2012年春、羽生結弦(19才)は母・由美さんとともに、キム・ヨナ(23才)を育てた名コーチ、ブライアン・オーサー氏のいるカナダへと渡った。だが、そこで食事の問題にぶち当たる。大ぶりのステーキや、鹿肉などのジビエ料理といった北米の食事が羽生の口に合わなかったのだ。

「食の細い羽生くんは目の前に大きなお肉や大皿の料理が出ると、それだけで“肉に襲われる”と怯えてしまうほど。濃い味つけも苦手なので、どんどん食が細くなってしまいました。日本と同じ味を再現しようと、由美さんは電車を乗り継いで韓国系のスーパーで食材を買い集めたそうなんですが、それでもダメだったんです」(フィギュア関係者)

 免疫力も低下し、体調不良で練習を休むこともしばしば。体力も筋力も落ちていく悪循環で、2013年3月に行われた世界選手権の直前にひざをけがしたこともあった。

 本格的な食生活の改善を決意した由美さんは専門家にも相談。そして、羽生の食事にこんな特徴があることに気がついたのだ。

「羽生くんはたった5分ほどで“ごちそうさま”と言って残すのに、それから20分ほど経つと、また“お腹が空いた”と言って食べ始めるんです」(前出・フィギュア関係者)

 そう、決して食が細いわけではなかったのだ。

「羽生くんは胃腸が動き始めるのが遅いせいで、食べ始めてからしばらくしないとお腹が空かないタイプだったんです」(前出・フィギュア関係者)

 そこで由美さんは専門家の指導の下、食事を汁ものから始めることに。だしのうま味成分であるグルタミン酸が胃腸を刺激し、食欲を促進させる性質があるからだ。

 また視覚的な負担をなくすために、ご飯も茶碗ではなく、俵形のおにぎりにして小分けに出した。さらに、鍋が好きな羽生に野菜たっぷりのひとり鍋も考案。その“V鍋レシピ”がこちら。

 水200ミリリットルを入れた耐熱器に細かく砕いたキムチ風味の『鍋キューブ』を1個入れる。干ししいたけ適量、キャベツ60g、加熱してひと口大に切ったじゃがいも45g、同様のにんじん15g、加熱して3等分にしたアスパラガス1本、加熱してひと口大に切った鶏もも肉60gを入れ、最後にわけぎ(乾燥)0.2gを散らす。電子レンジ(600w)で5分加熱した後、軽くかき混ぜるといった簡単なものだ。

「手軽に作れて材料も集めやすいから、遠征先ではいつも鍋だったそうです。スープの味を変えたり、食材を少し変えればレパートリーも増やせます。海外の野菜でも煮込めば違和感が少ないため、羽生くんも毎晩のように“今日は○○鍋がいい!”とお母さんにリクエストしていたそうですよ」(前出・フィギュア関係者)

 その結果、練習量が増えた五輪シーズンにもかかわらず、最高のコンディションでソチ五輪、そして世界選手権に挑むことができた。そんな母の支援を受け、羽生の目はすでに4年後の韓国・平昌五輪に向けられている。

※女性セブン2014年5月8・15日号