ラウンド中に六甲おろしを口ずさむ阪神ファンの15歳の少女が、一躍、時の人となった。ゴルフ界に彗星の如く現れたニューヒロインの勝みなみ。4月18〜20日に熊本でおこなわれた「KTT杯バンテリン・レディス」で、宮里藍(28)を抜き、国内女子ツアーを15歳293日で優勝。日本史上最年少優勝の金字塔を打ち立てた。

初優勝を決めた強気のウイニングパットが印象的だったが、小学2年から6年まで彼女を教えていた「KOUDAゴルフスクール」代表の武村庄子さん(45)は、その理由をこう話す。

「みなみちゃんがおじいちゃんに連れられて私のスクールに来たのは、小学2年の中ごろでした。一度、ラウンドレッスンのときに、パットを打ち損ねたので『チョロしたね』と言ったら、すっごい勢いで泣きだして。周りのコが必死になだめても、『チョロって言った!』と泣きやまなかったんです(笑)。それがよっぽど嫌だったのか、パットは強気で打つようになりました」

優勝した試合で、「パットがよかった」とプロの選手たちが口を揃えた強気のパットは、どうやらこのころからのようだ。もうひとつの彼女の持ち味が、身長157センチと小柄ながら、飛距離のあるドライバーショット。これは体幹の強さがもたらしたようだ。

「アドレスのときに足を曲げることで、膝を壊したり関節炎を起こしたりと、体に支障をきたすコが多かった。なので、みなみちゃんには足を伸ばして打つようにと教えました。回転運動で打つスイングです。すごく飲み込みが早く、集中して練習をするコで、毎日最低100球は打っていたと思います。とにかく距離が飛ぶようになり、ドライバーの飛距離は、小学5年ぐらいには、230ヤードは飛んでいましたね」(武村さん)

ちなみに、当時のゴルフスクールのレッスン料金は10回で1万5千円。打ちっぱなしの球は1球8円。週に3〜4回通っていたとのことなので、“英才教育費”は、ざっと計算すると、ひと月4万円といったところか。勝選手と二人三脚で歩んできた彼女の祖父・市来龍作さん(74)は、勝選手がゴルフを始めたころのことをこう振り返る。

「私がゴルフ好きでしたから、4〜5歳のころは、一緒にゴルフ場に連れて行っていました。小学1年のときに、おもちゃのパターを買ってあげたら喜んでね。それからゴルフに興味を持ったみたいです。小学6年から中学に入ったころに、ドライバーの飛距離も伸びて、ぐんぐん上達した。ここ数年は周りの人たちと、もしかしたらあるかもねなんて話してはいたんですが、まさか本当に優勝するとは思いませんでした。想像よりも5〜6年早かったですね」

初優勝時の賞金は1千800万円。彼女はアマ選手ゆえに賞金を受け取ることはできなかった。ただ、金額以上に手にしたものは大きかった。

(週刊FLASH 5月13・20日号)