。
そのアニメが「メカクシティアクターズ」。カゲプロの一環です。

内容は、目に能力を持った少年少女が、孤独と苦悩を抱えたジュブナイル。8月15日の真夏日に、「メカクシ団」として集まり、自分たちが持っている力の謎を解いていきます。
一見「HUNTERXHUNTER」や「ONE PIECE」のような能力バトルものっぽく見えます。しかし出てくるキャラはみんな能力を使いたがらない、苦しんでいて、元に戻る模索をしています。

じん「10代の子が「わーっ」と盛り上がっているものは、僕の感覚とは本当に違うんだと思っていたんです。でも、秘密基地に集まってみんなで何かをやろう、みたいな話を曲で作っていったら、意外とみんなが「なんか分かる」「なるほど、いいね」と言ってくれて。(中略)時代や場所が変わっても、子供の頃に何かをした記憶というのは、変わらないんだなあと。」
(アニメージュ2014年5月号インタビューより)

じん「年上の人にわかってもらうための曲というのは考えたことがないです。逆に、なんで大人の人たちがカゲロウプロジェクトにこんなに食いついてくれてるんだろう、みんな子供なのかな、とか思ったりしました。(中略)きっと大人はメディアミックスだとかそういう部分に注目してくださってりしてるんだと思います」
(クイックジャパン113 じん×朝井リョウ対談より)

ぼくがカゲプロに興味を持ったのは、自分の中の子供心、夏に秘密基地作った記憶が激しくくすぐられたから。高校時代に戻ってメカクシ団入りたいです。

じん「複数人っていうのは結局一人ぼっち×9であって、それぞれ違ったコンプレックスがあり、別々に生きていかなくてはならない違った人間で、簡単に9人という一体で捉えてはいけないなと思っています。(中略)別々の人間だけど、一緒にいる、っていうことですね」
(月刊パッシュ!5月号インタビューより)

カゲプロは、じんが「カッコつけすぎ」と言われても怯まないで中学生の自分がカッコいい・好きなものをやろう(クイックジャパンより)という思いで作られました。

加えて「メディアミックスの特殊さ」が、ファンの心をがっちりつかんでいるのは見てほしいところ。
カゲプロは今、どのように成り立っているのか。
マルチメディアプロジェクトの部分に特化して、見てみます。

●今までのメディアミックス
複雑なので順を追って解説していきます。
まず、一般的に言われる「メディアミックス」について簡単に。

一般的なメディアミックスは、ベースに「原作」があります。その原作を小説、マンガ、映画などのメディアで展開していきます。
多少の改変はあるものの、軸になるのが原作で、そこから切り離すことはできません。

特殊な例として「原案」(キャラクターや、世界観など)があっても、「原作」(軸になるストーリー)がない作品もあります。世界観ベースの『機動警察パトレイバー』や『アイドルマスター』、キャラベースの『おねがいマイメロディ』などがそうです。

カゲプロはこれらのメディアミックスと、また別の形態をとりました。

●アドベンチャーの物語構造
カゲプロを知るためにもう一つ、アドベンチャーゲームの感覚について見ておきます。

アドベンチャーゲームは「ルート分岐」が幾つかあります。選択肢を選ぶことで物語が切り替わり、全く別の結末を迎えます。
これはメディアミックスでも既に行われています。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』ではルート分岐をそのままアニメに持ち込み、エンディングを2つ作りました。

大抵の場合、個々のエンディングを迎えたあとは、それで終わりです。
しかし、ゲームの中には、一回クリアしただけでははっきりしたエンディングに辿りつけない作品もあります。

何周も繰り返すうちに、全体像に関わる大きな別の物語が見えてきます。
図にある「物語A」と「物語B」は、似ているけれどもパラレルです。
A、B、Cと並行した物語を見ていくにつれて、今まで隠れていた物語の「真相」が見えます。

●カゲプロメディアミックス展開の面白さ
さて、この2つを踏まえた上で、カゲプロメディアミックス展開を見てみます。

まず最初に、ニコニコ動画にアップしているじんの楽曲が、中心軸になります。
しかしこの楽曲群はバッドエンドを迎えており、他のメディア(アニメなど)では、事件が繰り返されていることがほのめかされている。つまり楽曲は原作ではない。あくまでも、物語の中のルートの一つです。

小説『カゲロウデイズ』は、楽曲をモチーフにしてはいるものの、全く違うルートの物語を書き始めます。これが「小説ルート」。
最初はそのコミカライズかと思われていたところ、突如物語が書き換わって分岐した「マンガルート」。これもじんがシナリオを手がけています。
そして、アニメ『メカクシティアクターズ』。小説ともマンガとも全く違うルートをぐんぐん進んでおり、ファンでもビックリな展開続き。これが「アニメルート」。

じん「一本軸でそれだけでも楽しいものを作ろうとは思っていますが、同じことを別のメディアでやっても意味がない。それじゃメディアミックスではなくメディアコンバートですよね。」
(リスアニ!Vol.16.1インタビューより)

最初から並列して行く予定だったプロジェクトではありません。楽曲の再生数が増えて小説が決まり、CDなどの売上からアニメが決まった。元々は曲数すらはっきり決まっていなかったようです。
これが多面的に入り組んだ物語に進化、多くのファンを巻き込んだムーブメントになったのです。

●今後のメディアミックスへの挑戦
アニメでも小説でもいい。「スタート地点がどこからでもいいアドベンチャー」になっているのがカゲプロです。
ただ、一つではなく、二つ(楽曲とアニメ、など)以上手を出すことで面白みが増す(ルートがよくわかる)のは、ハードルの高さにもなっています。
あとは果たして、そのハードル自体を楽しめるかどうか。
これがね、ルートごとの比較すると、面白いのよ。

一方、アニメの販売はどうなるのか。月に数千円も払える層ばかりが見てはいない。
そこで、まさかの「一枚一話」に踏み切りました。値段は3000円前後(アニメBDに多いのが、2話で5000〜8000円くらい)。
一瞬びっくりしたのですが、確かにCD一枚くらいの値段で、BDと、おまけCDと、後色々特典付いてきたら中高生が買えないものではない。
かなり実験的に、策を練っています。

カゲプロの物語が最終的にどう広がっていくのかは、じんの頭の中にしかない。アニメの脚本も彼が書いています。
果たしてどうやって終わるのか。あるいはさらに広がって映画や舞台になったりするのか……じんや、アニメ制作シャフトの新房昭之を始めとした色々な仕掛け人達が、燃料を次々投下しそうだから、このプロジェクトは面白い。
(たまごまご)