【2014年カンファレンス・ファイナル展望】

 イースタンはインディアナ・ペイサーズとマイアミ・ヒート、ウェスタンはサンアントニオ・スパーズとオクラホマシティ・サンダーが勝ち上がり、両カンファレンスともに第1、2シードの対戦となった今年のカンファレンス・ファイナル。一見、順当――。しかし、その勝ち上がり方は様々だ。

 イースタン第1シードのペイサーズは1回戦、第8シードのアトランタ・ホークスとの初戦をいきなり落とした。エースのポール・ジョージは、「苛立たしい。ただ、シリーズは長い。まだ第1戦が終わったばかりだ」と気丈にコメント。しかし、レギュラーシーズン終盤から続くチームの不調は簡単には修正できず、なかなかチームのエンジンはかからない。シリーズ2勝3敗と先にホークスに王手をかけられるも、崖っぷちからの2連勝でカンファレンス・セミファイナルに駒を進めた。

 カンファレンス・セミファイナルの相手は、第5シードながら、第4シードのシカゴ・ブルズを撃破したワシントン・ウィザーズ。ウィザーズは勝ち上がりを予想していなかったのか、本拠地ベライゾン・センターがシリーズ第6戦の会場として予定されている日に、レディー・ガガのコンサートをダブルブッキングしてしまうという失態を露呈する始末。しかしペイサーズは、そんなウィザーズとのシリーズを再び黒星でスタートさせる。不甲斐ない第1シードの戦いぶりに、インディアナのファンとマスコミからはフランク・ボーゲルHCの進退が囁(ささや)かれ出した。

 そして、最も非難の矢面に立ったのが、オールスターセンターながら、初戦を0得点0リバウンドで終わったロイ・ヒバートだった。だが、そんなヒバートは第2戦で28得点(フィールドゴール成功率76.9%)、9リバウンドと覚醒。ヒバートは第1戦終了後、デビッド・ウェストからこんな助言があったことを明かしている。

「海の真ん中から自力で脱出できるような人間になれ。救命ボートやロープを投げて助けてくれる人はいない」

 ヒバートの復活と同時に、チームもようやく目覚めた。続く第3戦では、自慢のディフェンス力が際立ち、85対63と圧勝。ポール・ジョージは、「これが俺たちのスタイルだ!」と胸を張った。その後、ペイサーズは第5戦こそ落としたものの、4勝2敗でカンファレンス・ファイナルに進んだ。

 一方、イースタン第2シードのヒートは、1回戦のシャーロット・ボブキャッツをスイープ(4勝0敗)、ブルックリン・ネッツとのカンファレンス・セミファイナルも、わずかひとつ星を落としただけで、カンファレンス・ファイナルに進出。

 もちろん、どの試合も危なげなく勝ち切ったわけではない。しかし、ヒートにはレブロン・ジェームズがいた。レギュラーシーズンでは平均27.1得点だったが、プレイオフではさらに成績を上昇させ、9試合の平均は30.0得点。リバウンド7.1本、アシスト4.7本、スティール1.6も、チーム1位という大車輪の活躍を見せた。しかも、プレイオフに入ってからのフィールドゴール・パーセンテージは56.4%。どのチームもレブロン対策を練る中、2本に1本以上の確率でショットを沈めている。まさに、アンストッパブルな活躍だ。中でも圧巻だったのが、ネッツとの第4戦。プレイオフ・キャリアハイタイとなる49得点、6リバウンド、3スティールを記録してチームを牽引した。ヒートが4年連続のカンファレンス・ファイナル出場を決めた直後も、「次も決して簡単な戦いにはならない。それはいつだって一緒だ」と、2年連続ファイナルMVP受賞中の男は、一切のおごりを見せていない。

 ペイサーズ対ヒートは、奇しくも1年前と同じ顔合わせ。昨年、第7戦までもつれ込んだように、両チームの力は五分と言っていいだろう。尻上がりに調子を上げるペイサーズが昨年のリベンジを果たすのか、それとも再びヒートがペイサーズを退けてNBAファイナルに進み、スリーピート(3連覇)の権利を手にすることになるのか......。勝敗を分けるのは、ペイサーズのディフェンス力と、レブロンのオフェンス力、どちらが上回るかだ。ペイサーズはプレイオフ13試合中、失点を100点以下に抑えた試合が10試合ある。その勝率は90%。ペイサーズのデビッド・ウェストは言う。

「俺たちはテレビ栄えなど気にしない。他のチームは、(大量得点する)幻想的なバスケットボールで観客の空虚さを埋める。だが、そんなことを俺たちは気にかけない。俺たちは80点台でゲームに勝つことができる」

 ペイサーズは、時にディフェンシブで退屈だと言われようとも、そのスタイルを曲げるつもりは一切ない。

 対するウェスタン。まずスパーズは、ベンチ層の厚さとチームの完成度で、堂々の3年連続カンファレンス・ファイナル進出を決めた。1回戦のダラス・マーベリックス戦こそ第7戦までもつれ込んだものの、続くカンファレンス・セミファイナルでは、1段ギアを上げてポートランド・トレイルブレイザーズを4勝1敗で一蹴。

 トレイルブレイザーズに唯一敗れた第4戦では、逆転が難しいと判断すると、わずかな可能性にかけて故障者を出すほうが損だとばかりに、ティム・ダンカン、トニー・パーカーといった主力をベンチに下げる余裕すら見せた。続く第5戦では、パーカーが左ハムストリングの負傷で前半に離脱。しかしパーカー離脱後も、ダニー・グリーンとクワイ・レナードがそれぞれ22得点、パトリック・ミルズが18得点と活躍を見せ、パーカー抜きの不安よりも、その層の厚さを際立たせた。さらにパーカーのケガは検査の結果、軽度ものであり、今後の出場に影響はない見込み。各チーム、故障者は増え、疲労も蓄積されていく中、スパーズの層の厚さは、どのチームにもない武器だ。

 一方、生き残った4チームの中で、最も劇的な勝ち上がりを見せたのはサンダーだろう。

 メンフィス・グリズリーズとの1回戦では、プレイオフ初となる4戦連続のオーバータイムを含め、第7戦までもつれ込んだ。勝敗を分けたのは、グリズリーズのインサイドの要、ザック・ランドルフの「シュート」ではなく、「パンチ」。第6戦、ランドルフはスティーブン・アダムスの顎(あご)にパンチを放ち、第7戦は出場停止。ランドルフ抜きのグリズリーズに、サンダーを倒す力はなかった。ニュージーランド出身のルーキー、アダムスは今シーズンだけで、ビンス・カーター(ダラス・マーベリックス)、ジョーダン・ハミルトン(ヒューストン・ロケッツ)、ラリー・サンダース(ミルウォーキー・バックス)、ネイト・ロビンソン(デンバー・ナゲッツ)、そしてランドルフの5選手を退場、罰金処分、もしくは出場停止処分に追い込んでいる。アダムスの身体を張った執拗なまでのタイトなディフェンスは、対戦相手を苛立たせるのに十分だ。

 サンダーのカンファレンス・セミファイナルの対戦相手は、ロサンゼルス・クリッパーズ。オーナーのドナルド・スターリングの人種差別発言でチームに激震が走りながらも、地力で勝ち上がってきた強豪だ。第1戦は、クリス・ポールが自己最多となる3ポイントシュート8本を含む 32得点を挙げ、クリッパーズが122対105と圧勝。サンダーは両エース、ケビン・デュラントとラッセル・ウェストブルックが奮起するも、1回戦のグリズリーズ戦に引き続き、チーム自体はリズムに乗れない。

 その流れを変えたのが、コート外の出来事だった。ケビン・デュラントが2013ー14シーズンのMVPに選出され、その受賞セレモニーで25分間に及ぶ感動的なスピーチを披露。デュラントがチームメイト、チームスタッフひとりひとりの名を挙げて感謝の言葉を述べると、涙をこらえきれないチームメイトが多数いた。また、デュラントは貧しかった幼少期、「自分が食べられなくても、僕ら兄弟が食事を取ったかを気にしていた。お腹を空かしたままで寝ていたのはママだよ。自分を犠牲にして、僕たちを育ててくれた」と、シングルマザーで育ててくれた母を讃え、「ママ、あなたこそ真のMVPだ」と涙ながらに語った。さらに、時にシュートを乱発することで非難を浴びるウェストブルックに対し、「周りはアンフェアな批判ばかりするけれど、何か言われたら俺が真っ先にかばってやるから」と語った。そして、最後に、「この栄誉は家族全員、サンダー、そしてオクラホマ州全体で受賞したものだ」と締めくくる。

 そんなエースの言葉に、チームメイトが、そしてファンが燃えないはずはなかった。大歓声に包まれたホームの第2試合、ウェストブルックが31得点10リバウンド 10アシストのトリプルダブルの活躍で対戦成績を 1対1のタイに戻す。さらに、再びホームの第5戦では、残り49秒で7点のビハインドをひっくり返すというミラクルな展開で勝利をたぐり寄せた。このシリーズは、いくつか物議をかもす判定があったものの、レフェリーの笛すらも味方につけたような勢いでサンダーはシリーズを4勝2敗で制し、カンファレンス・ファイナルに駒を進めた。

 チームの完成度と層の厚さならスパーズに、勢いならばサンダーに分があるだろう。

 意地と意地がぶつかるカンファレンス・ファイナル、生き残った4チームに与えられるファイナルへの切符は、2枚のみ......。カンファレンス王者に輝き、最終決戦の舞台に立つのは、どの2チームだ?

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro