消費税が8%にあがり、配偶者控除の見直しが議論されるなど、日本の税制についての話題が続いている。そのとき、たびたび日本の租税負担率は北欧に比べて低い水準だといわれるが、大前研一氏は現実の日本の負担率は過酷といえるほどだと指摘している。

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 日本の税制には年収1000万円以上のサラリーマンの給料が上がらないという特徴がある。年収が多いほど税率が高くなり、「いくら稼いでも手取りはほとんど変わらない」という事態になってしまうのだ。このため、日本の会社は各種の手当や退職金といった給料以外のインセンティブを付けている。だが、これは途上国の税制、途上国の会社のやり方だ。

 たとえばイギリスの場合は、車は会社持ちで、社員が好きな車を購入し、それを経費として給料から差し引く。そのほうが課税対象となる給料額が少なくなるからだ。

 また、アメリカの大企業では、すべて個人の裁量に任されている。つまり、グロスの年俸だけが決まっていて、その中で、たとえば税率の関係で自分はキャッシュよりも運転手付きの車をもらったほうが得だと思ったら、そういうオプションを自由に選ぶことができる。

 日本もそろそろそのような先進国の給与・税制システムに移行すべきだと思う。なぜ、こうした議論が必要なのか? 注目すべきは日本の国民負担率の高さだ。

 財務省によると、2014年度(見通し)の租税負担率(対国民所得比)は24.1%で、北欧のデンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーに比べると非常に低いと説明されている。しかし、それに健康保険や失業保険、介護保険などの社会保障負担率17.5%、消費課税8.2%、個人所得課税7.4%などを加えた国民負担率(同)は41.6%に達する。

 さらに、国の財政赤字は、赤字国債などで借金としていずれ国民が支払わなければならないおカネだから、これも国民負担となる。それを合わせると、給料の実に52%を国に召し上げられている計算になる。平成時代の日本国民は、江戸時代の「五公五民」、農民が収穫の半分を年貢として納め、残りの半分を自分のものにするという租税徴収の割合よりも過酷な負担を強いられているのだ。

 たしかに北欧諸国の国民負担率は60〜70%で日本より高いが、その代わり老後はすべて国が面倒を見てくれるし、医療や教育などもタダである。だから貯金をしなくても安心して生活し、余生を過ごすことができる。一方、日本は年金制度を維持していくことすら危ぶまれている有り様だ。

 日本人は、この現実を直視すべきである。とりわけ仕事と子育て、親の介護などに奔走している30代〜50代の現役世代が、より重い負担を課せられ、少しでも息をつくために奥さんがパートやアルバイトに出ながら年収を103万円以下に抑え、かろうじて配偶者控除を受けて家計を助けているという歪んだ現実は、やはり早急かつ根本的に正さねばならない。

※週刊ポスト2014年6月6日号