映画評論家、コラムニストとして様々な媒体で活躍中の町山智浩氏。その町山氏が週刊文春で連載中の人気コラム「言霊USA」をまとめた『知ってても偉くないUSA語録』が先月、刊行されました。2012年に出版された『教科書に載ってないUSA語録』に続く、人気シリーズ第2弾となります。

 現在、カルフォルニア州バークレーに住んでいる町山氏が伝えるのは、今のアメリカで注目されている言葉の数々。紹介されていく74個にも渡るキーワードとなる言葉には、日本にいては聞き慣れないものも多々あります。

 例えば、「Affluenza(アフルエンザ=消費病または金持ち病)」。アフルエンス(富裕)とインフルエンザを掛け合わせたこの言葉。ある種、病的な症状を表す言葉ですが、その症状とは、次のようなものを指すようです。

「特に買いたい物がないのに、毎日のようにショッピングセンターに行く」
「買い物をすると幸福感がわき上がるが、その後すぐに不安に襲われる」
「家の中がものであふれ収納場所がないのに、要らないものばかりを買う」
「職場の同僚やテレビに出てくる人たちと比べて、自分の財産に劣等感を抱く」
「今使っているものを使い古す前に、すぐ新製品に買い換えてしまう」
「毎週のショッピング時間の方が、家族と一緒に過ごす時間より多い」
「豊かな生活を維持するために無理な残業や休日出勤をする」

 「金持ち病」という言葉通りの症状の数々。別に金持ちが無駄遣いをしようが、時間を無駄にしようが、あまり同情する気持ちもわきませんが、この問題が根深く、そして看過できないのは、アフルエンザが、法の場でも通用してしまったというところにあります。

 昨年6月のこと。裕福な家で育った16歳の無免許の少年が、酒酔い運転で4人を轢き殺すという凄惨な事件がありました。その後の裁判で、検察側が少年に懲役20年を求刑したのに対し、弁護側は、「少年は人に迷惑をかけたら、謝るのではなく、金で解決しろと親に言われて育ちました」、「少年はアフルエンザの被害者」と訴えて、結局10年間の保護観察という甘い判決が下されたのです。さらに、少年にはカリフォルニア州の「ニューポート・アカデミー」への2年間の入院も命ぜられましたが、この施設は1年間の入所費用が45万ドル(約4500万円)以上という、大金持ちのバカ息子のための麻薬中毒などの矯正施設。毎日、食べるものは一流シェフのオーガニック料理で、日中は瞑想や乗馬、格闘技のレッスン......ではなく訓練を受けられると言われております。飲酒無免許運転で4人の尊い命を奪っておきながら「アフルエンザ」を盾に、こんな甘い判決が下ったのです。全米中がこの判決、そして「アフルエンザ」というキーワードに怒りを覚えたというのは言うまでもありません。

 この他にも、本書では、テレビドラマからコメディ、映画に音楽、選挙、銃......と様々な分野からキーワードが取りあげられていきます。本書を読んでいると、ひとつの言葉が生まれて流行る背後には、アメリカ合衆国という国が抱えている歴史や政治、産業や人種、宗教等の、根深く複雑な問題が存在していることがわかってきます。
 
 町山氏が実際に現地で暮らし、文化の中に身を置いているからこそ見えてきたアメリカの姿。何故その言葉が人びとの間で話題となり受けるのか、74個の最新の言葉を理解することで、現在のアメリカ像が浮び上がってくる一冊となっています。



『知ってても偉くないUSA語録』
 著者:町山 智浩
 出版社:文藝春秋
 >>元の記事を見る



■ 関連記事
日本人の1世帯あたりの平均貯蓄残高が1739万円とか、ホントですか?
ベテラン文芸編集者が小説家志望者相手に"ガチ"で語った本質論
本とラーメン、実は似ている?


■配信元
WEB本の雑誌