第18回文学フリマでのエキレビライターの“収穫”
左から『CROW'S』『別腹』『誠壱のタモリ論2』『関西ソーカル』

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2014年5月5日、東京流通センターにて「第18回文学フリマ」が開催された。当日は朝から小雨がちらつく天気だったものの、会場には一日中客足が絶えなかった。私の見たところ、大学生など若い参加者がいつにも増して多かったような気がする。

さて、エキレビでは文学フリマ開催のたびに、各ライターが会場で入手したなかから一推しの本を紹介している。ただ今回は、コミティアと日にちが重なったこともあってか、ライター陣がそろわず、残念ながらこの企画に参加するのは私も含めて2人だけとなってしまった。それでも、紹介する本はいずれも自信をもっておすすめするものばかり。今回の文フリには行けなかった人も、ぜひ次回行かれる際の参考にしていただければ幸いです(以下、紹介文にはそれぞれ冒頭に本のタイトルと、カッコ内に販売していたサークルの名前を示した)。

■『CROW'S(クロース)vol.1』(カラス友の会)
美女とカラスの表紙に目を奪われて手に取ったカラス愛好マガジン。表紙の美女は福山理子さん……って、初代ミニスカポリスじゃんか! 彼女がカラス(本物)と戯れる巻頭カラーなどありつつ、カラスの飼育日記やエッセイなどカラスにまつわる記事が続く。なかでも目を引くのは、蓼科高原までカラス料理を食べに行くレポートだ。表紙に「創刊号」とあるので、今後も刊行され続けるよう応援したいな。あとカラス食べたい。
(推薦者:とみさわ昭仁)

私も、この本をおすすめしたかったのだけれども、とみさわさんとかぶってしまった。自分の場合、会場で持って歩いている人をたまたま見かけて、「あの本はいったい何だ!?」と気になり(だって、美女がカラスを腕に乗せてる表紙なんて、どうしたって気になるじゃありませんか)、即座にブースへ買いに走ったのだった。『CROW'S』の企画ではほかに、芸人・野良武士さんのカラスの飼育日記というのもあって、続きが非常に気になるので、私からもぜひ、次号以降の刊行を期待しております!

■『別腹 VOL.7』(西荻パラソル日和)
『CROW'S』でカラス料理がとりあげられていたのもそうだが、文学フリマで売られている本にはなぜか食べ物に関するものが目立つ。「すきま文芸誌」と銘打った『別腹』の最新第7号でも「食」の特集が組まれていた(発行・編集人は歌人のイイダアリコさん)。
そこではたとえば、“素浪人歌人”の佐藤りえさんの「食と短歌の考現学」と題するアンソロジーが収録されている。これは食にまつわる短歌をあれこれとりあげ、佐藤さんのコメントを付けたもの。それがいちいち面白いのだが、前衛短歌で知られる塚本邦雄の《故郷は百年前に滅びき名物の「うつしよ」と呼ぶ干菓子が殘り》という一首など、その背景にある物語を想像せずにはいられない。
あるいは歌人の佐藤弓生さんのエッセイ「すっぱいパンや焼けこげたパンの話」では、『アルプスの少女ハイジ』に出てくる「黒いパンと白いパン」をとりあげている。《その十九世紀の物語世界において黒パンと白パンは、貧富の差のシンボルでした》という一文からは、昔の日本でも麦などの入った雑穀飯と白飯が貧富の差を象徴していたことを思い出した。ビタミンの含有量でいえば白パンより黒パンのほうが多いというのも、麦飯と白飯の関係と重なる。
このほかにも『別腹 VOL.7』には、文学作品をはじめフィクションのなかの食べ物が続々と登場する。読んでいるとたいていは食欲をかき立てられるのだが、そのなかにあってブルボン小林さんが「アニメに出てくるおいしそうでない食べ物」をとりあげているのが、何ともひねくれていておかしい。あと本書で気になったのは、「ムッシュBBの虹食事典」というコーナーの「パイナップルラーメン」の項に出てきた、《西荻窪のラーメン店『パパパパパイン』》なる記述。そんなふざけた名前の店、あるわけないだろ! と思ったら、パイナップルラーメンともども実在するらしい。ほほほほほんとですか!?

■『誠壱のタモリ論2 ナイアガラ代理戦争のまき』(世田谷ボロ市)
『別腹』に収載された高原英理さんの小説「林檎料理」には、作中人物たちが『タモリ倶楽部』の怪談特集を話題にのぼらせる場面があり、タモリ文献を蒐集している私としては見逃せない。
さらにタモリ文献といえばこの人、石川誠壱さんは昨秋の文フリの『誠壱のタモリ論』に続き、『誠壱のタモリ論2 ナイアガラ代理戦争のまき』という本を発行していたので迷わず購入した(『1』のほうも、昨年末のコミックマーケットで早くも増補改訂版を出したというので、それもあわせて)。ナイアガラこと大瀧詠一といえば、かつてタモリと組んで制作を進めていたものの結局完成にはいたらなかった“幻のレコードアルバム”が存在する。石川さんはそのアルバムについて、生前の大瀧氏にメールで問い合わせたことがあるそうなのだが、さて、その結果は……。

■『関西ソーカル 2』(関西ソーカル商会)
関西在住のライターなどが寄稿する地域研究同人誌。表紙に掲げられた「具体美術協会」や「阪神パーク」という単語につられて手に取った。いずれのテーマも、会社員・ラッパーのオノマトペ大臣さんの論考でとりあげられている。遊園地と住宅展示場という異質なものが組み合わされたいまはなき阪神パークを、かつてその園内で飼われていた牝ライオンと牡ヒョウの子供「レオポン」になぞらえるという内容には膝を打った。
このほか、同世代でいずれも関西出身である村上春樹と連合赤軍リーダーの森恒夫がそれぞれたどった道を、関西弁を捨てたか否かという視点で論じた中尾賢司さんの「関西弁という思考―森恒夫と村上春樹」や、ニューアカデミズム全盛期に流行った専門用語やモデルを駆使して、“お好み焼き〜モダン焼き〜焼きそば〜そば飯”という食の変遷を解説した、神野龍一さんの「ポストモダン焼きとしてのそば飯 〜鉄板の上の哲学史〜」も面白い。文フリには評論系のサークルも多数出店しているが、こういう特定の地域を研究対象とした本も、関西にかぎらずほかにもあったら面白そうである。
……と、ここまで書いて、この本にもまた食べ物がとりあげられていることに気づいた。
(以上3冊の推薦者:近藤正高)

なお、今回の文学フリマの会場では、インターネットイニシアティブ(IIJ)のご厚意により無線LANサービスが提供された。私もありがたく使わせてもらったのだが、このサービスが実現したのは、開会時の担当の方のあいさつによれば、以前、IIJの社員が文学フリマに出店していたことがそもそものきっかけだったという。何と、思わぬところから縁がつながってくるものである。

文学フリマはこのあと、2014年9月14日(日)に「第2回文学フリマ大阪」が堺市産業振興センターで、11月24日(月・振替休日)には「第19回文学フリマ」が今回と同じく東京流通センターでそれぞれ開催を予定している。次回以降も、面白い本の出会いを楽しみにしたい。