久しぶりに興奮した熱戦だった。18日に東京体育館で行なわれた車椅子バスケットボールの日本一を決める「内閣総理大臣杯争奪 第42回日本車椅子バスケットボール選手権大会」の決勝。史上初の大会6連覇をかけて挑んだ宮城MAXと、若手が台頭する名門・千葉ホークスが勝ち上がり、激しい攻防戦を繰り広げた。

 試合は、序盤から国内随一の高さを誇る千葉ホークスが、当たりの激しいディフェンスで宮城にプレッシャーをかける。リバウンドも強い千葉を前に、宮城はなかなかシュートを決められない。

 千葉は攻撃でも、日本代表の土子大輔が果敢にシュートを放ち、前半終了時点で23−26とリード。第3クォーターの終盤、宮城の敗色がにじみはじめた矢先だった。決勝でシュートの決定率が低迷していた自らを奮い立たせるかのように、宮城の大黒柱・藤本怜央がインサイドに切り込み、ファールを受けながらもゴールにねじ込んだのだ。これで宮城が逆転。

 その後、どちらも譲らぬ一進一退の攻防が続いたが、最後はディフェンスでリズムを掴んだ宮城が試合巧者ぶりを発揮。52−49で千葉を振り切り、史上初の6連覇を飾った。

 試合終了のブザーが鳴ると、優勝の行方を固唾(かたず)を飲んで見守った観客や関係者は、大きな拍手で両者をたたえた。前回大会には出場さえできなかった名門・千葉の見事な復活劇、そして不屈のメンタルとチームプレーで、その勢いを跳ね返し、王者の意地とプライドを見せつけた宮城を賞賛したかったのだろう。

 そんな中、今大会4試合に出場して150得点を挙げ、宮城の偉業達成に貢献した藤本は、センターコートで安堵の表情を浮かべていた。

 東日本大震災で大会が中止になった翌2012年の優勝、そして大会の歴史を塗り替えた前回大会の5連覇で流した涙は、今回出なかった。決勝では終盤こそ堂々たるプレーで、試合の流れを引き寄せるシュートを放ったものの、試合を通してその確率が思うように上がらなかったからだ。

「決勝までの3試合はいいパフォーマンスができていたけれど、メンタルもフィジカルも一番大事なところで欠落していたということ。うれしさよりも課題が先に頭に浮かんで素直に喜べなかった」

 エースの自覚から、口をついて出たのは反省の言葉だった。

「僕はエースなのだから、プレッシャーが強くても、もっとショットを決めなければならない。千葉ホークスのような体格のいい選手を相手にしても通用する、シュートのバリエーションが少ないことも露呈したし、そういう高さに序盤から対応できる免疫を養う課題も感じられた。こういう感覚になれたのは、かなり久しぶり。苦しい競り合いができたことが収穫になった。日本代表として海外と戦う時、激しいプレッシャーは当たり前になる。そういった意味で、今回の日本選手権は質の高い大会になりました」

 今大会活躍した藤本は、自身2度目のMVP、9回連続となる10度目の得点王に輝いた。

 7月には、2016年リオデジャネイロパラリンピックのアジア・オセアニアゾーン出場枠をかけた世界選手権が韓国で開催される。藤本も、その日本代表のひとりだ。男子日本代表は、7位以上を目標に掲げ、強豪やライバルが集う同地区の出場枠拡大を狙う。

 4年前の世界選手権(イギリス)の「得点王」である藤本。押しも押されもせぬ日本を代表する選手なのだ。

 日本代表を背負っていく覚悟を決めたのは、2012年のロンドンパラリンピックで9位に終わったことがきっかけだった。

 昨年夏、ロンドン後の新体制として、及川晋平ヘッドコーチが指揮する新生ジャパンが発足。ふたりは、話し合いの場を持った。

「日本が世界の中でもうひとつ上を目指すために、『自分がチームを強くするんだ』という責任を誰かが担わなければいけない。中核の選手が引っ張るのがチームのあり方だと思う」と、及川コーチ。それに対して、「10年間、日本代表として戦ってきて、エースはどうあるべきか考えてきた」と言う藤本は、かくして、リオを目指すチームのキャプテンを担うことになった。

「世界選手権は、キャプテンという立場でプレーする初めての大会。(強化合宿を重ね)いい調子で来ているので、すごく楽しみ」

 さらに藤本は、この春から、競技に専念できる環境を求めて、原則出勤なしの「障害者アスリート雇用」を利用して転職。バスケットボールのことのみを頭に描きながら日々のトレーニングに励み、そのモチベーションを高めている。

 現在、30歳。円熟期を迎える2年後のリオだけでなく、6年後の東京も見据える。

「チームの誰一人として、(戦術が)わからないとか脱落するとかいうことがないように、若手も支えられるようなキャプテンになっていきたい」

 真のエースを目指す藤本は、アグレッシブに戦う過去最強の日本代表を作り上げ、チームを牽引していくつもりだ。

瀬長あすか●取材・文 text by Senaga Asuka