「一対一」キム・ヨンミン“キム・ギドク監督は昔と変わらず現場でいつも動いていた”

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映画「春夏秋冬そして春」(2003)以来11年ぶりだ。22日に公開される映画「一対一」(制作:キム・ギドクフィルム)を通じて久々にキム・ギドク監督と再会した俳優キム・ヨンミン(42)は今回の映画で前代未聞の1人8役でスクリーンを圧倒する。

キム・ヨンミンはキム・ギドク監督の映画「受取人不明」(2001)を通じて大学路(テハンノ)から忠武路(チュンムロ:韓国の映画業界の代名詞)に活動の範囲を広げた。当時としては異例の公開オーディションを通じて1000分の1の競争率を勝ち抜き、傷を抱える少女を守ろうとするジフム役で映画界にデビューした。その後、キム・ギドク監督と2度目の呼吸を合わせた「春夏秋冬そして春」で世界の映画市場に自身の顔を知らせた。

映画「ファイ 悪魔に育てられた少年」「パーフェクトゲーム」、MBCドラマ「ベートーベン・ウィルス〜愛と情熱のシンフォニー〜」など、映画とテレビで演技の実力を鍛えたキム・ヨンミンは、昨年は創作劇「鞘の中の父」で全回全席が完売となる勢いを見せた。ここ11年間キム・ヨンミンのフィルモグラフィーも、キム・ギドク監督の作品世界も深くなった。

彼が11年ぶりにキム・ギドク監督と呼吸を合わせた「一対一」は、殺人容疑者7人と彼らにテロを敢行する影7人の姿を通じて上下関係による人間群像の矛盾を見せる作品だ。彼は「一対一」で1人8役を務め、“キム・ギドクの元祖ペルソナ”という修飾語に応える熱演を披露した。キム・ヨンミンをはじめ、マ・ドンソク、イ・イギョン、チョ・ドンイン、テオ、アン・ジヘ、キム・ジュンギ、チョ・ジェリョンなどが出演した。

「最初の撮影に入る2日前、いきなり1人8役をすることが決まった。シナリオも全部変わり、似て非なる苦痛と罪悪感をどう表現しようかと悩んだ。撮影が終わるまで悩んだ部分である。監督から1人8役を提案された時、『大変だ』と思いながらも俳優としての欲が生じた。それぞれの人物を演じながら僕の中でうごめく感じを信じた。ある意味、1人8役は映画の中で重たいテーマを楽しめる通路にもなれると思った。途方に暮れたが、楽しみながらした」

キム・ギドク監督は「一対一」について「故ノ・ムヒョン元大統領に捧げる告白であり、自白である。誰よりも人間と人間が尊重される水平社会を夢見た方で、最も人間的な大統領だった。あの方の大きな志を実践することができず、個人的な欲であの方を寂しく送った国民としての罪悪感を持って作った映画だ」と説明した。

「監督がマスコミ向け試写会で初めて故ノ・ムヒョン元大統領に言及したじゃないか。正直、僕たちも驚いた(笑) 一方では、自由に話ができない社会の雰囲気を残念に思った。大事なのは、キム・ギドク監督が社会的にも権力的にも自己検閲をしないアーティストだということだ。『一対一』には様々な人間模様が出てくるので観客の皆は自分の姿に置き換えながら楽しめると思う」

以下はキム・ヨンミンとの一問一答である。

―キム・ギドク監督と久しぶりに一緒に仕事をした感想は?

キム・ヨンミン:本当にちょうど10回で撮影を終えた。最後の日はらはらしたけど、本当に終わった。撮影現場ではほとんど監督だけが動いていた。照明や俳優のセッティングをやり直すためはに基本30分かかる。監督が自分でカメラを持って動けば30秒で終わる(笑) 俳優として演技やディテールが残念なところもあるが、監督は整えられていない感じを大事にする。よほどのシーンじゃなければ3テイク以上撮らない。

―キム・ギドク監督と11年ぶりの再会だ。これまで一緒に仕事をしなかった理由があるのか?

キム・ヨンミン:監督の作業スタイルは特定の時期にスケジュールが空いていないと参加することが難しい。監督は「春夏秋冬そして春」以来何度か出演のオファーをしてくれたが、そのたびにスケジュールが合わなかった。ありがたく今回また連絡をくださったので「やらせていただきます!」と答えた。

―キム・ギドク監督について「相変わらずだ」と話したが、どういう意味なのか?

キム・ヨンミン:ハハ。良い意味だ。監督は現場で片時もじっとしない。「受取人不明」のときも現場でいつも動いていた。「僕は映画をしないと体が痛い」と言うほどだった。「春夏秋冬そして春」の撮影の時、ドイツの映画記者が撮影現場に来て驚いていた。「キム監督はどうして監督の椅子には座らず、あんなに歩き回るのか」と。ハハ

―それでも変わったところはあるか?

キム・ヨンミン:はっきりと言うのは難しいけど、映画的にも、哲学的にも明確になっていた。濃度が濃くなったというか。僕が監督を判断する立場ではないげど、表現したいことがより明確になった感じがした。その理由を聞いたら「年を取ったからだ」と言われた(笑)

―すべてのキャラクターが憎いながらも哀れな感じがする。

キム・ヨンミン:そうだ。「一対一」がよかったのは、単なる善悪の問題でアプローチしないというところだった。「一対一」だけが持つ詩的なパワーがある。叙情的にじんとくるところもあるし。映画を見ながら「自分は一体どう生きていけばいいのか」と悩むところもある。心を開いて見れば見るほど多くのものが見える映画だ。

―1人8役であるだけに、セリフも非常に多かった。特に「一対一」はセリフでメッセージを伝える性格が強い。

キム・ヨンミン:監督が現場でセリフを変える日は本当に大変だった(笑) 「受取人不明」に出演した時、チョ・ジェヒョン先輩が「ヨンミン、すべての映画がこんなわけじゃないよ」と慰めてくれた(一同爆笑) 今回の映画ではセリフに対する監督の愛着が強かった。映画的なリズムを考慮すればぎこちないかもしれないセリフだが、監督は最後までこだわった。

―アン・ジヘにデートDVを加えるシーンが映画的に非常に強烈に描かれた。

キム・ヨンミン:ベッドシーンは実は男性俳優も恥ずかしいし、大変なシーンだ。できれば女優に配慮しようと努力するタイプだけど、「一対一」ではリハーサルなしで撮影に入った。セリフを1回合わせただけなのに監督に「さあ、もうやれ!」と言われた。(アン)ジヘとイメージだけで演技をした。

―キム・ギドク監督との作業で感じる喜悦があるか?

キム・ヨンミン:恵まれた撮影環境ではないが、苦痛の末に感じられるカタルシス(解放感)がある。キム・ギドク監督は映画の中で一人の人間を崖っぷちに立たせるじゃないか。その危うい感情を維持し、最後まで行った後に感じる喜びがある。キム・ギドク監督の映画の最大の魅力であり、最大の特徴の一つでもある。

―キャラクターから簡単に抜け出せないタイプなのか?

キム・ヨンミン:以前はそうだった。「ハムレット」に出演した時は本当に憂うつだった。海外では「ハムレット」に出演したせいで自ら命を断つ俳優が何人もいると聞いたけど、その理由が分かった。俳優は演技をする自我とそれを見守る自我が別々じゃなければならない。僕自身もまだ2つの自我を区別する境地までは至っていないが。

―キム・ヨンミンにとってキム・ギドク監督とはどのような意味があるのか?

キム・ヨンミン:僕に映画界を初めて紹介してくれた人。僕を選んでくれたから、僕もいつも監督を応援するしかない。何と表現すればいいのか。兄貴、師匠はあまりにも老けてみえるから“とてもいい先輩”くらいがいいと思う。

―「一対一」はキム・ヨンミンのフィルモグラフィにどのような意味を持つのか?

キム・ヨンミン:やはり1人8役への挑戦が大きいと思う。プレッシャーもあり、難しかったけどやりこなしたという達成感が長く残るような気がする。「一対一」は権力と矛盾を問う映画だ。キム・ギドク監督が長い間胸にしまっていた物語をやっと外に出した。多くの観客に「一対一」を見てその質問に対する答えを見つけてほしい。