4月11日、日本経済新聞は朝刊1面トップと「小売業7割が増収増益(今期予想) 増税の影響、下期回復」と明るい景気見通しを報じた。ところが、日経平均株価は始値の1万4027円から終値1万3960円へと67円下落し、「1万4000円の壁」を割り込んだのだ。

 4月3日に株価が1万5000円の大台を回復すると、「日経平均1万5000円 NY株最高値圏 米景気回復に期待」(4日付)と煽ったが、日経平均はわずか1週間で1103円もの下げを記録したのである。

 金融界では、「日経が『景気好調』と書くときは、もう危ない時だ」というのは常識となっている。

「投資のプロは日経新聞の内容は相手にしない」と言い切るのはゴールドマン・サックス証券やモルガン・スタンレー証券など外資系証券会社で日本株アナリストを経験してきた島義夫・玉川大学経営学部教授だ。

「プロは必ず日経を読んでいますが、それは世間の『平均的な見方』を確認するためです。株など金融商品を扱う場合、先行きを見るための先行指標、今の状況を確認する一致指標、過去の状況を分析する遅行指標がある。新聞に書いてあることは昨日までの遅行指標であって、プロにはそれを取引の先行指標に使うような馬鹿はいない。

 日経の記事は市場関係者や専門家を取材して書いています。その手の情報はポジショントークといって、自分が扱っている銘柄が有利になるようにメッセージを出す意図が込められている。市場関係者はそのことを百も承知だから、記事を参考にはしないわけです。その意味で『遅行指標の日経が相場で強気に出れば株は売り』、『日経が景気好調といえばやはり売り』といえるでしょう」

 それを象徴する記事がある。日経は今年初めから〈午年、堅調株価どこまで──「年内2万円」強気な声も〉(1月8日付)、〈日経平均3万円の初夢――シティグループ証券副会長藤田勉氏〉(日経ヴェリタス1月12日)など、いずれも市場関係者の分析を鵜呑みにしてバラ色の株価上昇を描いてみせてきた。

 証券会社側が投資家に株を買ってもらうために「今年は上がるぞ」と強気な読みをするのはいわば当然だろう。一方、同じ市場関係者でも、ロイターのコラムのように悲観的な分析もある。メディアに問われるのは、「ポジショントーク」を垂れ流すのではなく、情報の内容を精査して正確な分析を読者に伝える能力のはずだ。

 だが、元日本証券経済研究所主任研究員で経済評論家の奥村宏氏は、「日経には情報のチェックがなく、財界と霞が関の宣伝紙になった」とこう語る。

「経済紙の読者はどの企業の株を買えば儲かるかを知りたいから、企業の好材料がほしい。それでも、情報が正しいか、妥当かを精査した上で報道するのがメディアの使命で、米国の『ビジネスウイーク』や英国の『ロンドンエコノミスト』などは企業や政府に厳しい記事も多い。日経新聞もかつては企業や政府の方針を批判する記事を書いていた。

 しかし、不況で広告が集まらなくなると、より財界寄り、政府寄りの記事が増え、今や財界や霞が関がアピールする情報をそのまま無批判に載せる宣伝紙になってしまった。記事を読んだ読者は、最初は景気がどんどん良くなり、株価が上がるように思って歓迎しても、現実は株価が必ずしも上がらないから、日経に対する信用も低下している。それでも懲りずに日経は株が上がるという大本営発表を流し続けています」

※週刊ポスト2014年5月2日号