チュニジア、エジプト、リビアと革命が続く中東。今でも毎日のように、テロや紛争のニュース が絶えません。なぜ中東では革命や政変がこんなに起こるのでしょうか。今回のテーマは「中東」の文化について。中東研究家の尚子先生がわかりやすく説明します。

「そうです!」と言いたいところですが、なかなか言い切れない難しい質問ですね。「中東はイスラム文化圏の重要な一部を占めています」となら言えそうです。

 そもそも「文化」というのが難問です。この質問を「日本は仏教文化圏ですか?」に置き換えてみると、「難しい」理由がわかると思います。日本は確かに仏教文化圏にあるけれど、儒教文化の影響もあるし、あれ? 文化というなら武家文化という日本固有の文化もあるし……。質問を置き換えると、日本文化と考えられているものが、時代によって異なっていたり、様々な文化の融合であったりすることがわかります。ですから、イスラム文化も当然、同じことが大前提となります。

 さらに、文化というと範囲が美術や文学から、建築までとかなり多岐にわたるため、本編では、私たち日本人にも比較的なじみがあると思われる、1)イスラム以前の遺跡:文化の重層性、2)イスラム美術:揺らぎのない中心軸、3)イスラム建築:土着文化との融合、の順に説明したいと思います。

1)イスラム以前の遺跡:文化の重層性

 中東を旅行された方、どちらを観光されましたか?

 ドバイなどの湾岸の近代建築や砂漠ツアーを除くと、たとえばエジプトを旅行された方ならピラミッドやスフィンクスを、トルコやヨルダンなど地中海沿岸部なら、点在するローマ遺跡などをご覧になったのでは? こうした遺跡をまったく見学していないという方は、いらっしゃらないはずです。

 この地域は「文明の十字路」と呼ばれているぐらいですから、こうした遺跡が数えきれないほどあります。これらのいわゆる中東の観光名所は、イスラム文化でしょうか? 実は、こうしたエジプトの遺跡やローマ遺跡などは、基本的にイスラム文化とは無関係です。なぜなら、イスラム教は7世紀にアラビア半島のメッカで発生した宗教ですから、7世紀以前の建築物についてはイスラムとは無縁です。

 日本や欧米など、イスラム圏外からやってくる観光客にとって、お目あてがイスラム以前の遺跡というのは、少し皮肉な感じもしますね。けれども、こうした「観光業」がエジプトやモロッコなどの非産油国にとって、貴重かつ重要な外貨獲得産業となっていることは、まぎれもない事実です。

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