ももクロとコラボする速弾き王・イングヴェイとは【ギタリスト速弾き&遅弾き列伝】
 いまやAKB48と並んで国民的アイドルグループとなったももいろクローバーZ。6月4日にシングル『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」Emperor style』のイングヴェイ・マルムスティーン参加バージョンを配信限定でリリースするとあって話題を呼んでいます。

(ももいろクローバーZ 『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』 以下は2012年リリースのオリジナルバージョン)

⇒【YouTube】猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」MV http://www.youtube.com/watch?v=TIokp4MonxE

 BABYMETALなどの新興勢力の台頭に対して王者が迎え撃ったとも見える今回のコラボ。双方に携わるブレーン同士の戦いもなかなかに興味深いところですが、何はともあれイングヴェイです。ギターの速弾きと言えば、まずこの人の名前が頭に浮かんでくる。

 元来ハードロック、ヘヴィメタル畑のミュージシャンではありますが、もはやジャンルを超越した存在になっているかもしれません。あの山下達郎も自身の番組『サンデーソングブック』でイングヴェイの曲をかけたことがあるほど。パガニーニから強い影響を受けたというクラシカルなフレージングが超高速で展開されるテクのとりこになったかつてのギターキッズも多いのではないでしょうか。

⇒【YouTube】Yngwie Malmsteen-Far Beyond The Sun http://www.youtube.com/watch?v=SoreNec-x30

◆速いうえに強烈にキャラ立ちしたイングヴェイ

 しかしこの“速弾きギタリスト”というお題目となると一家言あるという人がかなりの数いるはず。

 世界最速の呼び声高いクリス・インペリテリ。『To be with you』の大ヒットで知られるバンドMr.Bigのポール・ギルバート(Kinki Kidsとの堂本ブラザーズバンドでもギターを弾いていましたね)、そしてスポーツニュースのハイライトシーンでよくBGMとして使われる『I’m the hell outta here』のスティーヴ・ヴァイなどの存在も忘れがたいものです。

 もちろん彼らのようなハードロック系に限りません。80年代前半にはエリック・クラプトンのバンドにも参加していたカントリースタイルのリックを得意とするアルバート・リー。ジャズ、フュージョンに目を移すと、スウィープピッキングの大家フランク・ギャンバレやマイルス・デイヴィスとの活動があまりにも有名なジョン・マクラフリンに、強く正確なピッキングを驚異的なスピードで披露するアル・ディメオラなど、枚挙にいとまがありません。

 まだまだ漏れている名前がたくさんありそうでお叱りを受けそうですが、それでも“速弾き”と聞いてまずイングヴェイ・マルムスティーンが浮かぶのは、その特徴的すぎる名前と葛城ユキのようなルックスとが相まって強烈にキャラが立っているからなのでしょう。

 この個性に太刀打ちできる日本のギタリストというと、The Alfeeの高見沢俊彦でしょうか。名前とルックスのインパクトは当然のことながら、そのギタープレイも速すぎてフレーズが潰れて聴こえるほどです。

◆速けりゃいいってもんじゃない、遅弾きの名手もいる

 しかしただ速く弾けばいいというものでもありません。ギターは弾くけれども「自分は指が速く動かないからダメなんだ」と思っている人がいたら、それは大きな間違いです。

 ジョージ・ハリスンは親友であるクラプトンの演奏と比較してこう言いました。「僕は一度に(筆者注・一拍のうちに)4つの音しか弾けないんだ」。それでもジョージは数多くの印象的なフレーズを残しています。ましてやそのクラプトンだっていまや一音一音をゆったりと歌わせるスタイルへと転じているのです。速いばかりではダメ。メリハリが大事((c)アダム徳永)ということで“遅弾き”の名手もご紹介しましょう。

 イギリスのバンド、フリートウッドマックのオリジナルメンバーだったピーター・グリーン。若い頃はクラプトンと並ぶブリティッシュブルースギターの名手と称される存在でしたが、ドラッグと精神疾患に悩まされ一時はホームレス生活を送るまでに転落。しかしそこから奇跡的な復活を遂げ、現在ではゆっくりと小さな音でフレーズの行間から味わいを蒸留させていくような演奏を聴かせてくれます。フリートウッドマック時代の名曲『Albatross』は地獄を見てきた現在のピーター・グリーンにこそふさわしい静寂であるような気がします。

⇒【YouTube】Peter Green - Albatross (Splinter Group Acoustic Set) http://www.youtube.com/watch?v=SoreNec-x30

 そして惜しくも昨年7月に亡くなったJJケール。いわゆるレイドバックサウンドの始祖であり、爆音とともに素早いパッセージを連発するスタイルに取りつかれていたクラプトンの音楽観を変えた存在でもあります。そんなケールの代表曲と言えば、やはりクラプトンのカバーバージョンでおなじみの『Cocaine』でしょう。ぶつぶつと独りごちるようなボーカルがそのままギターに乗り移ってしまったかのような演奏。

 アンプのボリュームや各種レベルは相当に絞られているはずなのに、そのフレーズがバンドサウンドに埋没しない。この音処理をクラプトンは「魔法のソースをかける」という表現で絶賛しました。そして譜面に記してしまえばそんなに難しいフレーズではないのに、それをJJケールと同じタイミングで“うたわせる”ことがいかに難しいか。数多くのギタリストが挑んでは跳ね返される壁であり続けることでしょう。

⇒【YouTube】iConcerts - JJ Cale - Cocaine(live) http://www.youtube.com/watch?v=Ee66EV23Do8

 速く正確に弾くことも難しければ、ゆっくりと崩してフレージングすることも難しい。しかしどちらのルートからも名手となれる可能性はある。比較的身近な楽器であるギター。シンプルであるがゆえに懐が広く、演奏する人の個性がはっきりと表れるところが最大の魅力なのかもしれませんね。

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>