アメリカの雄大な大地を旅している気分に
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失恋直後は、“いつもの日常”にじっとしているのはつらいもの。気分転換に、気持ちの切り替えに、多く選ばれるのが「旅」ですよね。皆さんは失恋をキッカケに旅に出たことがありますか? 

男の2人旅、行き当たりばったりが最高!


ひとり旅もいいけれど、失恋後はこんな「同性2人旅」が最高かも! 近日公開の『サケボム』は、そんな気持ちにさせてくれる映画です。濱田岳演じる田舎の青年ナオトが、8カ月前に短い恋愛関係にあったものの、その後音信不通になってしまった英語教師オリビアをアメリカに探しに行くところから物語は始まります。そしてアジア系アメリカ人であるいとこのセバスチャンは、叔父の命令で、しぶしぶこのナオトの旅に同行することに。実はセバスチャンも彼女に愛想を尽かされ、家を追い出されたばかりでした。

道中はとにかく“行き当たりばったり”。SNSでストーカーして元カノの参加するパーティに乗り込んで酔いつぶれたり、そこで知り合ったゲイの友人にアニメ好きのコスプレパーティに連れていかれたり、風変わりな女の子もノリで旅に参加してきたり……など、若者らしい、気ままな2人旅ぶりが最高! ひねくれ者で弁の立つセバスチャンは行く先々でトラブルを巻き起こしますが、それでも何とか正直で穏やかなナオトに助けられ、凸凹コンビは目的地までたどり着くのです。

2人旅でけんかしちゃたら、どうする?


しかし、旅とは時に残酷なもの。普段とは違う環境で、他人と始終一緒にいることであらわになってくる、心の底の鬱屈(うっくつ)した思いやコンプレックス。特にセバスチャンはマイノリティとして生きる苛立ちや、今の若者の価値観に納得がいかない状態。「人種」にこだわりすぎて、相手を選んでは平気でうそをついたり、悪態をついたり、自ら周りに嫌われるような自爆行動ばかり。ナオトも徐々に愛想を尽かし始めます。

どんなに仲の良い友達との2人旅でも、疲れやトラブルをきっかけに、道中でけんかになってしまうことはありますよね。言い争いになり、別行動を取ってしまう日も。著者も何度か経験があります。それでも旅の“連れ”はお互いしかいない。ご飯を食べているうちに仲直りしたり、ひとりの寂しさを感じて自然に歩み寄ったり……。映画の2人も「心の痛みを乗り越える時間」をともにしてきたお互いのかけがえのなさに、改めて気づいていきます。そして、見守ってきた観客も一緒に笑顔になってしまうような、ちょっぴり苦くて、でもじんわりと温かい、“明日”の見えるラストシーンを迎えます。

ネットを使いこなし、これぞ現代の若者の青春ロードムービー!といった雰囲気の映画ながら、社会構造や人種について考えさせられる場面もちらほら。セバスチャンは皮肉ばかり言っていますが、よく聞けば、かなり的を射た発言も。印象的だったのが、「今は宇宙飛行士になるよりもネットで有名人になりたい、みたいな若者ばかり! 昔はアメリカでももっと偉大な功績を残すアジア人が多かったのに!」という言葉。大国でマイノリティとして生きるつらさ、アジア人の誇りを固持したい気持ちが強く伝わってきました。

日本酒とビール、混ぜて飲んでみたい!


ちなみに、映画タイトルの『サケボム(SAKE-BOMB)』とは、おちょこに入れた日本酒を箸に挟んでビールの上に置き、机をたたいてビールのなかに「ボトン!」と落として飲むパーティ・カクテルのこと。日本食ブームのアメリカで、今最も“盛り上がる飲み方”なのだそう。簡単なので、日本でも仲間内で試してみると楽しそうです!

日本酒とビールが混ざる=アジアとアメリカの融合、という意味を込めてこのタイトルを付けたのは、単身渡米して現地で活躍する日本人監督、サキノジュンヤ氏。岩井俊二監督などからも評価を受ける若手監督の逆上陸デビュー作です。ほぼ全編で英語のせりふに臨んだ俳優・濱田岳の存在感にも大注目! ゴールデンウイークに旅に行かなかったという人も、これを見ればアメリカの広大な道をのんびりドライブしたような気分になれるかも。旅好きな人におすすめの映画『サケボム』は、5月24日より全国順次ロードショーです。(外山ゆひら)