次回のシングル曲への参加権を争う「AKB48 37thシングル 選抜総選挙」が始まりました。今や国民的アイドルグループとなったAKB48のファンによる投票によって、次回のシングル曲への参加メンバーが決定する選抜総選挙。前回総選挙の生中継では、瞬間最高視聴率32.7%、平均視聴率20.3%(いずれもビデオリサーチ調べ)という数字を叩き出すなど、もはや国民的関心事となっています。今回は、1期生が続々と卒業してしまった中、次世代のメンバーがどれほど上位に食い込んでくるのかが見所です。

 これほどまで注目を浴びるようになった彼女達にダンスを教え、またプロとしての自覚を育んだ人物こそ、「夏先生」こと夏まゆみさん。アイドルグループの振付師として確固たる地位を築いている夏さんは、モーニング娘。やAKB48の立ち上げから関わり、彼女たちをゼロから指導・育成を行ってきました。今月、刊行された夏さんの著書『ダンスの力』では、"素人の女の子"だった彼女達がプロへと成長していく姿を描いています。

 本書では、元AKB48の「不動のセンター」こと前田敦子さんのあるエピソードを取り上げています。かつてAKB48初期メンバーで、センターポジションを任されてきた彼女ですが、デビュー前のダンスレッスン中はうつむきがちで、夏さんの目の届かないところに姿を隠していたそうです。

 そんな彼女がセンターに抜擢されたのには、このような理由があったとか。

「前田はわたしが全員に出していた課題を、夜中に帰って家でやっていた。この目に見えないところでの努力は、いつか必ず実を結ぶ。のちの前田が、それを実証してくれた」(本書より)

 また、前田さんや、同じく初期メンバーで現在総監督の高橋みなみさんがセンターであることに対してメンバーからの不満の声が上がったこともあったそうですが、夏さんはメンバーにこう喝を入れたそうです。

「いい? みんなは高橋や前田ばかり真ん中でいいなと思っているかもしれないけど、みんなが風邪をひきました、喉が痛くなりました、お腹がいたくなりましたとか言って休んでる時も、前田と高橋は一度も休んでないんだよ」

 さらに夏さんは、前田さんに、センターに立つ者として自覚を持たせるため舞台へ呼び出し、センターから見える景色と舞台の端にある花道から見える景色のどちらが良いかを問い、こう伝えました。

「ここは誰もが立てる場所じゃないんだよ。センターには『舞台の神様』がいて、ここに立つことができるのは、その神様に選ばれた者だけなんだ。ここに立つものが努力をした分の何百倍も輝くことができるけれど、努力をしないと逆にものすごくひどい結果に終わる。ここはそういう特別な場所なんだ」

 これはモーニング娘。の「顔」であった安倍なつみさんや後藤真希さんを育てるためにもかけた言葉だったそうです。

 そして、前田さんが一皮むけるキッカケとなったのは、初めての全国ツアーに向けてのリハーサルに半日ほど遅刻してきた日のことだったと言います。その日、誰も彼女と連絡が取れなくなってしまいリハも欠席。夏さんは前田さん不在のままリハを続けながらも、万が一彼女がその日中に来なかったら「たとえ秋元さん(秋元康氏)と衝突することになっても、全国ツアーのステージに前田は上げない。その結果、自分がクビになってもかまわない」と決心したといいます。


 しかし、彼女は遅れてやってきました。


 切なそうに謝った彼女に、夏さんがかけた言葉は「よく来たな」でした。夏さんのアメとムチに30分程泣きじゃくった彼女は、辛くても戻るべき場所に戻りました。AKB時代から注目されるが故に批判されることも少なくなかった前田敦子さんですが、彼女なりの苦悩を夏さんもよく理解し、今の強い彼女へと成長させたのです。

 知られざる国民的アイドルの苦悩、努力、そして成長の軌跡が刻まれた本書。ファンでなくても読んでおきたい一冊です。



『ダンスの力: モーニング娘。AKB48…愛する教え子たちの成長物語』
 著者:夏 まゆみ
 出版社:学研パブリッシング
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