安倍政権は雇用の回復と賃金上昇を謳うが、現実は非正規雇用が増加し、企業の海外逃避が加速している。これから日本人はどこで働き、どうやって生活の糧を得るべきなのか。

 内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」によれば、製造業の海外現地生産比率は2011年度の17.2%から2012年度には20.6%と過去最高を記録。2013年度は21.6%、2018年度の予測値は25.5%とさらに上昇が見込まれている。

 とりわけ日本経済を牽引する自動車業界でその傾向が顕著で、トヨタ自動車グループ(ダイハツと日野自動車を含む)は2014年に全世界で前年比103%となる1043万台の生産を計画するが、国内生産は同95%の405万台に縮小する方針だ。

 移転先ではメキシコへの注目度が高く、昨年11月の日産自動車に続き、今年に入ってからホンダやマツダが現地工場を次々と立ち上げて海外生産比率を高めようとしている。

 大手メーカーの海外シフトが相次げば、生産に必要な部品の調達先が国内から現地企業に変わるのは必至であり、空洞化は国内の中小部品メーカーにまで及ぶ。実際、日産やトヨタなどではタイや韓国などの部品メーカーから調達する動きが強まっている。

 海外生産の高まりが国内の雇用を脅かすことは数字が示している。

 経済産業省の「海外事業活動基本調査」(2013年3月公表)を見てみると、2011年度の現地法人常時従業者数は523万人で過去最大になった。そのうち、製造業の常時従業者は411万人。2002年度の280万人から10年足らずで130万人も増加したことになる。

 一方、国内の「労働力調査」では、2013年の日本における製造業就業者は1039万人。10年前の1178万人から140万人近く減っており、国内の雇用がそっくりそのまま海外にシフトした格好だ。

 ことは製造現場だけでは済まない。これまで工場が海外に移転しても、国内にはそれをマネジメントする管理部門や研究開発部門など、より高度な仕事が増えて雇用は残ると言われてきた。しかし現実には本社機能さえ海外に移転する動きが進んでいる。

 たとえばソニーは人事、経理部門の一部を日本IBMなどと中国に設立した合弁会社に移管。パナソニックは物流、調達部門の拠点をシンガポールに移し、日立製作所も調達、戦略部門の一部を中国に移転させた。光学機器メーカーのHOYAに至っては鈴木洋・CEO(最高経営責任者)自らがシンガポールに移り住む徹底した海外シフトを敷いている。

 グローバル化が進む中、製造部門だけでなく、総務や経理、研究開発部門などが海外に移転すれば、国内は文字通り空っぽになる。 

※SAPIO2014年5月号