竹内龍人『なぜ、それを好きになるのか? 脳をその気にさせる錯覚の心理学』(角川SCC新書)
帯文:“好き”は脳の勘違い!? 最新の実験心理学から知る“嫌い”を“なんとなく好き”に変える方法。

写真拡大

ストーカーの心理がわかるようで、わからない。

大好きになる。それはわかる。
アタックするが、ふられる。ふられてもアタックする。会いたくて、見つめたくて、つけまわす。
ストーカーのできあがり。
というふうに想像すると、理屈では「ストーカーの誕生」がわかる。

でも、ストーカー事件の報道をみると、そういう感じとちょっと違う。違和感がある。

嫌われても突き進んで、突き進む行為そのもので嫌われるとわかるだろうに、突き進んでいく。
その根性はどっからでてくるんだ、その掛け違いはどうして生じるんだ。
それは、好きが嵩じてストーカーになるという理屈だけでは説明できないんじゃないか。

つねづね疑問だったのだが、ようやくその謎が解けた!
竹内龍人『なぜ、それを好きになるのか? 脳をその気にさせる錯覚の心理学』に、腑に落ちる説明が書いてあったのだ。

「好きになること」と「欲しくなること」は脳内では別のプロセスである、と。
「好きだから欲しくなる」のではなくて、
“ストーカーの中では、「好き」という気持ちが完全に消失している一方で、「欲しい」という、きわめてプリミティブな気持ちだけが暴走している”のだ、と!

好き→大好き→熱烈に好き→君が欲しい!
とだんだんとボリュームがあがっていくのではない。
「好き」スイッチと「欲しい」スイッチは、別々にあるのか!

そう考えると、ストーカーの掛け違えた行動も、なんとなく理解はできる。

熱烈に好きは、“まさに脳が「沸騰している」状態”。
「なんとなく好き」のほうが長続きする。
『なぜ、それを好きになるのか? 脳をその気にさせる錯覚の心理学』は、実験心理学で、「なんとなく好き」を探求した本だ。
他にも、
・肖像画の多くはなぜ左から光があたっているのか?
・なんとなく好きになってもらうには、どうすればいいのか?
・サブリミナルで「好き」は作り出せるのか?
・瞳孔の大きさで魅力は変わるか?
・好きな色は文化が違っても共通か?
など「なんとなく好き」に関連する興味深い実験が紹介されている。

実験心理学のさまざまな実験については、『実験心理学』をオススメ。
見開きで1つ、116もの実験と実験結果が紹介されている本。
・「地図が読めない女」は本当か?(示された地図が女性の脳に向いてないだけ)
・仏像の顔の見え方の実験
・共感は、誰にするのか?の実験
・男の顔の好みは周囲の影響で変わるか実験(変わる!)
など。

「脳の錯覚」については、気軽に知りたいならば、池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点』をオススメ。
人が何かを認知するときに起こる偏り「認知バイアス」をドリル形式でコンパクトにまとめた一冊(右分けと左分けでモテ度が変わる『自分では気づかない、ココロの盲点』)。

実際に脳の錯覚を試してみたい人は鈴木光太郎『きっとあなたもだまされる脳のワナ』を。
実際に試すことができる錯覚がたくさん紹介されている。
、脳のワナにひっかかってみる実験ができるフロク(厚紙を切り貼りして作る!)つき。

*8日(木)NHKラジオ第一「すっぴん」(#NHK_suppin)「新刊コンシェルジュ」コーナーで『なぜ、それを好きになるのか? 脳をその気にさせる錯覚の心理学』を詳しく紹介します。(米光一成)