一芸に秀でる者は多芸に通ずということわざがあるように、一流のプロスポーツ選手は、決して得意分野ではないことについても思いきって質問すると、達観した境地から実にうんちくのある答えを返してくれる。この、見当違いにみえる質問をあえてする企画『俺に訊くな!』プロゴルファー編で“ウッドの達人”井戸木鴻樹プロ(52)にロングアイアンの打ち方を訊いた。

 昨年の5月、米・ミズーリ州で行なわれたチャンピオンズ・ツアーの「全米プロシニアゴルフ選手権」で、日本から参戦した井戸木鴻樹が優勝した。日本人男子選手初となる海外メジャー初制覇がビッグニュースになるとともに、身長167センチ、体重62キロの小兵プロが繰り出す正確無比なフェアウェーウッドのショットが、世界でも注目された。

 その“ウッドの達人”、井戸木プロにあえてぶつけたのは「ロングアイアンの打ち方」である。

「ロングアイアンの上手な打ち方? 難しいがな。それにしても、答えるのがなんで僕やねん」

 井戸木プロのキャディバッグには、ドライバー、スプーン、バフィーからユーティリティクラブまで、ウッドクラブが束になって並び、ヘッドカバーの花が咲く。アイアンは6番からしか入れていないという井戸木プロは、人呼んで“六本木の男”――6本のウッドクラブを自在に操る名手なのである。

「アマチュアにはロングアイアンは使うな、というのが一番のアドバイスやろね。はっきりいって無理ちゃいまっか。ロングアイアンはボールを上げにくく、ゴロばかり出る。実際きちんと飛ばそうと思うなら、僕みたいにロングアイアンは諦めて“六本木の男”になった方がエエよ」

 ロフトが小さく、シャフトが長いロングアイアンは、ボールを転がして行くぐらいのつもりで打つしかないと井戸木プロはいう。

「上がりにくいボールを上げに行くと、尚更きちんと打てなくなる。ティアップしたボールならまだしも、地べたのボールはとてもとても……。そうそう、フェアウェーウッドでも上げに行ったらアカンのやで」

 とここで、レッスンはにわかにフェアウェーウッドの打ち方にすり替わってしまった。

「ボールを上げに行くと、右肩が下がって上半身のラインが傾き、ソールが滑りやすいウッドであってもダフリ、トップ、プッシュアウトに引っ掛けと、ミスショットのオンパレードになる。かといって、ロングアイアンのように上から潰しに行ってもアカン。今度は左肩が下がってラインが傾いてまう。要は肩を水平に回すことやね」

 他の留意点は、

「ドライバーと同じで、左肩を回しすぎないこと。90度回転するイメージで充分や。それと、フェアウェーウッドの場合は、ドライバーよりボール1個分、ボールの位置を右へ入れることが大事やね。

 ドライバーはアッパーで打つけど、フェアウェーウッドはスイングの最下点で、ダウンブローで打つイメージ。ボールを上げたいと思うことがミスを呼ぶ。そしてボールの位置さえ間違えなければミスは防げる。どや、完璧な答えやろ」

 あのう、質問はロングアイアンの打ち方だったんですけど。

「だから悪いことはいわん、ロングアイアンはやめとき」

※週刊ポスト2014年5月30日号