出だしで覚えたショットへの不信感をぬぐえず10位タイに終わった松山英樹(Photo by Tom PenningtonGetty Images)

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 クラウンプラザ招待の最終日は、米ツアーの層の厚さや熾烈さがそのまま反映されたような優勝争いになった。
3パット3回…松山英樹、グリーン上で苦しみ米ツアー初優勝逃す
 最終日を迎えたとき、首位には松山英樹やデービッド・トムズら4人が並んでいた。が、首位から2打差には17名、3打差には24名がひしめき、その誰もが底力を振り絞りながら勝利を目指し、1打1打に挑んできた。最終組の松山がスタートするころには、すでに首位のスコアが8アンダーへ伸び、松山らと並ぶ7アンダーは7人に増えていた。
 そんな中、1番(パー5)で第3打が好感触だったにも関わらず、実際はピンを10メートルもオーバーしていたことに動揺した松山は、そこからショットもパットも崩し、瞬く間に優勝争いの蚊帳の外へ押し出されてしまった。
 ほんの小さなミス、ほんの小さな心の乱れがきっかけとなり、取り返しのつかない方向へと流れを変えてしまう。上位にいる誰かが少しでも弱みを見せたら、ここぞとばかりに他選手たちが付け込んできて、さっきまで座っていたはずの椅子を奪い取っていく。
 米ツアーという場所自体が「熾烈な椅子取りゲームだ」と、かつて今田竜二が言っていたけれど、今日の優勝争いは、まさにそんな椅子取りゲームの様相で、出だしから揺らいでしまった松山は、初めて実質的に参加した激しい椅子取りゲームの中で、おろおろしているうちに終わってしまった。彼自身、こんな言葉を口にしていた。
 「もっと伸ばさなきゃと思ったけど、上がってみれば(首位との差は)3打しかなかった。その3打が、今の自分と勝つ人との違いだと思う」
 勝った人は、アダム・スコット。今週の始めにキャリア初の世界一に輝いたばかりだが、王座に就いたら就いたで、すぐさま自分に目標を課したところがスコットらしかった。
 「今週は世界ナンバー1プレーヤーとしてプレーする味を満喫したいと思っている。でも、王座に留まる期間を決してショートステイにはしたくない」
 スコットは今大会で13位より上位に入らなければ、世界ランクはすぐさま2位へ陥落する状況にあった。世界一のプレーヤーが絶対に上位に入るぞという強い思いで挑み、もちろん他選手たちも虎視眈々と勝利を狙う。そんな人々がこぞって押し寄せた優勝争いが大混戦になったのは当然の流れだった。
 最終的には、最終日を5アンダー、11位からスタートし、4つ伸ばして首位に並んだスコットとジェイソン・ダフナーのプレーオフになり、3ホールのサドンデスを制したのはスコットだった。
 王座滞在期間を1週間から2週間に延ばしたスコットは、優勝の喜びとともに、こんな言葉を口にした。
 「また1つ新しいことを学んだよ。初日にあんなに出遅れても、巻き返し、ここまで戻って来れることがわかった。これは自分の忍耐力を試し、測られるテストだった。優勝できて、とても満足だよ」
 世界一になっても、通算11勝を挙げても、「また学んだ」と語る謙虚なスコットは、しばらくの間、王座に君臨し続けそうな気がする。プレーオフで敗北したダフナーも「今のアダムを負かすのは、あまりにも難しい」と舌を巻いていた。
 松山は10位に終わってしまったけれど、彼にも学んだことはたくさんあった。「1発のミスをすぐに取り戻せる力は今はない。もっと練習しなければ。もっと精神的に強くならなければ……」
 その謙虚さと向上心があれば、これからはもっと上手に椅子取りゲームで戦える。米ツアーという大きなピラミッドの中で自分の立ち位置がしっかり見えてくれば、自分が座るべき椅子も見え、椅子の奪い方もわかってくる。松山の初優勝は、その先にある。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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