(C) 2014 佐藤泰志 / 「そこのみにて光輝く」製作委員会

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4月19日より公開された『そこのみにて光輝く』が大ヒットしている。
原作は、41歳の時に自ら命を絶った佐藤泰志さんの同名小説。第二回三島由紀夫賞の候補にもなり、2010年に熊切和嘉監督によって映画化された『海炭市叙景』に並ぶ最高傑作と言われている。

社会の底辺で暮らす、行き場のない、どうしようもない男女を描いたラブストーリーという重たいテーマにも関わらず、「最後まで目が離せなかった」「2人の愛がスクリーンににじみ出ていた」「エンドロールがずっと終わらないで欲しいと思うくらい余韻に浸っていた」と男女問わず感動の声が寄せられ、業界からも次々に絶賛コメントが寄せられている。

一体どんなストーリーなのか。

■ストーリー
主人公、佐藤達夫(綾野剛)はある出来事をきっかけに仕事を辞め、生きる目的を見いだせないまま、日々をやり過ごしていた。ある日、パチンコ屋で偶然知り合った青年、大城拓児(菅田将暉)に出会う。拓児は達夫を自分が暮らすバラック小屋へ連れていく。そこには寝たきりの父親、そんな夫を疎ましく思う母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫は千夏にひかれるも、次々に過酷な現実を知ることになる……。

■呉美保監督×綾野剛×池脇千鶴、そして…
20年以上前に書かれた本作をスクリーンによみがえらせたのは、前作『オカンの嫁入り』で新藤兼人賞を受賞するなど、高い評価を得ている呉美保(オ・ミポ)監督(37)。何も知らないで見ると、一瞬80年代の映画をよく知っている50代くらいの監督さんが撮られた?と思ってしまう。前作とのイメージと全然違うので戸惑われる方がいるかも?

主演の佐藤達夫役には、近年、映画やドラマでの活躍がめざましい綾野剛。ある過酷なトラウマから抜け出せず、ただ堕ちていく自分と葛藤しながら生きる男を演じきり、多くのメディアが「本作は間違いなく彼の代表作になる」と評した。

またヒロインの千夏役にはその演技力に評価の高い池脇千鶴。劇中では一家の家計を支えるべく、毎晩、夜の仕事に出かけ、絶望を抱えながら生きる女性を演じた。彼女の背中から醸し出される生活の悲哀……スクリーンに映し出されていたのは女優・池脇千鶴ではなく、必死に生きる一人の女性の姿だった。

他にも菅田将暉、高橋和也らキャスト全員が鮮烈な印象を残し、それぞれの演技が見る人をうならせる。

■さいごに
まるで街の匂いや登場人物たちの汗、肌の温度まで伝わってきそうな情景の中で、そんな2人が出会い、一筋縄ではいかない再会を繰り返して急速にひかれあっていく様は、心揺さぶられずにはいられない。
2人が愛し合えば愛し合うほど、そこには悲しさと切なさと、愛おしさが渦巻き、胸がしめつけられていく。

呉監督は産経新聞の取材で「千夏の家族は壮絶で、自分にはないと思われがちだが、同じような精神状態の人はたくさんいるはず。(前後略)」と語っていた。

確かに、この現実から抜け出したくても抜け出せない家庭環境に置かれている人は多いかもしれない。そうでなくても、何かに追い詰められていると感じている人もいるだろう。
もしかしたら呉監督は、自身の感覚と俳優たちの全身全霊をかけた演技によって、背けたい現実を抱えたまま生きている現代人に、ささやかな光を見せてくれているのかもしれない。

ここでは2人のラブストーリーとして本作をご紹介したが、それ以外にも様々な家族の愛のかたちを描いた作品でもある。その愛の残酷さ、悲しさ、切なさ、それでも求め合う魂、そこに差し込む光……。ぜひ映画館まで足を運んで、これらを体感して欲しい。ラスト、エンドロール最後に映される「そこのみにて光輝く」の映画タイトルは、佐藤泰志の原稿に書かれた自筆文字を写したもの。真っ暗闇の中に浮かぶ少しクセのある書体がいつまでも心に残る。
(mic)

『そこのみにて光輝く』は現在公開中