昨年12月、イ・ボミを応援する日本のファンクラブが主催する『イ・ボミプロを囲む会』が千葉県内のホテルで行なわれた。その際、壇上に上がって挨拶をしたイ・ボミは、最後にこう言って締めくくった。

「来シーズンは、賞金女王を目指します!」

 2010年に韓国女子ツアーで3勝し、賞金女王に輝いたイ・ボミ。鳴り物入りで日本女子ツアーに参戦したのは、2011年。韓国ツアーとの兼ね合いで14試合しか出場できなかったものの、賞金ランク40位となってシード権を獲得。その強さを証明した。

 そして、本格参戦を果たした2年目(2012年)からは、持ち前の実力を遺憾なく発揮。2戦目のヨコハマタイヤPRGRレディスで日本ツアー初優勝を飾ると、最終戦のメジャー大会、LPGAツアー選手権リコーカップまで制して賞金ランク2位に輝いた。3年目の昨年も、賞金ランクこそ7位に止まったものの、メジャー2勝目となる日本女子プロを制覇。年間2勝を飾って、シーズン途中まで女王争いに加わった。

 迎えた4年目の今年、イ・ボミはファンの前で公言したとおり、最大目標を賞金女王に定め、好スタートを切った。優勝こそないものの、4戦目のアクサレディス宮崎(3月28日〜30日/宮崎県)で3位に入ると、KKT杯バンテリンレディス(4月18日〜20日/熊本県)では今季最高位の2位でフィニッシュ。出場8試合でトップ10フィニッシュは計5回と、安定した成績を残して、賞金ランクトップを走っている(5月6日現在)。

 部門別データを見ても、今季の充実ぶりは明らかだ。平均ストローク1位、パーオン率3位、パーセーブ率(パーかそれより良いスコアを獲得する率)2位。ショットやアプローチの精度が高く、この数字をこのまま維持できれば、賞金女王獲得はかなり現実味を帯びてくる。

 好調な要因はどこにあるのか。イ・ボミが語る。

「ひとつ言えるのは、日本ツアーでプレイするリズムをつかめたことです。日本ツアーに本格参戦を果たした2年前、日本ツアーにどう適応していくかを第一に考えてプレイしました。日本のコースがどんなものか、肌で感じ取り、頭に叩き込んでいきました。それで、徐々に波に乗る感覚というものがつかめました。そうやって、欲を出さずにプレイしていたから、いい結果(賞金ランク2位)が残せたと思っています。とにかく、韓国ツアーに出ないと決めた寂しさもありましたが、あの年に日本ツアーだけに集中して、焦ることなく試合に臨めたことで、日本で戦うパターンというか、リズムが築けた。それが、現在の好調につながっていると思います」

 さらに、イ・ボミはクラブ契約を結ぶ『本間ゴルフ』との相性の良さも、好調を持続できている要因のひとつだと言う。

「オフの間、入念なクラブセッティングをして、自分に合うものをしっかりと作ってもらいました。特にシャフトがすごくフィットしていて、思いどおりの球筋を打てるようになりました。いいクラブを提供してくれて、選手のマーケティングに奔走してくれる『本間ゴルフ』のスタッフとの出会いが、私の調子を支えてくれています」

"郷に入りては郷に従え"と言うが、確かにイ・ボミからは"日本でプレイするのだから、日本に合わせていこう"という姿勢が随所に見られる。所属先も今年から兵庫県のマスターズゴルフ倶楽部となり、拠点を神戸・三ノ宮に構えた。

 いくら韓国から近い日本とはいえ、異国の地である。いざ生活するとなると、さまざまな問題が生じるもの。言葉はもちろん、食事や生活習慣など、文化の違いからさまざまなストレスを感じても不思議はないが、イ・ボミは難なく適応した。

 今では、日本語をほぼマスターし、日本食にも抵抗がなく、好きなものも多いという。最近は、自分で料理を作ることもたまにあるらしい。

「一緒に住んでいる母がいないときには、キムチチャーハンくらいは作りますよ。それ、料理?って、言われてしまうかもしれませんけど(笑)」

 日本ツアーにも慣れて、日本の生活にすっかり順応し始めているイ・ボミ。賞金女王獲得への期待はますます高まるばかりだが、彼女は決して浮かれることはない。

「(現在)賞金ランク1位にいることはうれしいですが、ツアーはまだまだ先が長い。今後も、今のゴルフが続けられるように心掛けていくことが大事」

 もちろん、イ・ボミ本人もチャンスがあることは自覚している。

「今年はまだ未勝利ですが、調子はいいですし、ショットも悪くないので、すべてがうまく噛み合えば、近いうちに優勝できると思っています。そして、賞金女王はもちろんのこと、日本ツアーでたくさんの勝利を重ねていきたい。日本で愛される、最高の選手になることが、私の目の前の目標です」

 かつて、韓国では"スマイルキャンディ"という愛称で、絶大な人気を誇っていた。その人気は今なお衰えることなく、韓国のトーナメントに出場することが決まれば、たくさんのギャラリーが会場に詰めかけ、メディアの取材が殺到する。イ・ボミはそんな韓国のファンのためにも戦っている。

「韓国のファンには、日本でがんばっている姿を見てもらいたいですし、そういうみなさんの声援に応えるためにも、いい結果を日本で出したい」

 イ・ボミが続ける。

「また、日本でも多くの方が私のことを応援してくれています。おかげで、すごくプレイしやすいです。そうして支えてくれているみなさんが、日本でも賞金女王になれると言ってくれるので、その期待にも応えていきたい。とにかく、日本はとてもいい環境です。韓国人の先輩たちはよく面倒を見てくれますし、日本のツアーの関係者、選手たちもみんな優しい。そして何より、練習環境が素晴らしい。だから、自分が練習した分だけ、いい結果が出せると感じています」

 ゴルフに対して、常に真摯なイ・ボミ。彼女が言う「いい環境」の中、今年もひたするボールを打ち込み、人一倍練習を重ねてきた。そこで得た手応えを誰よりも感じているのは、彼女自身に違いない。賞金女王獲得へ、まさに機は熟している。

 そんなイ・ボミが、5月8日から(11日まで)は、今季国内メジャー第1弾のワールドレディスチャンピオンシップ・サロンパスカップに挑む。まずは今季初勝利を日本ツアー3つ目のメジャータイトルで飾るのか。そして、それをきっかけにして、いよいよ賞金女王獲得へ突き進んでいくのか、注目したい。

text by Kim Myung-Wook