小説「MONSTERZ」 集英社
脚本を担当した渡辺雄介の書き下ろし

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5月30日(金)公開の「MONSTERZ」は、不思議な力で、人間を操ることができる男(藤原竜也)と、その能力が、唯一効かない男(山田孝之)の闘いを描く映画だ。監督は、ホラー映画の巨匠・中田秀夫監督。

相手を見るだけで、思い通りに人間を操る力をもった〈男〉(藤原)は、子供の頃からひっそりと、孤独に生きてきた。あるとき、その力が全く効かない男・田中終一(山田)に出会う。
はじめてのことに動揺した〈男〉は、力を使って、終一の大事な人の命を奪ってしまう。思いがけない大きな悲劇に出会い、〈男〉に復讐を誓う終一を、〈男〉は抹殺しようと執拗に追う。
しかし、何度、瀕死の目に遭っても終一は、死なない。〈男〉は、多くの無関係な人々を操って、終一を追いつめていく。激しい死闘を繰り広げるふたりに、驚愕の結末が待ち受けていた。

公開前、渋谷駅には、藤原と山田を、各々フィーチャーしたポスターが貼られ、TSUTAYAでは、藤原派? と山田派? あなたはどっち派? キャンペーンが行われているだけあって、とにかく、藤原竜也と山田孝之の、ずしりと重い存在感あっての映画。このふたりの圧がなんだかすごすぎて、(いい意味で)笑っちゃうほどなのだ。

まず、目で人を操る藤原。舞台で鍛えた大きな演技がものを言う。全身のエネルギーを目に集中、大劇場の後ろの席まで射抜く勢いの、瞳から放射される感情に、見ているほうも凍り付くし、スクリーンも震えて見える。
ところが、その強い力が、まったく効かないのが、山田。効かないというか、不死身。車に引かれても、高いところから落ちて、その上に重いものが乗っても、平気。いっさい堪えない、そのすっとぼけた雰囲気が、こわおもしろい。まるで、生きたゾンビだ。
藤原くんが、めちゃめちゃ力んで、がんばっているのに、山田くんは、どこ吹く風。それで、ますます全身に力が入っていく藤原くん(役です、あくまで)の、動揺っぷりがお気の毒。それでも、藤原くんは、決して力を緩めず、山田くんに、まっすぐぶつかっていく。おそらく、この不動の男に、ぶつかってくだけないのは、藤原しかいまい。これは、北の狼、南の虎、みたいな、孤高の雄同士の、闘いだ。
感情だだ漏れの藤原竜也。頑として表情を変えない山田孝之。
あれ、どっかで見たことがあるような・・・。
あ、カイジとウシジマくんだ。
藤原演じるカイジは、大量の借金を、一発逆転で返そうと、カラダを張っていく男。勝負のたびに、喜怒哀楽を思う存分、出していた。
一方、ウシジマくんは、闇金業者をやっていて、お金で一喜一憂する人たちを、常に冷ややかな視線で見ていて、お金を取り立てるときは非情だ。
『MONSTERZ』は、カイジVSウシジマくん と思って見ると面白い。
それにしても、藤原も山田も、下流に生きる男の役が、不思議とよく似合う。
藤原竜也と山田孝之のバトルだけでも、十分、お腹いっぱいだが、もうひとつ重要人物がいる。

石原さとみだ。

石原さとみは、山田演じる終一が就職した小さな会社(父と娘でやっている)の娘役。彼女が、〈男〉に操られてしまったことから、大変な悲劇が起こるのだが、その操られ方の演技は目を見張るものがあった。
悲しい場面なのに、これまた、なんだか可笑しい。いや、可笑しいから、悲しいのかもしれない。自分の意志とは無関係にカラダが動いてしまう不条理を、石原は鮮やかに演じた。
石原さとみ、近年、助演の演技が冴えている。
例えば、月9「失恋ショコラティエ」(14年)で演じた魔性のひと妻サエコは、記憶にまだ新しいし、「リッチマン、プアウーマン」(12年)の才媛だけど、おしゃれや恋にも一生懸命なヒロイン真琴は、小保方さんの先取りのようなキャラだった。
彼女によって、主役の、小栗旬も松本潤も、いっそう生き生きと輝いた気がする。
ぷっくり唇の色っぽさと、つるっつるの肌のピュアさ、迷いなく堂々とど真ん中を狙う演技という精神性、この三位一体が最強。
「MONSTERZ」でも、石原の健気で悲しげな演技によって、藤原と山田の悲劇的な出会いと闘いは、臨場感を増したのではないか。
いや、もしかしたら、藤原よりも山田よりも、彼女は強いかもしれない。ほんとに強いのは、藤原? 山田? 石原? ぜひ、映画を見て、判断していただきたい。(木俣冬)