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東京医科歯科大学(TMDU)は4月28日、富山大学との共同研究により、知的障害の発症に「polyglutamine-tract binding protein1(PQBP1)」遺伝子の変異が関与することに着目し、PQBP1タンパク質の機能障害が生じる原因を解明したと発表した。

成果は、TMDU 難治疾患研究所および同・脳統合機能研究センターの岡澤均 教授、富山大大学院・医学薬学研究部(薬学)の水口峰之 教授らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間4月30日付けで英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

近年の大規模な遺伝子解析によって知的障害の原因遺伝子が多数発見されているが、その中でPQBP1遺伝子は、最も頻度の高い原因遺伝子の1つであると考えられている。ただし、PQBP1遺伝子の変異がなぜ知的障害の原因となるのかそのものについてはまだわかっていなかった。

まず研究チームは、PQBP1タンパク質の立体構造をX線結晶構造解析によって決定(画像1)。その結果、PQBP1の「YxxPxxVL配列(YxxPxxVLモチーフ)」が、PQBP1と「U5-15kD」タンパク質の結合に必須であることを解明したのである(画像2)。つまり、YxxPxxVLモチーフが失われるとPQBP1がRNAスプライシング因子であるU5-15kDに結合できない、つまりPQBP1が正常に機能しないことが示されたというわけだ。

さらに研究チームは、YxxPxxVLモチーフが知的障害の原因となるPQBP1変異体では欠損していることを発見。従って、PQBP1遺伝子の変異によって生じる知的障害は、YxxPxxVLモチーフが欠損することでPQBP1がRNAスプライシングにおいて正常に機能しないことが原因と考えられるとしている。

RNAスプライシングは脳神経機能分子を含むさまざまな遺伝子の発現に重要な役割を果たすことが知られており、今後の研究進展により、知的障害の分子メカニズム理解と治療開発につながることが期待されるとした。