「この国の『大人たち』は、いつもどこかズレている。ジョブズのようなリーダーに憧れ、夢と絆で一つになれると信じ、『日本の良さ』は必ず伝わると疑わず、若者には変革を期待し、学歴や就活は古いと嗤い、デモやSNSで世界は変われると訴える」

 これは社会学者・古市憲寿さんの新著『だから日本はズレている』の冒頭で述べられている言葉です。古市さんは、日本には非常に多くの場面で「ズレ」が存在すると同書の中で指摘しています。

 具体性がない抽象的な会議を行い、時代に合った対策を取らず、「ないもの」に期待する姿勢がこのようなズレを生み出しているというのです。

「ただ『強いリーダー』を待望するだけで、なかなか自分から動き出さない。『クール・ジャパン』や『おもてなし』と言いながら、内実は古臭い『挙国一致』の精神論。これからは実力主義の時代だと煽りながら、結局は人を学歴や社歴でしか判断できない」(本書より)

 結局のところは、社会に蔓延っている理想と現実のギャップに対して希望的な展開を期待するのみで、その展開に至るまでの道のりを具体的に思い描けていない場合がほとんどで、それが国内の「迷走」に繋がるというわけです。

「日本には強いリーダーが必要」と言われていますが、戦後一度も強いリーダーを持ったことがない日本が世界的な大国に登りつめたことを考慮すれば、そのような人間は必要ではない、と古市さんは喝破します。むしろ、国内の様々な場面で活躍する多数のリーダーがいれば十分だとも。

 また、彼は実力主義の重要性を認めつつも、これまで以上に学歴と社歴が重視されている社会の現実を受け入れる必要もあると言います。

 今の日本には早急に気づいて対策を練り直さなければいけない「ズレ」が非常に多く存在し、それらを放っておくと今後の日本の未来は明らかに悪い方向に進んでいく――本書を通じて、古市さんは警鐘を鳴らします。

 テーマとしても切り口としても既視感のある内容かもしれませんが、逆に言うと、日本の社会が抱える問題が慢性化しているとも言えます。この国にもっと良い未来が訪れるために我々がまず出来ることは、自分たちがズレていることを自覚することなのかもしれません。



『だから日本はズレている (新潮新書 566)』
 著者:古市 憲寿
 出版社:新潮社
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