モルガン銀行東京支店長などを務め“伝説のディーラー”として活躍した藤巻氏。先日の参院財政金融委員会では、円安に誘導する政策として「マル外(がい)」を提案したそうだ。いったいどんなものなのか。

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 円安に誘導する政策の一つとして「『マル外』を考えてはどうか?」と、3月18日の参院財政金融委員会で、麻生太郎財務相に提唱した。

 昔、「マル優」という仕組みがあった。1人あたり、預金額が300万円まで利息収入が非課税だったのだ。それなりに金利が高かったから非課税は魅力的で、預金の獲得に効果があった。人間は誰しも「カードの10%引き」でも、「無税」でも、財布からお金が減らないのが好きなのだ。

 私の提唱する「マル外」とは、「マル優」と同じ概念で「一定金額」までの外貨預金の「為替益」を非課税とするアイデアである。現在の為替益は、雑所得で総合課税の税率がかかるが、それをなくそうというものだ。為替損は、雑所得以外とは損益通算ができないので、それなりに理由はつく。

 一方、外貨預金とほぼ似た外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド、公社債役信の一種)は現在、為替益は非課税だ。だから、ドル預金の代わりにMMFを利用する人は多い。

 MMFは、1年以内の米国債や一流企業の社債への投資だから、元本割れの可能性はほぼない(注・為替で損をすることはある)。

 しかし、残念ながら、MMFの為替益の非課税措置は来年末までで、その後は申告分離課税となる。これは外貨投資に対して大きな妨げだ。無税から課税になるときの人々の抵抗は大きい。だからこそ「マル外」を提唱するのだ。

 欧州中央銀行(ECB)は、極めて低い物価上昇が続く「ディスインフレ」の主犯は通貨高だとみている(4月4日付の日本経済新聞の7面)。私の長年の主張と同じだ。それなら税制で円安にするのが一番効果的なのだ。

 量的緩和で円安が進んだと言う識者が多いが、日本銀行による異次元の量的緩和が始まった昨年4月は1ドル=約95円である。量的緩和の指標であるマネタリーベース(日銀が供給する通貨量)は、約135兆円(2013年3月末)から約209兆円(14年3月末)と、約74兆円も増えた。それなのに、10円弱しか円安が進んでいない。

 11年10月に円が1ドル=75円台の史上最高値となったときのマネタリーベースは110兆円台半ばだった。90年代の40兆円台から3倍近くになっているのに、円高はぐんぐん進んでいた(参考・90年の年間平均は1$=144.88円)。

 円安は量的緩和では誘導できない。それどころか量的緩和は将来のハイパーインフレという恐ろしい副作用がある。

 私の「マル外」の提唱に麻生太郎財務相も「その言葉いいね〜」と答弁してくださったのだから、ぜひ実現してもらいたいものだ。為替益への課税でチマチマした税金に頼るより、円安に誘導する政策で景気をドーンと押し上げて、税収全体をドーンと増やすのが財務省の仕事だと私は思う。

週刊朝日  2014年5月2日号より抜粋