日本女子ツアーでは今季、「アマチュア旋風」が巻き起こっている。2戦目のPRGRレディス(3月14日〜16日/高知県)で森田遥(17歳)が優勝争いを演じると、その後も永井花奈(16歳)がTポイントレディス(3月21日〜23日/佐賀県)で、柏原明日架(18歳)がアクサレディス(3月28日〜30日/宮崎県)でベスト10フィニッシュ。そしてついに、KKT杯バンテリンレディス(4月18日〜20日/熊本県)では、勝みなみ(15歳)が史上最年少記録(15歳9カ月)でアマチュア優勝を飾った。

 その勢いは止まらず、サイバーエージェントレディス(5月2日〜4日/千葉県)では、森田と堀琴音(18歳)のふたりが最終日最終組で回り、森田が2位、堀が4位タイと奮闘。永井も6位に入った。さらに、ほけんの窓口レディース(5月16日〜18日/福岡県)でも、柏原が初日から首位発進。あわや「完全優勝」か、という快進撃を見せた(最終的には6位タイ)。

 もはや、単なる「アマ旋風」では収まらない。それほど、アマチュア選手の活躍ぶりは凄まじい。はたして、その要因はどこにあるのか。さまざまな角度からアマチュア選手の強さの理由を探ってみた。

(1)藍ちゃんキッズの"本流"

 韓国女子ゴルフ界では、1998年にパク・セリが全米女子オープンを制覇。それから約10年後、彼女に影響を受けて育った子どもたち、通称「パク・セリキッズ」と呼ばれる韓国人選手たちが米女子ツアーで躍動した。現在の日本女子ツアーの「アマチュア旋風」は、まさにそれと似た現象と言えるだろう。事実、このことは、2009年に米女子ツアーの賞金女王に輝いたシン・ジエが予言していた。

「韓国人選手の活躍は、偉大なロールモデルがいたことが大きな理由だと思います。私もパク・セリプロを見て育った『パク・セリキッズ』ですから。そういう意味では今後、日本の女子ゴルフ界でも、宮里藍プロを見て育った世代が躍進するでしょう」と。

 周知のとおり、発端は2003年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン、アマチュアの宮里藍が当時の史上最年少記録(18歳3カ月)で優勝を飾ったことだ。そのときから、日本では空前の「藍ちゃんブーム」が巻き起こった。その宮里藍を"ロールモデル"として育った子どもたち、つまり「藍ちゃんキッズ」が、今活躍しているアマチュア選手たちであることは間違いない。

 ここ数年、日本ツアーで躍進している若手プロたちもそうだ。20歳前後のプレイヤーは、ほとんどが「藍ちゃんキッズ」言えるだろう。だが、宮里藍の影響を中学生のときに受けるのと、小学生のときに受けるのとでは、明らかに違う。ゴルフを始める年齢が若いほど、吸収力も速いし、上達度も高いはずである。

 日本選手では宮里藍以来のアマチュア優勝を飾った勝みなみをはじめ、今アマチュアとして活躍している選手たちが、そのより若年層から本格的にゴルフを始めた世代。まさしく「藍ちゃんキッズ」の"本流"なのだ。だからこそ、プロにも引けをとらず、結果を出せるのだろう。

(2)ゴルフ大衆化の恩恵

 1967年に日本で初の女子プロゴルファーが誕生し、翌年からトーナメントがスタート。当初(1960年代後半から1990年代にかけて)、選手の多くはゴルフ場のキャディーや従業員をこなしながら、そこで修行をして育った面々だった。当時はまだラウンドフィーが高く、ゴルフ場で働く者でなければ、十分なラウンド数をこなせなかったからだ。ゆえに、プロとして大成するにはかなりの時間を要し、トッププロの年齢はおおよそ30歳前後だった。

 そうした流れが徐々に変わり始めたのは、バブル崩壊以降だ。ゴルフ場の破たんが相次ぎ、ゴルフ場業界の再構築がなされた。結果、日本にもようやくゴルフの大衆化の波がやってきた。おかげで、一般的にも多くの人がゴルフを楽しむようになった。同時にジュニアの環境も整備され始め、普通の家庭環境にある子どもたちでもゴルフに触れる機会が増えていった。

 何より大きかったのは、ジュニアがラウンドする機会が増したこと。先述したとおり、バブルが弾ける1990年代初頭までは、ゴルフ場にジュニアゴルファーが出入りすることはほとんどなかった。ゴルフ場のメンバーが許さなかったのだ。しかし、バブルが弾けてゴルフ場業界が再編されると、ジュニアがラウンドするハードルも低くなった。今の子どもたちは、昔の子どもたちと違って、格段に多くのラウンド数をこなせるようになったのだ。

 さらに、女子プロツアーの場合、アマチュア選手の主催者推薦などによる出場制限がなくなった。そのため、推薦を得られれば、何試合でも出られるようになった。出場試合数が増えれば、それだけ経験値も増すし、精神的な効果も計り知れない。先日の中京テレビ・ブリヂストンレディス(5月23日〜25日/愛知県)でも優勝争いを演じた堀琴音が語る。

「プロの試合に多く出られるようになって、最近はあまり動揺しなくなりました。同じアマチュアの選手が多く出場していることもあって、普段の試合と同じような感覚でプレイできるのが大きいですね」

 また、プロゴルフコーチの中井学プロは、ゴルフという競技性において、ラウンド経験の豊富さはとても重要だと語る。

「例えば、テニスは対戦相手の体力や技量によって、勝敗は大きく左右されます。格闘技となれば、なおさらです。でもゴルフの場合、相手とコンタクトもしなければ、そのプレイから直接影響を受けることもない。対するのは、コースだけ。ですから、技量のアップにはラウンド数や試合経験の数がもっとも影響します」

 一般的に見ても、男性に比べて女性の場合、高校生ともなれば、体力的には大人と大差はない。その分、技術勝負となる女子ゴルフ界では、アマチュアでもプロに勝つことができるのだろう。

(3)JGAの育成体制の発展

 アマチュアゴルファーの躍進は、JGA(日本ゴルフ協会)のジュニア育成体制がしっかりしてきたことも大きな要因のひとつだ。森口祐子プロが語る。

「きっかけは、1999年にゴルフが国体の正式種目となったときでした。それから、各都道府県がジュニアゴルファーの育成に力を入れ始めました。その流れを受けて、数年前からJGAがジュニア育成に本腰を入れるようになった。女子部もメンタルとフィジカルのトレーニング指導などを、積極的に行なっているようです。要するに、ナショナルチームに入ることができれば、最先端の指導を無料で受けることができるわけです。それは、選手にとって大きなメリットですし、そうした指導体制が確立されているからこそ、次々と若くていい選手が出てきているのでしょう」

 実際、勝みなみや森田遥も、ナショナルチームで受けた指導の効果は大きいと口をそろえる。

「ナショナルチームの合宿で受けたメンタル面の指導が、(ツアーを戦ううえで)大いに役に立った」(勝)

「普段の生活面(食事やコンディショニング)からトレーニングの指導まで、いろいろとサポートしてもらえるので、ナショナルチームに入っているといないとでは、だいぶ違います」(森田)

 確かに、今季活躍しているアマチュアの顔触れを見ても、ほとんどがナショナルチームのメンバーか、元メンバーである。昨季ツアー2勝を挙げた比嘉真美子(20歳)や堀奈津佳(21歳)も同様だ。ナショナルチームの強化体制が、若手選手の飛躍を支えていることは間違いなさそうだ。

(4)豊富な国際経験

 ナショナルチームのメンバーになると「派遣試合」として、年間数試合の国際大会に出場できる。さらに「個人派遣」といった形で、海外の試合に出場する機会も得られる。そうした国際経験の豊富さも、今のアマチュア選手の強さにつながっている。

 というのも、彼女たちの意識が、世界にあるからだ。ゆえに、今のジュニア世代は求めているものが非常に高く、さまざまな技術を兼ね備えている。そのうえで、国際舞台のライバルである世界中のアマチュア選手が、プロのトーナメントで結果を残していることも大きい。その事実を、リアルに自分に置き換えて考えているのだ。森田遥が言う。

「ナショナルチームの『派遣試合』で一緒になった、ミンジー・リー(17歳。オーストラリア)やキム・ヒョージュ(18歳。韓国)がプロの試合で勝っているから、自分も頑張らなければいけないと思っていますし、彼女たちの活躍には刺激を受けています」

 以上、女子ゴルフ界における「アマチュア旋風」の要因を探ってきたが、ここに挙げたことがすべてではない。背負うものが増えるプロ選手と、自分のためだけに戦うアマチュア選手とのプレッシャーの違いなども、少なからず影響しているかもしれない。

 ともあれ、ジュニアのゴルフ環境が充実している今、これからも続々と強いアマチュア選手が出てくるはずだ。しかも、2016年リオデジャネイロ五輪からゴルフが正式競技になったことで、今後さらに多くの子どもたちがゴルフを始めても不思議はない。底辺拡大によって、日本女子ゴルフ界では才能ある選手が生まれる可能性がますます膨らんでいる。

古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki