24日夜から25日にかけて日本を訪問する米国のオバマ大統領は出発直前に読売新聞の書面インタビューに応え、尖閣諸島について「日本の施政下にあり、日米安全保障条約第5条が適用される」と表明した。中国メディアは相次いで同表明を紹介。簡易ブログの微博(ウェイボー)でも同話題が次々に掲載された。直後から、日本やオバマ大統領に対する「怒りのコメント」が殺到する状態になった。歴代米大統領でも初めての「尖閣に対する安保適用」の明言は、中国人に極めて大きな衝撃をもたらしたようだ。

 「オバマ発言」を紹介した共産党機関紙・人民日報系のニュースサイト「環球網」には「米国は一貫して、偉大なる中国とは仲良くできないな」、「米帝が釣魚島(尖閣諸島の中国側呼称)で日米安保条約を適用しようがしまいが、中国人民は必ず取り戻すぞ。米帝なんか恐くはない!」、「米国は態度を公にすることで、中国を公然と敵にした。それもよいだろう」、「米国があんなちっぽけな釣魚島のために、中国と開戦することはないよ」などの

 微博でもさまざまなアカウントで、同話題が紹介された。中国の報道ではなく、欧米メディアによる英語記事を貼りつけて紹介した人もいる。すでに中国でも報道されてからの書き込みなので、「国外における報道で、事実を確認」との意識が働いた可能性がある。

 同掲載についても「くそったれ」、「世界の警察、帝国主義」、「どうすりゃ、いいんだい」などの書き込みが並んだ。同話題は極めて多くのアカウントが取り上げ、1つのアカウントの掲載に対し、1分間に10以上のコメントが寄せられたケースも珍しくない。

 「厳正に抗議する」とのコメントも見られる。、中国にとって不利な他国の言動に対して、中国政府・外交部(外務省)が常用する言い回しだ。中国では、自国政府は「実行のともなわない抗議しかしない」との批判が強い。同コメントはオバマ大統領に対する文字通りの抗議ではなく、自国政府を皮肉るもの理解することができる。

 「外交部、早く何か言ってみろ。洪磊『くそ。何か言おうにも、腰がくだけた』」との書き込みもある。洪磊氏は外交部の定例記者会見を担当する報道官のひとり。

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◆解説◆
 日米安全保障条約第5条は米国の対日防衛義務を定める、同条約の中でも中核的な部分。日米両国が「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し「共通の危険に対処するよう行動する」と定めている。

 共同で防衛する対象について「日本の領土・領海」ではなく、「日本国の施政の下にある領域」ともってまわったような書き方をしたのは、ソ連(現ロシア)が占拠する北方領土は、日米安保条約の対象外にするという意味合いが最も大きかった。韓国が占拠を続ける竹島も、同条約の対象外ということになる。

 また、安保条約が締結された当時は沖縄も米軍施政下にあった。したがって、沖縄の米軍基地などが攻撃された場合にも、日本には少なくとも形式上、「共通の危険に対処するよう行動する」義務はなかった。

 同条約の適用対象が「日本国の施政の下にある領域」であることから、オバマ大統領は尖閣諸島の領有権問題についての判断を示すことなく、日本の実効支配を認めることで、安保条約の適用対象という結論を導き出した。

 なお、尖閣諸島で2番目に大きい久場島(くばじま)と5番目の大正島(たいしょうとう)は現在も個人の所有で在日米軍の射爆撃場(演習場)になっている(1978年を最後に米軍は使用を停止)。両国政府の合意にもとづき、民間人の地主から米軍が借り上げる形式であり、米軍は「日本の国内法にもとづいた手続きを行い、土地使用を続けている」ことから、実質的に日本の主権を認める行為を続けていることになる。(編集担当:如月隼人)