今朝、起きてから、パソコンやスマートフォンなど、何らかの電子媒体に接したという方は多いと思います。一方、紙媒体の本や新聞などに触れた方、さらには、ペンを持って紙に文字を書いたという方......となると、その人数はグッと少なくなるかもしれません。

 芥川賞作家である藤原智美さんは、ある日乗車した地下鉄で、対面のシートに腰をおろした乗客全員がスマートフォンに見入っている光景を目の当たりにした衝撃を機に、本作『ネットで「つながる」とことの耐えられない軽さ』を書いたそうです。そして、私たちが身を置いているこうした状況を危惧すると共に、ネット時代の到来により、現在、「ことば」が重大な転換期に陥っているのだと指摘しています。

 藤原さんは「話しことば」と「書きことば」に加え、ネット上に書きこんだり読んだりする画面上のことばを「ネットことば」として分類します。その上で、電子ネットワークの発展によって、ことばは「書きことば」から「ネットことば」へと移行しているのだと述べます。

「いまぼくたちをとりまいていることばの変容は、おそらく人類にとって数百年に一度という規模で、人とことばの関係のみならず、社会全体をまきこみながら加速しています」

 そして、この「ネットことば」への比重の高まりは、日常生活レベルに留まらず、司法や政治の場においても作用しているのだと続けます。

「ことばの変化が与える影響は、人々の認知や思考のみならず、文化はもとより国のあり方そのものにもおよぶでしょう。文字の発明が人類史上の大きな転換点になったように、グーテンベルクの活阪印刷が近代と国民国家を誕生させたように、グローバルネットワークがぼくたちの日常風景から文化、社会、国家にいたるまで激変させようとしています」

 生活の一部として浸透しているパソコンやスマートフォンの存在。その利便性と引き換えに、国家や経済、世界のあり方といった大きな問題にまで影響を及ぼすという「ネットことば」の増加。数百年に一度のことばの変容期だからこそ、一人一人が慎重に考えてみるべきなのかもしれません。



『ネットで「つながる」ことの耐えられない軽さ』
 著者:藤原 智美
 出版社:文藝春秋
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