アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック デラックス・エディション

英語版と日本語版の聞き比べができる2枚組
WALT DISNEY RECORDSより5月3日発売

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桜のシーズンはほぼほぼ終わりましたが、雪はまだまだ止まりません。
ディズニーアニメーション「アナと雪の女王」が、レリゴー!(Let It Go)レリゴー! ついつい口ずさんでしまう、あのテーマ曲にのって、ありのままで(Let It Go)ありのままでと勢いよく、興収100億円突破。
4月26日(土)から3D日本語吹替版の公開もはじまり、ハッピーな猛吹雪は続きます。

なんと、『映画館でみんなで歌おう♪「アナと雪の女王」歌詞字幕付き上映』も一部劇場で行われます。
アメリカでは、みんなで歌うと雪が降ってくるというアトラクション版もあるそうです。これは日本でもぜひやってほしいですね。

3Dで日本語吹替版が登場するまでになったのは、W主役のアナと雪の女王エルサの声を担当する松たか子(エルサ)と神田沙也加(アナ)の声と歌の力によるところも絶大です。
ふたりのデュエット曲「生まれてはじめて」を聴くと、彼女たちの声は、めっちゃのびやかで澄んでいて、氷の滑り台のようにつるつるすべっすべ。プラス、松たか子には気品や憂いもあり、神田沙也加には無邪気なたくましさがあります。

そして、松たか子の「Let It Go」。あの声で「ありのままで」「もう自由よなんでもできる」と言われると、心が軽くなり、勇気が沸いてきます。ミュージカル嫌いなタモリさんにたてつきたくはないですが、ミュージカル最高!と歌い踊りたくなります。

未見の方のために、なぜ、エルサこと雪の女王は「ありのままで」と自己肯定しているか、物語のさわりを説明しておきましょう。

アレンデール王国のお姫様・エルサとアナはいつも一緒の仲良し姉妹でしたが、あるとき、エルサに備わった魔力が、アナを傷つけてしまいます。
おそろしい魔力から愛する妹を守るため、部屋に閉じこもり、人との交流を断ったエルサ。
彼女が久しぶりに外界に姿を表したのは、王位継承の戴冠式の日でした。
新女王として国民の前に立ったエルサは、うっかり魔力を発揮してしまいます。
悪者を見るような国民たちの視線に耐えられず、エルサは遠い山へ逃げ出し、自分を抑えつけることなく、本来の自分でいられる雪の王国を築きます。
その頃、王国はエルサの魔法のせいで凍てついた真冬になっていました。
この魔法を解くのは真実の愛だけ。アナは単身エルサのいる山に向かい・・・。

例のレリゴーは、エルサが雪の王国を作るときに流れます。
自分の中にあるパワーを全開にして、美しく巨大な城を作りあげるシーンは「ゼロ・グラビティ」の無重力表現の感動と勝るとも劣りません。
暗い顔をしたエルサが、どんどん明るく強くなっていく表情の変化も、鮮やかに描かれます。キャラクターが人間以上に表情が豊かで、常に瞳がこぼれ落ちそうなところに毎度ドキドキします。

こうしてエルサが完全に雪の女王として自立した瞬間の表情は、美しいけれど、ちょっとこわい。魔女顔です。
近年、ダークヒーローが注目されていますが、エルサは女性のダークヒーローですね。変身前の戴冠式の衣装のデザインと色が、仮面ライダーみたいにも見えませんか? あの手袋と胸元が特に。

さらに、本編上映前には「眠れる森の美女」の悪の妖精を主役にした「マレフィセント」の予告編がかかっていて、女もダークヒーロー(ヒロイン?)の時代という印象をいっそう強めます。

そもそも、英語版のレリゴーの歌詞が、ダークヒーロー讃歌なんです。
日本語版の「ありのままで」は、英語版の「これでいいのかまわない」、日本語版の「もう自由よなんでもできる」は、英語版の「善悪やルールに縛られずに 私は自由よ」に当たる部分のようです。

英語版のほうがエルサの罪の意識が強く、悪すらも背負って生きていく、という力強さがあります。
お子さまたちには、日本語吹き替え版のほうがおすすめでしょうかね。刺激弱めで。
5月に、日本語版と英語版、両方楽しめるサントラ が発売されるので、聞き比べてみたいですね。

さて、
魔法が使えるのに、使わないでおとなしくしていると、パワーがくすぶってへんな方向に暴発してしまう、なんかカラダ(主に下半身方面)の仕組みみたいですが、力ってだいたいそんなもの。創造力とか妄想力とかもそうですよね。

エルサは、自分の本能や創造の力を我慢しない生き方を選ぶことができましたが、そうはいっても、妹を傷つけたり、国民を恐れさせたりすることは、やっぱり耐えられない。
彼女が魔法で生み出した、雪だるまなのに夏にあこがれるオラフは、エルサの未練のようにも思えます。オラフ、めっちゃ、健気でチャーミングなんですよね。

そんなオラフと行動を共にするのがアナ。アナは、エルサを追って雪山にやってきます。真実の愛で彼女を救うために。

「真実の愛」とは、古今東西、魔法を解く特効薬ですけれど、「アナと雪の女王」の場合、ここに「レリゴー」精神が宿っています。
通常、真実の愛は男女の愛ですが、「アナと雪の女王」はちょっと違う。
もちろん、アナをサポートしてくれる、素朴な青年クリストフも登場しますし、「生まれてはじめて」でのアナのパートは、すてきな殿方の登場を夢見るものです。
しかし、「レリゴー」は、違う。
最後の最後、エルサの魔力がどうなるの!というハラハラ場面で、お!と目がこぼれそうになりますよ。

ここからネタバレします。

エルサの魔力を解くのは、姉妹愛なんですね。
もっと言えば、アナが魔法でピンチになってしまいますが、それを救うのは、結局は自分自身の、姉への愛と勇気の強さなのだという気がするのです。
そもそも、エルサが戴冠式で魔力を暴走させたのは、大好きなアナが、初対面の男と結婚すると言い出したからなんですよね。自分はいろいろ我慢して引きこもっているのに、妹は新しい世界の扉を開こうとしていることへの寂しさやいらだちが、力を暴走させてしまった。にも関わらず、アナが男との愛を携えて魔法を解こうとしたって、解けるわけはありません。
真実の愛とは相手を思いやる心であることが、よーく描かれた物語です。

「善悪やルールに縛られずに」の歌詞のごとく、男と女の愛に限らず、どんな組み合わせでも愛は愛という、歌声のように爽快な物語です。デートやファミリーで来る観客も多いですが、おひとりさまでも胸を張って見に行けます。
(木俣冬)