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●20倍以上の高倍率ズームはもはや必須装備初夏の運動会シーズン真っ盛り。カメラを持って臨んだみなさんの撮影結果はいかがだっただろうか。今回は、一般的に「動体の撮影が不得手」とされるコンデジで、なんと運動会の撮影に挑戦。はたして「PowerShot SX700 HS」」は、運動会でも「使える」のか!?を検証してみた。

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かわいい我が子の運動会を撮るためにカメラが欲しい! 本当は一眼レフがいいんだろうけど、大きいし、たとえ買っても普段は使わなそうでもったいない……。普段も気軽に使えるコンデジで、運動会も撮れれば嬉しいのだけれど。

……と、そんな声をよく聞く。確かに、カメラは高い買い物だ。普段あまり使う気にならないような高価な機種を「でも、運動会のためだから」という理由だけで勧めることはできない。

ところで、運動会で使えるカメラとして必要な条件を考えてみよう。まず第一に、なんといっても光学ズームの倍率。会場の広さや撮影場所の自由度にもよるが、一般的には20倍以上は欲しいところ。保育園や幼稚園の園庭ならともかく、小学校の校庭ともなるとかなり広い。おまけに父兄席は生徒席の外側にあるのが普通で、見学(撮影)場所はきわめて限られる。光学ズームの倍率が高ければ高いほど(望遠側の焦点距離が長いほど)我が子の表情にグッと迫れる可能性は高くなる。

その点、光学30倍のズームレンズを持つPowerShot SX700 HSは十分な性能といえるだろう。それは、同地点から撮影した2点の写真を比べれば明らかだ。

スマホの写真でも運動会であることはわかるが、中央で何をしているかまではわからない。だが、PowerShot SX700 HSの写真では、騎馬戦や玉入れの熱戦の様子まで伝わってくる。手ブレ補正の効きも良好で、描写クオリティとしても満足できる。

次に肝心なのはフォーカス(ピント合わせ)速度だ。この話は詳しく書くと長くなるので割愛するが、採用しているAF方式の特性上、多くのコンデジはフォーカス速度が(一眼に比べて)遅い。これが「コンデジは運動会が不得手」といわれる所以だ。一方、PowerShot SX700 HSのフォーカスは、アルゴリズムやメカ制御の改善により高速化されている。カタログスペックの0.11秒を体感できるかどうかはさておいても、AFの速さは実感できるだろう。

●撮影のメインイベント! 徒競走!!さて、このAFの速さがもっとも問われるのが、運動会撮影のメインイベントともいえる徒競走である。しかも困ったことに撮影ポイントがゴールの正面に位置することが多いため、被写体はカメラに向かって走ってくることになる。これはAFが非常に苦手とする状況だ。

しかし、PowerShot SX700 HSには、AFそのものの速さに加えて、AFフレーム「顔優先AiAF」があり、被写体の顔を検出してピントを合わせてくれる。これを利用することで、徒競走でもしっかりとピントの合った写真を容易に撮影できるのだ。余談だが、流行りの1型や1/1.7型くらいの大型センサーを積んだコンデジは画質面こそ有利ながら、ピント合わせにおいてはPowerShot SX700 HSのような1/2.3型センサーの方が有利であることも覚えておくといいだろう。

また、約8.5枚/秒(最大4枚)の高速連写が可能。ドライブ設定を切り替えなくても、モードダイヤルで「スポーツ」を選ぶと、自動的に連写がオンになる(AFフレームは選べない)。ここぞというシーンで連写を使えば、ゴールの瞬間などのドラマチックな一瞬を手にすることもできる。

競技だけが運動会ではない。応援中や出番を待っているときのふとした表情も、かけがえのないワンシーンだ。こんなときは、被写体の顔を追尾してピントを合わせる方法が便利。操作は、本体側面のフレーミングアシストボタンを押し、コントローラーホイールの露出補正ボタンを押して追尾する顔を選択すればOK。選択された顔がしっかり収まるように、自動でズーミングまで調整してくれる。数人の友達が一緒にフレームに収まりつつ、ピントは我が子!というときなどに効果を発揮する機能だ。

慣れてきたら、流し撮りにも挑戦してみよう。モードダイヤルを「シャッター速度優先」(Tv)にして、シャッター速度を1/200〜1/300くらいに合わせて、被写体をフレーミングしながらシャッターを切る。シャッターを切っている間もカメラは被写体を追うように動かし続けるのがコツ。

小学校も高学年のリレー選手ともなると、コンデジで撮るのは非常に難しい。高速の動体を上手に捕らえるには、やはりファインダー付きの一眼レフの方がはるかにラクだ。とはいえ、PowerShot SX700 HSはレンズ交換も不要、荷物が多くなりがちな運動会でもポケットに入れて持って行ける。当然、一日中使っても疲れ知らず。重い一眼レフとレンズを振り回した結果、翌日は全身筋肉痛で仕事にならない……なんてこともない。

画質や作品性までも追求するなら一眼レフには敵うべくもないが、コンデジにはコンデジの良さも山ほどある。もちろん、すべてのコンデジが「運動会で使える」とはいえず、むしろそのハードルをクリアできるのはほんの一握りの機種だろう。そして、PowerShot SX700 HSがそのうちの稀少な一台であることは間違いない。

(青木淳一)